表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/210

第74話 (64)怒喜怒気

 『アレ』の次の日、僕とハナさんはビッグボスに呼び出されていた。呼び出された時間に会議室に入ると、そこには見たことのない鬼の形相でハナさんと対峙しているビッグボスがいた。どうやら、ハナさんは僕よりひと足先に会議室に入っていたらしい。


「本当にごめんなさい!!」


「あなたのせいでどれだけの人に迷惑がかかったと思ってるの?!」


 かつてない剣幕で怒るビッグボスと、見たことのないくらい誠心誠意謝罪するハナさん。2人は部屋に入ってきた僕に気付いたようで、顔をこちらに向ける。すかさず僕もハナさんの横に並び、ビッグボスに頭を下げる。


「本当にごめんなさい!!」


「謝るくらいならあんなことするな!」


 その後、ビッグボスにこっぴどく怒られた。『アレ』のせいで今日は囚人エリアは人が押し寄せたためゾンビの徘徊が中止になったこと。そのためにゾンビの準備をしていた他の演者に迷惑がかかったこと。そして、人の導線を整理するスタッフ達に多大な負荷がかかったこと。『アレ』はなんですか?いつ開催されるんですか?という問い合わせが窓口にひっきりなしにかかってくること。何より、囚人エリアを楽しみに訪れたお客様が囚人エリアのゾンビに会えずに帰ってしまうことになったこと。他にも沢山の人に迷惑をかけたこと、を怒りながらも丁寧に伝えてくれた。話を聞きながら、とんでもないことをしてしまったと反省していた。


「本当に申し訳ありません。」


「私1人に謝ったって仕方ないわよ。頑張ってくれた皆や、今日メイクして準備してたのに出られなかったダンサー仲間達に謝ることね。」


「はい、わかりました。」


「演出家さんや上司さんにも謝りに行ったほうがいいですよね。」


 ハナさんの言葉にハッとする。演出家さん…。僕たちダンサーが扮するゾンビには細かい設定や仕草のレクチャーがされている。その世界観等を統括している演出家さんがいるのだ。当然『アレ』は演出家さんの指示にはない行為だ。世界観を壊すようなことをするのは、御法度である。きっととんでもなく怒っているに違いない。


「あー。んー。その2人はーー。」


ガチャ。


 ビッグボスが何かを話しかけたところで、会議室の扉が開く。


「んどぉーーもっ!お久しぶりねぃ。お二人ともぉ。」


 そこにはクネクネとした男が立っていた。口調から格好からオネエそのものと言った感じである。そう、この人こそ今年のゾンビナイトの演出家であるーー。


「ビッグボスぅーー。早速話しててくれちゃってたのかーしーらっ!」


「あ、ニセさん。はい、今2人に伝えてたところで。」


 コツコツコツとハイヒールを鳴らして近づいてくるニセさん。相変わらずキャラが濃い。しかし、その見た目に騙されてはいけない。彼、いや彼女がゾンビナイトの演出を担当し始めてから、その人気は鰻登り。その道では名の知られたゾンビイベント界のカリスマなのである。


「あらぁ〜。ハナにカッピぃ〜?貴方達、ずぅいぶんと勝手なことしてくれたわねぇ〜。」


 緩急をつけた喋り方で僕らに詰め寄るニセさん。じっとりと近づいてきて、ハナさんと僕の間にスラリと立ち、両手をそれぞれの方へと回す。


「アタシぃ、言ったわよね?はじめに。勝手なことはするなって。アタシの世界観を壊すようなことしたら、“タダじゃおかないわよ”って。」


 ドスの聞いた声で“タダじゃおかないわよ”と耳元で喋るニセさん。すっかり縮み上がってしまったカッピーは、すぐに頭を下げる。


「ご、ご、ご、ごめんなしゃい!!」


「謝ってすんだら、この金玉いらねぇだろぉうう?ぁぁあん?!」


「ぐぅいぇええ?!」


 金玉を鷲掴みにされ悶絶するカッピー。あまりの痛さにその場にしゃがみこむ。


「ぅう…。」


コツコツコツ。


 僕とハナさんから手を離し、歩き出すニセさん。ビッグボスの隣に立ち、くるりとこちらに向き直る。


「『アレ』。見させてもらいました。2人のどちらが考えたんですかっ!」


「私が考えました…。」


 ハナさんが答える。ニセさんは、体をくねりくねりとさせて質問を続ける。


「ふぅん。貴方が1人で?全部?」


「いや、大体の流れをカッピーに伝えて、あとはアドリブというか…。」


「ァアドリブゥ〜?!」


「は、はい。」


 裏声でアドリブと絶叫するニセさん。あのハナさんが押されている。その事実に僕は驚いていた。そして、話を聞いたニセさんが顔を顰めて、ピクピクと動き出す。やばい、怒髪天を衝く勢いだ。不倶戴天の敵を見るかのような目をこちらに向け、ニセさんは絶叫する。


「貴方達ィイイ!!」


「「はいっ!!」」


「まぁぁあべらすっ!!」


ーーん?


 満面の笑みで涙を流して拍手をするニセさん。僕とハナさんの頭に疑問符が浮かぶ。今ニセさんはなんと言ったのだろう。“マーベラス”と言ったのだろうか。


マーベラスとは、[形動]驚くべきさま。感嘆すべきさま。奇跡的で素晴らしいさま。


「2人とも素晴らしいわぁ〜。ブラボー!ワンダフォー!」


 近づいてきて包容してくるニセさん。え?どゆこと??

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

ここまで読んで頂いて本当に嬉しいです。

このキャラのエピソードもっと読みたいなどあれば、コメントで教えて頂きたいです!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ