第68話 (58)逃した魚
「おい!リュウ、『アレ』みた??すごいぞ!」
「…。」
「リュウ?ハナと男の子のやつ、これ多分前にイベントに来てくれてたカッピーって男の子だなぁ。おい、リュウ!どこいくんだよ。リュウ!」
近づいて話しかけてくるシャクレさんを無視して、喫煙所へと向かうリュウ。
ーーぁあ!!悔しい悔しい悔しい!俺が撮ってれば、あの日帰らずにハナの近くにいれば、この動画を撮れてたのは俺だったのに!!くそ!くそ!くそ!!
「なんだよ、リュウのやつ。最近おかしいな、あいつ。それにしてもすごいなーハナのやつ。あいつもクビになるのかなー。」
シャクレさんが見つめるスマホの画面には、ハナとカッピーが写っていた。そして、その動画の再生回数は1000万と書いていた。シャクレさんが見ている間にもその再生回数のカウントは増え続け、1001、1002と数を増やしていた。
〜〜〜
『これは、ゾン君ドラマとのコラボの布石と見るのが正解でしょうね。しかし、あまりの過激さに家族連れは来園を控えるため、これからゾンビナイトはガラ空きになるでしょう。近隣の水族館が混雑すると思われます。』
ーー『アレ』の動画載せたら、SNSがもっと伸びるかなー。撮りに行こうかなー。
〜〜〜
「お母さ〜ん、『アレ』見た〜??」
「うん、見たよ〜。」
「私久しぶりにウルパー行きたいかもー。この可愛いゾンビさんに会いたいー!」
「え?!本当に??」
『アレ』の再生回数は1500万を超えている。今からでも遅くない、これから便乗して『アレ』を撮影できれば、うちのチャンネルでもバズるかもしれない。これに娘のダンスも組み合わせれば!影の船団チャンネルも復権のチャンスだ!
「お母さん!私、ダンスは踊らないよ!」
「うん、わかってるわかってる。見にいくだけ見にいくだけ〜。でも、思い出用にカメラは持っていこうかな〜。ふふふ。」
〜〜〜
「なんだこれ!こんなのゾンビじゃねぇだろ!」
カントクちゃんは『アレ』の動画を見て怒りに燃えていた。ゾンビへの冒涜である。しかもその1人はあの、ゾンビ三部作への理解を示していた男のゾンビだと言うことも怒りに拍車をかけていた。裏切りとはこのことだ。
『こんなのをありがたがってたら、パークは終わってしまう!』
怒りに任せて怒涛の連続投稿をするカントクちゃん。
『カントクちゃんの言う通り。やり過ぎだと思う。』
『こんなのウルパーじゃない。』
ーーやっぱり。私は正しいんだ。
ポンッ。
『私はこれありだと思う。』
『面白い!ゾン君のオマージュでエンタメとして成立してると思う。これ見て、UPJ行きたくなったわ。』
『このゾンビさん達、ビジュ良過ぎない?』
『よく見たら、この女性ゾンビさん、色んなゾンビ表現とダンスの技が入っててレベル高い。こんなレベルのエンターテイメントが道端で見られるの、控えめに言って神では?』
ーーはー?!何を言ってるんだ、こいつらは!!
『わかってない!わかってない!お前らはわかってない!こんなの良くないだろ!!』
もう直接乗り込んで文句を伝えるしかない。カントクちゃんは、パークへと直行するのだった。
〜〜〜
「いや〜。伸びてて草。」
「すごいよ!TKの『アレ』動画!どんどん再生回数伸びて、2000万再生超えそうだよ!」
「いや〜、それ程でも。」
「文子はただ撮っただけでしょ!すごいのは『アレ』したこのゾンビさん達だよ。」
「でも、TKよく咄嗟に『アレ』を撮ったよね。僕は呆気に取られて見入っちゃってたよ。」
「もう思い残すことはないです。本当にありがとうございました。」
「ちょっと、死なないでよ文子!」
「『アレ』を見た私のクソデカ感情ぶつけさせてくれぇ。」
「いやぁ、『アレ』すごかったよねぇ。昨日初めてやったんだよね?急に始まったからびっくりしたよ。」
「『アレ』なんだったんだろう。新しいパフォーマンスなのかな、こんなゾンビナイト始まって一ヶ月以上経ってから新パフォなんて。」
「オタク達大丈夫か?息してるか?」
「私は息できなかったー!時が止まったようだったよ!」
「タイムラインの騒いでるオタク達見て、今これ。」
そう言ってスマホの画面を見せる文子。画面には、人気漫画が実写映画化された際に、男性俳優が大将軍役を演じた際のワンシーンのスクショが写っていた。
「文子!すぐ流行りに乗るんだから!」
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