第66話 (56)怪しき雲ゆき
昨日ハナさんから送られてきたメッセージ。あんな事して大丈夫なんだろうか。疑問が頭に浮かぶ。
『心配しなくていいから!話はこっちで通してるからね。』
そうハナさんは言っていたけれど、僕はただやるだけでいいのかな。ええい、考えてたらミスしてしまう。もう考えるな、やたけたにやるしかない。それにこれでハナさんが元気を出してくれれば…。
「ゔぅ…。」
いつものようにゾンビとなって漂う。ゾンビダンサーを始めた頃の高揚感は今はなく、ただ作業として仕事として行なってしまっている自分がいた。あんなに夢だったこの仕事も正直限界を感じてしまっていた。
ーーもう今年限りでやめようかな。
あのテレビの取材から、いやその前から徐々にではあるが、状況が変わってしまった。僕の方に押し寄せてくる人々。人が集まりすぎて、スペースがないためダンスが踊れないこともある。そして、踊らないと舌打ちをしてくるお客様もいる。いざダンスをしても、無表情でカメラを構えるだけの人達に囲まれることもある。話で聞いてはいたが、それらが何度も続くと正直心が折れる。楽しさを見出せなくなってくる。
そんな中来たハナさんからの提案。マンネリを打破するにはすごく魅力的だった。話は通してあると言っていたが本当なのだろうか。もし通っていなかったら…。クビになってしまうかもしれない。いや、いいんだ。どうせ辞めるんだから。無茶苦茶してやめるなんて、男らしいじゃないか。
正面からハナさんが歩いてくる。もうすぐ話した待ち合わせ場所である。打ち合わせ通りやりますよ、ハナさん。
〜〜〜
人混みの向こう側。正面から歩いてくるカッピーを視界に捉える。騙してごめんよ、責任は私が取るからね。
『今後何かあったらすぐわかるように、これをつけておくようにね。助けが欲しかったら、これで通信して頂戴!』
そう言ってビッグボスから渡された貰った無線機をポケットから取り出す。ごめん、ビッグボス。カチッとスイッチを動かし、電源を切る。
〜〜〜
『プツッ。』
ビッグボスのイヤホンから音がする。ハナの無線機の電源が切れた音である。
「あれ、ハナ?おーい、ハナ??」
ーーあいつ、切りやがったっ!!
嫌な予感がするビッグボス。急いでハナの元へ向かおうとする。そんなビッグボスに話しかける家族連れ。
「あのー。すいません。」
「あ、はい。どうされました?お客様。」
「このエリアに行きたいんですけど。」
「おかぁあさぁあん!!といれぇえ!!うわぁぁあん!!」
「えぇ?さっき行ったばかりでしょう?」
「あ、トイレはこちらです。で、そのエリアはーー。」
〜〜〜
カッピーと合流するハナさん。ゾンビが2人何やら集まっていると言う違和感で人がどんどんと集まってくる。
「なに?なんでこのゾンビ2人で集まってるの?」
「なんかやるんじゃね?」
「踊るのかな??」
ーーふふ、びっくりさせてやるからな!
“ハナ”はニヤリと笑った。雲が空を覆い尽くし、月を隠してしまう。雲の向こうにぼんやりと光る月が見える。雲越しの弱い月光があたりを照らす。
〜〜〜
ハナとカッピーを取り囲む群衆。その中には、ラブさんやデイちゃん、もじゃや文子にSポテトさん等もいた。そう、ハナの画策により、これからとある事件が起こる。その事件は『アレ』と呼ばれ、UPJ界隈のみに留まらず、様々な人々の注目を集めることになるのであった。
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