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第64話 (54)恋のメリーゴーランド-1

「ついに!来れました!嬉しいー!」


「UPJでバイトしてるのに、他のテーマパークに来るのってちょっとだけ罪悪感あるね。」


「そんな事ないよ!みんな日本のテーマパークを盛り上げる仲間なんだから!行こうよ、行こうよ!」


 ニコニコした顔で話すあかねちゃん。あぁかわいい。よっぽど楽しみにしていたのか、いつもよりテンションが何段階も高い気がする。


「そりゃそうよ!仕事中と休みじゃ違うでしょ。」


ーー確かにそう言うものか。


 なんて事のない話をしながら、タテノくんとあかねちゃんはゲートを潜り、テーマパークへと入場したのだった。タテノくんの中にワクワクを上回るドキドキがあった。


ーーこれはデートと言って差し支えないのでは?


 休日。遊園地。あかねちゃんと2人きり。僕らの横には、手を繋いで歩いている同世代のカップルもいる。僕達も同じように見られてるだろうか。タテノくんは考える。


ーー今日もう手を繋いじゃってもいいんじゃないか。


 今日はあかねちゃんとの距離を縮める事のできる、かつてないチャンスだ。タテノくんは、肩に力を入れて前をグイグイと歩いてゆくあかねちゃんを追いかけながら、これからどうするかと考えていた。すると、あかねちゃんが急に振り返ってタテノくんに話しかける。


「そういえば、昨日大変だったんでしょ?ビッグボスに聞いたよ。」


「あ、そ、そうなんだ。ダンサーのハナさんが変な人に絡まれて、俺が捕まえてたんだけど、逃げられちゃったんだ。」


 思い出して少し落ち込むタテノくん。自分がもっとしっかりしていれば捕まえられていたのに。そんな様子を見て、あかねちゃんが励ます。


「タテノくんは悪くないよ!ガタイの良い人だったんでしょ?迷惑行為男を捕まえるのなんて、想定できないもんね。」


「まぁ、そうなんだけどーー。」


「けど?」


「俺も男だしさ。やっぱり男らしく捕まえたかったなって思っちゃって。」


「なにそれ!カッコつけちゃって。」


 ふふふと笑うあかねちゃん。あれ?これなんか良い感じなんじゃないか?側から見たら、付き合っている仲睦まじいカップルにしか見えないんじゃないか?いいんですか?いいんですか?このまま付き合っちゃってもいいんですか?


「おはようございまーす!」


 そうして歩いているとテーマパークのスタッフさんが話しかけてきてくれた。あかねちゃんとの2人で、笑顔で挨拶を返す。にこやかな顔でこちらを向いてくれているスタッフさん。どれだけ自然な笑顔であろうと、スタッフの研修で得た笑顔なのだと疑って見てしまうのは自分の悪い癖だとタテノくんは思っていた。


「これからどこに向かわれるんですか?」


「ジェットコースターに乗ろうと思ってて。」


 そうあかねちゃんが答えると、その瞬間スタッフさんの目がキラリと光るのがわかった。


「お?結構絶叫もイケるクチですか?」


「はい、大好きなんですー!」


「初めてでしたら、覚悟して乗った方がいいですよ。結構慣れてる方でも怖かったって仰ることがあるので。」


 スタッフさんの話を聞いて、途端に恐怖を感じるタテノくん。慣れてる人でも怖いのに、ジェットコースターが大の苦手の自分が乗っても大丈夫なのか。恐る恐るスタッフさんに尋ねるタテノくん。


「あ、あのそんなに怖いんですか?」


「えぇ。そりゃあもう。なんていったって“絶望”って名前がついてるくらいのジェットコースターですから。その名の通り“絶望”するほど怖いですよ。」


「わー!楽しみだなぁ!」


 あかねちゃんがキャッキャと喜ぶ。その横でタテノくんは文字通り“絶望”していた。


ーー名前が“絶望”のジェットコースター?!


 なんて怖そうなんだ。ジェットコースターなんてカタカナで英語の名前が主じゃないのか?そんな中、漢字二文字で“絶望”なんて。望みを絶たれる程怖いと言うのか。タテノくんはあまりの怖さに震え始めていた。


「どうしたの?タテノくん?震えてるよ?」


 もう言うしかない。実はジェットコースターが大の苦手で、今日ももう乗れそうにないと。今まではカッコつけて、乗れるフリをしていただけだと。ごめん、あかねちゃん。僕はコーヒーカップとかメリーゴーランドに乗ってキャッキャするのが好きなんだ。


「あかねちゃん。これは武者震いってやつだよ。俺をどう“絶望”させてくれるのか。楽しみでね。」


「おー!タテノくんかっこいいー!私も楽しみで武者震いしてきたよ!」


ーーまたやってしまった。どうして僕はカッコつけて虚勢を張ってしまうんだ。


「お二人とも良い心意気ですね!この道を道なりに進めば、“絶望”に着きますよ。」


「ありがとうございます!」


 ニコニコとした顔で僕らを送り出してくれるスタッフさん。タテノくんには、スタッフさんが処刑人に見えた。今から処刑されるのだ。“絶望”の中で。でも、最後の瞬間にあかねちゃんと一緒に居られるのなら、最高だなと思っていた。


「彼氏さんと一緒にたくさん思い出作ってきてくださいねー!」


ーーか、か、か、か、彼氏さんーー!


 タテノくんはスタッフさんのナイスコメントに心の中でガッツポーズをしていた。これはラブコメでよくあるやつではないか。


ぽわんぽわんぽわ〜ん。


「や、やだ…。」


 頬を赤らめるあかねちゃん。その色は名前の通りまさに茜色であった。恥ずかしくて困ってしまっているあかねちゃんに助け舟を出す僕。


「嫌だなぁ。スタッフさん。俺、まだ彼氏じゃないですよ。」


 そんな僕の発言にあかねちゃんは内心思うのだ。


(えっ…。“まだ”ってことは…。これから…。)


「あっ。あはは!まだって言ったら、これからどうなのかって話になっちゃうか。あはは。」


「…。私は別にいいケド。」


「え?」


「これから、じゃなくて。もう彼氏のつもりだよ。」


「あ、あかねちゃん。」


 2人の間に真っ赤に燃え上がる愛の炎。世界の終わりみたいな茜空が2人を包んでゆくのだった。


ぽわんぽわんぽわ〜ん。


ーーなんてことになるパターンじゃないか!


「もう!嫌!冗談キツいですよ、ただの友達ですから!」


「あ、そうだったんですね。失礼しました!お友達と最高の思い出作ってきてくださいね。」


「…。」

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