第60話 (51)花ちゃんはリスかっ!
『オーディションで最後のダンス、何でミスしちゃったんですかー?』
ーーあぁっうるさい!消えろ!
『審査員の全員の札に、チョウチョの名前!よって、合格者はチョウチョ〜!!』
ーーやめろ!消えろ消えろ消えろ。
『ラストのミスが痛かったですね〜。』
ーー五月蝿い五月蝿い五月蝿い。
『Rainのオーディションは出来レース、合格者はチョウチョに決まっていたんだよ。』
『お前一人騒いだところで、世間は見向きもしない。』
『お前は負けたんだよ。映像だって記憶違いじゃない?』
ーーくそぅ。もう関係ないのに!やめろ!
リュウによる突撃がトリガーとなって、ハナの脳内には嫌な記憶達が溢れ出していた。帰宅したハナは一人自分の部屋に篭り、その記憶達にただ襲われていた。醜く尖った針のような言葉達は、無防備なハナの心に刺さる。もう癒えたはずの古傷に的確に刺さっていく。やめてくれ、と布団に包まり悶絶していた。
ーー気持ちを落ち着けるんだ。ふぅふぅ。
深く深く息を吸う。そして吐く。もう私はRainへの思いは振り払った。私はテーマパークでダンサーをしているだけで幸せなんだ。私が踊って、目の前の人が笑ってくれていたらそれでもう何もいらない。それだけでいいんだ。
『本当にそれでいいの?』
ハナの奥底から、黒い黒い感情が湧き上がってきた。だめだ押さえつけなきゃ。そう思って無心でいようとするハナ。しかし、一度溢れ出した黒い感情は、真っ白な絵の具に落とされた黒色の絵の具のように、もう消し去ることはできなかった。
『馬鹿にされたままでいいの?』
ーー良くない…。
『ハナはこんなもんじゃないでしょ?』
ーー私はこんなもんじゃない。
『やってやろうよ、ハナを見せつけてやるんだ。』
ーー私を見せつける。
〜〜〜
少し時間が経ち、ハナはすっかり落ち着きを取り戻したように見えた。しかし、今布団にくるまっているハナはいつもの“ハナ”とは違う様子に見えた。“ハナ”は布団を出て、テレビの電源をつける。そこには、『ゾンきみ』というドラマのラストシーンが映し出されていた。再放送であろうか。大量のゾンビに囲まれた主人公とヒロインが、最後の大立ち回りを見せていた。
ーーこの主人公、確かにカッピーに似ているな。ヒロインの方も格好は私のゾンビの仮装にそっくりだ。
そんなことを思いながら見ていると、主人公とヒロインがゾンビに噛まれてしまい、ゾンビ化の症状が進行してゆく。そんな中、主人公がヒロインに向かって叫ぶ。
『ゾンビになっても君を愛すカラ…!』
このシーン感動するんだよなぁ。思わず涙を流す“ハナ”。そして一つの考えが“ハナ”の中に浮かぶ。
ーーそうか。これ上手くやれば馬鹿にしてきた奴らを見返せるかもしれない。
そう思い、ハナはすぐにカッピーに連絡を取るのだった。
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