第57話 (48)ゆーれい-2
ハナとチョウチョの事について話すビッグボス。2人はRainというグループのオーディションで戦った仲なのだと言う。
「私、全然知らなくて。今ネットで話題になってるのを見て、調べて知ったんです。あの時、ハナはチョウチョが来るのわかってたから、テレビに出るの嫌がったんだなって。今にして思えば、ですけど。」
「そうだったのか。わかった。この件は僕の方からハナに話を聞いておくよ。」
「今の所はRainのオーディションの2人がまさかの共演しててすごい!くらいの話で何もないんですけど、なんか…。」
急に口籠るビッグボス。おかしく思ったジョージがそんな彼女に尋ねる。
「なんか、どうしたんだい?」
「なんか、嫌な予感がするんですよね。胸騒ぎというか。だから、ハナにもおかしなことがあったらすぐに言うように伝えとかないとと思って。最近彼女も元気がない気がして。」
ジョージはビッグボスに「わかったよ。」と伝える。ジョージはビッグボスのことをスタッフの中で一番信頼している。そんな彼女が嫌な予感がすると言っているのだから、注意するには十分すぎる理由だった。
「オーケイ。ありがとう、また何かあったら連絡してほしい。」
「何話を終わらせようとしてるんですか。まだまだ、ありますよ。」
「えっ?!まだまだあるの?」
「あります。ゾンビナイトはトラブルだらけですから。まずはこのエリアのスタッフの配置と数ですけどーーー。」
「ーーー。そして、オールナイトの時ですがここに柵設置して、お客さんの動線をーーー。」
「ーーー。あと、ここです。ここも今人が溜まりやすくなってるので、注意書きなりスタッフを配置する等しないと…。ちょっと上司さん!!聞いてますか!!」
〜〜〜
その後結局小一時間連絡事項を伝えたビッグボス。諸々よろしくお願いしますね、と言ってビッグボスは部屋を出て行ったのだった。1人残された部屋で考え込むジョージ。
「そろそろ喋ってもいい?」
「びっくりしたー!ユー、まだいたんですか!」
「そりゃあいるさ。ジョージが唯一の話し相手なんだから、話そうよ!」
そう言って話す男の子。この子は数日前の幽霊騒動の時に会った幽霊である。幽霊である、なんて当たり前のように言ってはいるが最初は信じられなかった。しかし、ここ数日こいつは私の周りを漂い続けており、それを私以外の誰も気づかない様子を見て、信じるしかなくなってしまったのだ。
「それにユーって名前も付けてくれたじゃないか。ずっと名前なかったから嬉しいなー。」
「ノー!ユーって言うのは、“you”で英語で“君”って意味でーす!だから、名付けた訳じゃないのです!」
「まぁまぁ、ユーって呼んでくれてるんだから良いじゃんか。幽霊のユーなんて洒落が効いてて良いよ。僕は気に入ってるよ。」
「お願いです!成仏してください!ナンマイダブ!」
「外人さんがナンマイダブって言ってるのに初めて見たかも。成仏しろ、って言われて成仏出来てたら僕も苦労してないんだよね。ジョージ、幽霊舐めんなって話だよ。」
弁が立つユーに全く歯が立たないジョージ。しかし、UPJでジョージの事をジョージと呼んでくれるのは、ユーだけと言う事に気づき、そこは少し嬉しいのだった。
「それに僕が助けになることもあるかもよ?」
「ユーが助けに?何でですか?」
「僕幽霊だから、結構自由に動き回れるんだよね。ジョージ以外の人に見られたことないし。」
「それがどうしたんですか?」
「勘悪いなー。パークの中で、何か気になることがあったら、僕が調べてきてあげるってこと。その気になれば、政治家の裏金取引の場面だって見に行けるよ。なんて言ったって、僕死んでて暇だし。」
ーーそうか。ユーに色々と頼めば何か解決できることがあるかもしれない。幽霊が仲間だなんて心強い。これはプラスに考えれば、良い“相棒”を手に入れられたのかもしれない。
「僕が成仏するまでの間、仲良くしようよ。お互い損しないでしょ?」
〜〜〜
ビッグボスはジョージの部屋を出た後、いつものように休憩室に座り込んでぐったりとしていた。最近は歳のせいか疲れが取れない気がする。両腕を上に上げて、ぐぐぐーっと背伸びをする。身体中がバキバキになっていて、特に肩が凝りに凝っているように思う。
「お客さ〜ん。お疲れのようですね〜。」
突然背後から声をかけられるビッグボス。声の主は肩に手を置き、親指にグッと力を入れて凝りをほぐそうとしてくれている。
「そうなんですよ。最近寝ても疲れが取れなくて、身体の節々が悲鳴をあげている気がします。」
「ビッグボスは働きすぎなんですよっ!」
よっ!の言葉尻に合わせて親指にグイッと力を入れる。思わず、「痛い!」と声をあげてしまうビッグボス。
「ちょっと!あかねちゃん!急に強くしないでよ!」
「ごめんなさい!でも、今のそんなに強くしてないですよ?ビッグボスの肩が凝りすぎてるんですよー。」
「まじ??やっぱりそうなのかなー。マッサージにでも行こうかしら。」
いつまでもあかねちゃんに甘えてほぐしてもらうのも申し訳ない。ちゃんと時間をとって、マッサージに行くべきか。
「そういえば、ビッグボスにこの前インタビューしてた人いるじゃないですか?」
「え?!チョウチョさん?」
「そうそう。その人です。」
マッサージしながら、あかねちゃんが話す。あまりにもタイムリーな為、体が少し強張ってしまう。まさか、ハナとの事で何か起こったのだろうか?
「あの人、今炎上しちゃってるみたいですよ。」
「それってまさかハナとのこと??」
恐る恐るあかねちゃんに尋ねる。炎上までしたとなると、ハナと話し合いをしなくてはいけない。炎上にかこつけた変な輩がパークに押しかけてくるかもしれない。
「え??いや、ハナさんは関係ないですよ。何か有名な俳優さんとデートしてる写真が撮られたみたいな話で。その俳優さんが既婚者だから、不倫だーって。本当にみんな不倫のニュース好きですよね。」
「えっ?!そうなんだ?そんなことがあったのか。」
ハナとの話じゃなくてホッとするビッグボス。そのニュースだけなら、ハナに飛び火することもなさそうだ。
〜〜〜
ーーこのチョウチョって人、この前ウルパー取材するテレビに出てたやつか。
リュウはスマホでネットニュースを見ながら、いつものようにSNSに誹謗中傷を書き込んでいた。
『不倫とか人間のクズすぎるwwこんなタレントをスポンサーは許すのか?』
タレントがゴシップで凋落することを何よりの楽しみとしているリュウにとって、チョウチョ不倫は最高のニュースであった。もっと叩くネタはないかと、過去のインタビュー映像などをネットサーフィンしていると、とある投稿が目に入った。
『Rainのオーディションで戦ったハナさんとチョウチョさんがまさかの共演してた!偶然だと思うけどドラマチック!』
その文章と共に投稿された写真には、チョウチョとウルパーのダンサー、その後ろの方にハナが少し映っていた。
ーーこれは。バズるニオイがするぞ。
格好のネタを見つけたリュウは、湧き出る笑みを抑えられず大笑いするのだった。
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