第56話 (47)ゆーれい-1
ジョージは自身の仕事部屋に篭り、ハロウィン当日に開催するゾンビナイトのオールナイトイベントの発表に向けて作業を進めていた。裏側で用意する殆どは調整を終え、後は発表からのチケット販売、当日に向けた準備を進めるのみになっていた。
「ヨーシ!これは盛り上がるに違いないですネ!」
「オールナイトなんてやるんだ!楽しみだなー!」
「…。」
ジョージは背後から聞こえる声を無視してパソコンの画面をただ見つめていた。背後にいた男の子は続けてジョージに話しかける。
「ちょっとーさっきから無視は酷いよー。聞こえてるんでしょ?」
「…。」
コンコン
沈黙の中、ジョージの部屋をノックする音が響く。
「どうぞー!」
「失礼します。」
ガチャ、と言う音と共に部屋に入ってきたのはビッグボスだった。その眉間には皺がよっており、またもやトラブルが起きたであろうことが一瞬でジョージに伝わった。
「ヘイ、ガール!そんな顔しちゃ美人が台無しですよ!一体何があったって言うんですか。」
「上司さん、私ももうガールって歳じゃないですよ。ミセス前田とでも呼んでもいいんですよ。」
「ミセスって。ビッグボスは独身だからミズ前田の方が正しいですよ。」
「…。ハラスメントですよ。」
ーーしまった。確かにそうだ。だけど、言語のミスを指摘しただけなのに!日本語は難しい!
「ソ、ソーリーソーリー。で、要件は何ですか??」
「まぁいくつかあるんですが。まずはこの前のテレビの件で。」
この前のテレビの件と言えば、ビッグボスとダンサーの男の子が出た番組のことか。
「あれはビッグボスのメイクが…。」
恐ろしくビッグボスとメイクの発音が良いジョージを、ビッグボスが遮る。
「私のメイクの話じゃなくて!それはもういいんです!」
少し顔を赤くしたビッグボス。この間のメイクが濃すぎた件は彼女も恥ずかしくて触れられたくないようだ。
「一緒に出てたダンサーの男の子の話です。」
「あっ、ああ。カッピーくんかな?あのお姉さんを亡くされてるっていう…。レストインピースですね…。」
「それ!それです!それ、デマですよ。その件で文句を送っといて欲しいんです。」
「えっ?!デマ??あれ嘘なの?!レアリーですか?」
ビッグボスの話を聞くに、あのテレビ番組が予想以上に見られてカッピーはお姉さんの死を乗り越えて活躍するゾンビダンサーという事で変な人気が出てしまっているらしい。
「カッピーのダンスを見て泣く人まで出てきていて、異様な雰囲気になってます。それに人もどんどん増えてきていて、カッピーのいるエリアのオペレーションに支障をきたす程です。」
「それは困ったなぁ。彼と同じポジションのゾンビダンサーの子のシフトを一旦増やして、調整するのはどうかな?時間が経てば落ち着くでショウ?」
「彼と同じポジションのゾンビダンサーの子は、今のカッピーよりも全然人気です。前から話題にしてる、りゅうじん君ですよ。」
「オー、シット!そうか。何でそのポジションの人は人気になってしまうんだ!」
「呪われているのかもしれませんね。」
「とりあえずあのテレビ番組のスタッフには文句を入れておくよ。姉生存の訂正もお願いしとこうかな。」
「すいません。よろしくお願いします。」
ジョージは手帳にサッとメモをして、垂れてしまっていた髪を後ろにかき上げた。いつもぴっちりとオールバックに整えられているが、今日忙しかったせいか、髪型は乱れてしまっていた。
「話は以上かな?ビッグボス、どうもありがとう。」
「いや、今のが一つ目です。」
「えーー!まだあるのー?」
驚いて椅子から立ち上がるジョージ。その衝撃で再び髪型が乱れてしまう。ずっと沈黙していた男の子は、そんなジョージの右側からひっそりとした声で話しかける。
「大変そうだね。」
「シャラップ!ちょっと今は黙っててくださーい!」
「黙ってろってなんですか?」
ビッグボスには男の子の「大変そうだね。」の声は聞こえていないようだった。やってしまったと思ったジョージは必死に取り繕う。
「いや、今のはビッグボスに言ったわけじゃなくて、そのー。はは。」
「…?」
「と、とにかく次の報告は何かな?ワッツ?」
「次はこれのことです。」
そう言ってスマートフォンを差し出したビッグボス。その割れた画面には、先ほど話したテレビ番組の画面が映っていた。
「これは…。さっき話してた番組のスクリーンショットですか?」
「そうなんです。カッピーとインタビュアーのチョウチョさんが話してるんですけど、この後ろよく見てください。」
そう言ってスマートフォンの画面をタップして、拡大するビッグボス。そこにはよく知っているダンサーの女性が写っていた。
「これはハナですね?これが何か?」
「実は今この画像がネットでちょっとだけ話題になってて。」
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