第50話 (42)更に心配するオラフさん。
やぁ、僕はオラフ。UPJで一際大きいゾンビダンサーがいたら、それは僕さ。聞いておくれよ、最近友達のカッピーについて心配していることがあるんだ。え?またかって?以前にも増してすごいんだよ。テレビの効果なのかな。もう、ストリートに出ている間はカッピーの姿が見えない程なんだ。
「ゔぅ、わぁあ!」
「このゾンビおっきいー!可愛いー!」
「待って、あそこのゾンビこの前のテレビの人じゃない?」
「本当だ!!苦労人のゾンビさんだー!行こう行こう!」
このように殆どの客がカッピーの方に引き寄せられていってしまう。この現象は僕も経験したことがある。りゅうじんくんの人気が加熱した時と一緒である。違うのは、りゅうじんくんはテレビなどでは無く、自分のかっこよさとダンスの腕だけで人気になったところくらいだろうか。改めてりゅうじんくんの人気ってすごいな。
『ウォオオーーーン、ウォオオーーーン』
ーーダンスタイムだ!
この時はゾンビ側も少しだけ緊張感が増す。この時は、なんとなく自分がダンスできるスペースをお客さんに開けてもらって、円形になった群衆の中でダンスする。後ろで見えなさそうな小さい子どもがいたら、前の方に出してあげたりもする。意外とダンス開始までの短い間に考えることが多いのだ。今回も同じようにしてなんとなくダンススペースを作ったところで遠くの方から声がした。
「きゃーーー。」
「押さないでください!」
「おい、押すな!人が倒れてるんだぞ!」
ーーカッピーが踊ってるであろう方角だ!
きっとカッピーのダンスエリアで何かあったに違いない。ダンスしながらも視界の端でスタッフの方たちが向かうのが見えた。向こうは向こうで何とかしてくれるはずだ。ならば、自分ができるのは自分の担当の場所で精一杯ダンスをすることだ。エンターテイメントの世界に入った時に口酸っぱく言われた言葉がある。
ーー『ショーマストゴーオン』だよ。
始まったショーはいかなる事があっても、続けなくちゃいけない。当時舞台で役を演じていた際、監督によく言われた言葉だ。幕が開いた瞬間から幕が閉じるまで、舞台の時は止まらない。ステージは違っても今もそれは変わらない。自分のダンスはやり切らなければならない。集中力を研ぎ澄ませて、ダンスを続ける。見てくれている一人一人の目を見る。数人は向こうの状況が気を取られているようだった。彼らの視線を少しずつこちらのダンスに戻させていく。
ーーあぁ、この感覚だったなぁ。
そんな風にオラフさんは考えていた。自分は見た目が整っているわけでもないし、体型も巨大なので、見た目だけでは色んな人を振り向かせる事ができない。ダンサーなのにその体型は何?って言われたこともある。でも、一度踊り出せば関係ない。実力で色んな人を振り向かせる事ができた。
今回もそれとは違うけど、みんなを視線を集めて楽しませることは近い感覚を感じる。折角来てくれたらパーク、その思い出の一つにゾンビとのダンスがなってくれたら嬉しい。その中にトラブルに気を取られて楽しめない瞬間があって欲しくない。それは我々エンターテイナーが頑張って取り除くことのできる要素だ。
ダンスの振り付けでぐるっと回転する間もオラフさんは周りの様子を気にしていた。もうオラフさんの周りに集中力を失っているお客さんはいなかった。
ーーよし、ここから最後はみんなでダンスを踊るゾーンだ。
「みんなー!一緒に踊ろう!!」
招き手になったオラフさんが手をフリフリとして、周りにダンスを促す。群衆はそれに応えるように少し前に出てオラフさんと同じダンスを踊る。
ーーあぁ、楽しい!
時々、こういう風にお客さん全員と一体になった感覚になれる。こういう感覚が時々あるから、自分はダンスを続けているのかもしれない。そんな風にオラフさんは思っていた。
〜〜〜
その後休憩時間になったオラフさんは休憩室に戻った。そこにはぐったりとしたカッピーがソファに横たわっていた。
「カッピー、大丈夫だった??」
「オラフさーん。しんどいっすよー。」
カッピー曰く、ダンスが始まる時間になった際にダンスを前で見たいお客さん達が前に押しかけ雪崩のように人が倒れてしまったらしい。結局、その回のダンスは中止になり、カッピーもすぐ休憩室に帰ってくることになってしまったらしい。
「あのテレビが放送されてたら日に日に人が増えて、ダンスタイムの前は動く隙間もないって感じですよ。」
そう話すカッピーの顔は疲れ切っているようだった。なんか少し老けたかな?あんなに始まった当初は元気いっぱいだったのに。
「とりあえず、カッピーの周りに人が集まりすぎてたら、僕とかハナさんで間に入って行ったりして、密集した人たちを散らすようにするよ!」
「本当ですかー?本当にありがたいです。」
「そうそう、りゅうじんくんで慣れてるからやりようはあるよ!ねぇ?ハナさん?」
「…。」
オラフさんに問いかけられたハナさん。ハナさんはそんなことは上の空という感じでぼーっと壁の方を眺めていた。
「ハナさん?おーい!ハナさーん!大丈夫ですか?」
「あっ、え?ごめんごめん。何の話だったかにゃー?あはは!」
僕らが何度か問いかけてやっと反応を見せたハナさん。いつものようにおどけては見せていたが、何か元気のない様子だった。
「ていうか、カッピーの癖に人気ぶって生意気だぞ!こいつー!」
カッピーに近寄って頭を拳でぐりぐりとするハナさん。
「ちょっとやめてくださいよ!もう!」
「あはは!もう何やってんの2人共!」
ふざける2人を見ながら、笑ってしまうオラフさん。色々あるけど2人ともこうして話す分には元気そうで安心する。
こうして、オラフさん他2名は休憩室で束の間の平和を満喫するのだった。
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