第48話 (40)good friends
「1.2の3で、ボカァーン!愛の爆弾チャンネル〜!シャクレですっ!」
「今日はウルパーの中にネコちゃんの足跡が現れたという噂を検証したいと思いまぁす!」
「にゃあ?」
「いや、お前がネコになってどうすんねーん!」
「あは!はは!あはははは!!」
シャクレた男性とメガネの男性がふざける姿を小太りの清潔感のない男がカメラに収めていた。その笑い声はわざとらしく大きかった。その撮影の騒々しさにテーマパークに遊びにきているお客さんも思わず振り向く。
「じゃあ早速現場の方に向かいましょう!」
「リュウ、最近どうよ。チャンネルの方は。」
「うーん。まぁまぁですかね。ゾンビナイトは稼ぎ時ですから、思ったよりは…って感じですね。」
リュウはここ最近投稿した動画の渾身のタイトルを思い出していた。『完全に人間辞めてるゾンビの動き草www』、『おい、ゾンビすぎるだろwww』、『神回キタコレwこれがゾンビナイトです(違う)』、『もうゾンビ超えて人間ではww』、『笑いの神が降臨した神回』など。どれも自分のユーモアセンスが爆発した傑作のタイトルとサムネイルなのに、どうも再生回数が伸びない。
リュウが考え込んでいると、『愛の爆弾』のメンバーであるシャクレさんが声をかける。
「あのさ、リュウのチャンネルを愛の爆弾チャンネルにして動画あげたらいいんじゃ無いかって思うんだよねー。」
「えっ?そうですか?」
「リュウくんのチャンネルは登録者数万人いるじゃん?『愛の爆弾』の方は623人しかいないし、再生もあんまり伸びないし。どうかなー?」
「うーん。俺は『愛の爆弾』これから伸びると思うんすけどねー。まだ分けてていいじゃ無いですか?」
シャクレさんの急な提案にびっくりするリュウ。リュウのチャンネルはウルパーの動画を上げるチャンネルなので、『愛の爆弾』とは分けておきたいというのは建前で、実際は自分で大切に育てたリュウチャンネルを乗っ取られたくはなかった。
今後は解説とかもやってインフルエンサーになっていきたい、というのがリュウの本音であった。現在色んなウルパー系インフルエンサーの動画を研究して片っ端から真似した動画を上げていこうと画策しているところだったのだ。パクリだなんだと騒がれようが、登録者と再生回数が伸びればそれが正義だとリュウは考えている。
実はイラストレーターの人に頼んで自分をイラスト化したキャラクターも作成中である。このキャラクターを動画のサムネイルに挿入して、差別化を行うのだ。結果的に自分がインフルエンサーとして有名になることが、『愛の爆弾』の2人にとってもいずれはプラスになると思う。
「さぁ!問題のネコの足跡があると言われる場所につきましたー!さぁどこだー!ネコちゃんはー!」
「にゃあ〜。」
「いや、お前が猫になってどうすんねーん!」
「あはは!!はは!はははは!!」
通りの真ん中で広々とスペースを使って撮影する三人。通行する他のお客さんの迷惑などはお構いなしの様子であった。彼らにとってはこうやって撮影することが当たり前なのである。
〜〜〜
シャクレさん達との動画撮影が終わり、リュウは1人パークを歩いて動画投稿のネタ探しをしていた。
「おっ?あれは!!」
リュウの視線の先には工事中の囲いがしてある建物があった。その建物は数年前にクローズしたアトラクションのあった場所であった。そのアトラクションの跡地に何ができるのかの論争がウルパー系インフルエンサー達の最近の動画の格好のネタなのだ。
大荷物と大きな体を揺らして、リュウがその建物に近づく。工事中の囲いに沿って周辺をぐるりと回っていると、その一部に隙間が出来ているのに気付いた。
ーーこの隙間から中が見えるかもしれない。
そう思い、中を覗くと建物の中にとあるキャラクターのマークが描かれているのが見えた。
ーーやっぱりここはあのキャラクターのアトラクションが出来るんだ!
これを拡散すれば再生回数が増えるに間違いない、そう思ったリュウは隙間から建物の中の様子を動画に収め、満足げな顔でその場を立ち去ったのであった。
〜〜〜
「あかねちゃん、これ見てよ。」
休憩室で文字通り休憩していたタテノくんは、あかねちゃんにスマートフォンの画面を見せるのであった。
「どうしたの?なに?これ??」
「あの工事してるアトラクションあるでしょ?あそここのキャラクターのアトラクションになるんだって。」
スマートフォンの画面には工事中のアトラクションを隠し撮りしたと思われる動画が写っていた。その投稿主の名前は『リュウチャンネル』という名前らしい。
「はぁ〜。タテノくん。ビッグボスの話何にも聞いてないの?」
「えっ?!どうして??」
「工事や改装エリアの撮影や情報の拡散は禁止だから、パークの見回りしてる時に気付いたら注意してってこの前言われたでしょう?」
あかねちゃんに言われて、ハッとするタテノくん。そういえばそうだった、完全に忘れていた。
「この事ビッグボスに報告してくるね!」
「あ、あかねちゃん!僕がその事を忘れてたっていうのは言わないでほしい…。」
「もう!心配しなくても言わないよ!ちゃんとルールは覚えとくのよ!」
あかねちゃんに優しく注意され、はーいと力なく返事するタテノくん。あかねちゃんは、スタスタと部屋を出て行ってしまった。あー、あかねちゃんとの幸せな休憩時間が終わっちゃったなー、と思いタテノくんはしょぼんとするのだった。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
ここまで読んで頂いて本当に嬉しいです。
このキャラのエピソードもっと読みたいなどあれば、コメントで教えて頂きたいです!
ぜひよろしくお願いします!