第45話 (37)ghost-1
「ね、ねぇビッグボス。話があるんだけど。アーユーオーケーかな?」
「アイムオッケーですよ、上司さん。何でしょう?」
「上司さんって、やめてよ!僕はジョージだよ!確かにビッグボスの上司でもあるけど!」
いつまで経っても日本語を完璧に話せないジョージさんの英語混じり日本語に、合わせたように英語混じり日本語で返すビッグボス。上司のジョージさんの方がボスなのに、何で私にビッグボスって言うんだよ。前は前田さんって言ってなかったか?
「実は何日か前の夜のベイサイドエリアにゾンビが出てたって言う話があってネ。」
「ベイサイドエリアに?あそこはゾンビがいるエリアじゃないですよ?お客さんの仮装とかじゃないんですか?」
「ノーノー!お客さんが入れないレストランの近くで見たって話ナンダヨ!リアルガチじゃないカって話ナンダヨー!やばいよ、やばいよー!」
テンション高く慌てふためいているジョージは、まるで往年のコメディドラマのようであった。そんな姿を見て、笑いながらも疑問が湧いてきていた。
ーー確かに妙かもな。
レストランの付近は夜中にスタッフも近づかないし、ゾンビ役のダンサー達が来るわけもない。一体その人が見たのは何なのだろう。
「それで、その辺を見回れば良いんですか?でも、上司さん1人じゃダメなんですか?」
「もう!上司さんってやめてよ!僕はジョージだよ!確かにビッグボスの上司でもあるけど!」
「…。」
そういうのじゃない、とばかりに沈黙するビッグボス。その空気を察して、ジョージは続けて話す。
「い、いやぁ〜。だって1人だと怖いじゃないか。」
「怖いって?」
「いや、だって本物のお化けだったら僕呪われちゃうよー。スケアリーだよ。」
ーーはぁ。馬鹿馬鹿しい。本物のお化けなんているわけないのに。まぁでもイタズラ等で誰かが忍び込んでいる可能性もあるし、ちゃんと調べる必要はありそうだ。
〜〜〜
「ここがゾンビがいた場所ですか?」
閉園後、ベイサイドエリアにあるレストランにやってきた2人。湖に面している側はガラス張りになっており、湖の景色を眺めながら食事ができるようになっている。ガラス張りの外側はウッドデッキになっていて、人が通れるようになっている。この場所に幽霊ゾンビがいたということ、らしい。
「この場所を通れるのはレストランの方とキャラクターくらいですもんね。」
そう、レストラン利用客でもこのデッキには入れないようになっているのだ。なので通行できるのは、基本的にはパーク関係者のみのはずである。
「いや〜。なんか怖いね、人がいないと雰囲気あるよ。ビッグボスが一緒でよかったよ。」
「ゾンビ見かけたって人はいつ位だったんですか?」
「確か、閉園直前くらいだったらしいよ。」
「じゃあ、レストランの人って説もないですね。その時間にはいないらしいですから。」
「ははは!何言ってんの!レストランの人な訳ないでしょう!ゾンビの姿してたんだから!」
「見間違えかもしれないでしょ!可能性を一つずつ潰していかないと!」
「そ、ソーリー。確かにそうだね。」
茶化してくるジョージを一蹴するビッグボス。彼を放ってビッグボスを考え込んでいた。ここに来る可能性のある人。ゾンビの格好という情報からして、ダンサーか仮装したお客さんの可能性が高い。お客さんならば、間違って入っただけの可能性もある。それならば、今後周辺の警備を注意して行えば防げそうである。
「とりあえず、ちょっとレストランの中に隠れて誰か来るか待ってみますか?」
「え、もし本物のお化けが出てきたら、どうするの??」
「そんなことないから大丈夫ですよ。」
「あ、僕あそこの作業してる人に聞き込みしてくるよ!目撃情報とか教えてくれるかもしれないし。」
そう言って遠くの方を指差すジョージ。確か前に修繕の作業をしてるスタッフがいた付近だ。暗くてよく見えないが、この前の作業員がいるのだろうか?
「じゃあ、行ってくるね!ビッグボスは中に入っててよ!」
そう言うとジョージは向こうのほうに駆けていった。
〜〜〜
「おーい、君。ちょっといいかい?」
暗がりにポツンと立っていた男に声をかける。足元にはペンキやらスプレーやらの道具が散乱していた。塗装の修繕をやってくれているスタッフだろうか。
「あっ、えっ?俺に聞いてるんですか??え?!」
「そうだよ、君!ユーだよ!だって君しかいないじゃないか!」
「えー!嬉しい!俺、ずっと寂しくて!」
一体何が嬉しいんだろう、とジョージは思った。しかし、1人で孤独に深夜作業をするのは寂しいものなのか?なので、話しかけられて嬉しいということなのだろうか?
「おじさん、なんの用なの??」
「おじさんって、僕はジョージだよー。君はここによくいるのかい?」
「ここに?はい!そうですね!俺はよくこの辺いますよ!」
「じゃあ、この辺でゾンビを見たことはないかい?あのレストラン周辺で見たって人がいたんだよネ。」
「いやぁ、見ないなー。俺も時々あのレストラン近くに行くけど、ゾンビに会ったことはないけどなー。」
「そうかぁ。よかった、ありがとう!」
「よかったって何がですか?」
「いや、本物のゾンビが出てるんじゃないかと思ってね。」
「本物のゾンビ?おもしろ!本当にいたら事件っすね!」
変なおじさんだなーとお腹を抑えて笑う男。そんなに面白かったのかな。男は僕の肩に手をかけて再び話す。
「僕もあの辺に変な人がいないか、注意深く見ときますよ!見かけたら、また伝えますね!」
「本当に?ありがとう!助かるよー!」
男の方に手をかけて、肩を組んだような形になる2人。そして、作業頑張ってねと言って男にハグをした時、ジョージは違和感を感じた。
「君、寒いのかい?体がすごく冷えてるね。上着を貸そうか?」
「優しいっすね!でも、大丈夫ですよ。だって俺は…。」
「うわぁぁあ!!!」
男の話を遮るように突然レストランの方角から男のような声の悲鳴が聞こえた。レストランの方にはビッグボスしかいないはずである。あれはビッグボスの声ではない。一体誰なのだろう。
「何かあったのかもしれない。戻らなきゃ!」
「あっ、俺もついて行きます!」
そして、ジョージと男は悲鳴の聞こえたレストランへと向かったのだった。
〜〜〜
ジョージがビッグボスの元に戻った時、そこには驚きの光景が広がっていた。
仁王立ちするビッグボスとその足元には腰を抜かして立てなくなっているゾンビがいた。ゾンビはずっとごめんなさいごめんなさいと連呼していた。ん?ごめんなさいごめんなさいと連呼していると言うことは、お化けではなかったと言うことなのだろうか?
レストランのデッキにへたり込んでいるゾンビを見下ろしながら、ビッグボスが話しかける。
「どう言うことか説明してもらいましょうか?」
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