第42話 (34)カルーアちゃん、燃ゆ-3
炎上した翌日、カルーアちゃんは落ち込んでいた。流石に動画を晒したのはやり過ぎだったかもしれない。あの割り込みおじさんも悪いけど、怒りに任せてSNSに投稿した私も悪い。はぁ、自己嫌悪。何とか昨日に戻ってあの投稿を無かったことにできないか。
少し秋らしく寒くなってきたパークの芝生エリアでカルーアちゃんは感傷に浸っていた。そこに1人の男が近づいてくる。
「カルーアちゃん、昨日見たよ。大変だったね。」
「あぁ、Sポテトさん。あれは私が悪いんです。怒りに身を任せて、あんなことを。ごめんなさい。」
「僕に謝っても仕方ないよ!それにカルーアちゃんの気持ちもわかるし、あの割り込みは確かに酷いよ。」
優しいSポテトさんが慰めてくれる。しかし、あのおじさんの割り込みが酷いことと私が晒したことは別の次元の話だ。私もまた悪いのだ。
「Sポテトさん。私しばらくりゅうじん君から、ショーガチ勢から離れようかなと思って。」
「え?!そうなの?!昨日のことで?」
「昨日のもあるし。最近ゾンビナイトも混雑して、ショーの最前争いもすごいじゃないですか?何か楽しめなくなっちゃって。」
話しながら少し涙ぐむカルーアちゃん。そんなカルーアちゃんの様子を見て、Sポテトさんが優しく話しかける。
「カルーアちゃんがそう思うのなら、離れてみるのもいいと思う。無理に追っても楽しくないしね。大丈夫!ゾンビナイトは無くならないし、ウルパーもずっとあるはずだから!」
確かに最近のりゅうじん君人気はすごいもんねーとSポテトさんが呟く。
「だから、私今日最後にゾンビナイト見て、それでしばらく離れようと思ってるんです。写真投稿するアカウントも消しちゃったし。」
「でも、今日りゅうじん君いないシフトな気がするけど良いの?」
「いいんです!最後に気軽な気持ちで見たいだけなので!他の昼のショーも写真とかガチらずに楽に見ようと思ってて。」
「そうなんだ。寂しくなるなぁ。じゃあ、これから一緒にPPPショーを見に行こうよ!」
「はい!行きましょう!」
秋風が吹く中、Sポテトさんと共にショーへと向かう。これで最後だと思うと足取りも軽かった。
〜〜〜
ズッキューーーン
その夜ゾンビナイトでカルーアちゃんはあるゾンビに目を奪われていた。昼には半引退宣言をしていたカルーアちゃんだったが、夜にはその事を忘れてカメラを片手にシャッターを連写していた。
ーーこのゾンビ推さざるを得ないっ!!
〜〜〜
いつものようにストリートをゾンビとして闊歩していると、不思議な雰囲気を漂わせる女性が目に入った。その女性は悲しげな表情をして1人で立っていた。首には大きなカメラを下げているが、写真を撮る様子もなく、かといってゾンビとの交流を楽しむ様子もなく、ストリートを行ったり来たりするゾンビや人をただ眺めている様子だった。
(何か、落ち込む出来事でもあったのかな?)
カッピーはゾンビとして漂いながら、そんなことを考えていた。そして、ハナさんやオラフさんからもらった言葉を思い出していた。
『1人で来てる人も楽しませるのがゾンビとしての心得さー!』
『ひ、1人でも多くの人に笑顔で帰ってもらいたいじゃない!』
(よーし!)
「うぅゔ!ゔぁぁあ!!」
落ち込んでいる様子の女性に近づき、驚かすカッピー。その女性は意表をつかれたのか、とても驚いた様子で「びっくりしたー!」と声を出していた。カッピーは何とかこの女性が元気になるようにと思って、腕を上下にしたりしておどけてみせた。すると、女性はアハハと笑い出してしまった。
「君、励ましてくれてるの?ありがとう。」
そういうと、その女性は首のカメラを構えて僕の方に向きパシャリと写真を撮った。そして、数秒レンズを覗き込んだのちブツブツと何か呟いていた。
ーーこのゾンビ、ビジュやばくない?よく見たら、ゾンキミに出てたタケティーに似てる。こんなゾンビ今まで見たこと…そうか、りゅうじん君とシフト入れ違いだから見てなかったのかーー
「?」
何やら呟いているが元気が出たのなら良かった。あまり1人の人に構うのも良くない、ビッグボスに怒られると思い、女性の元を離れようとすると、背後からパシャパシャリとシャッター音が聞こえてくる。どうやら先程の女性が追いかけてきているようだ。
その後、その日一日中その女性はカッピーの周りを漂っていた。カッピーは元気が出たようで良かったとほっとしていた。
〜〜〜
『このゾンビさん、『ゾンきみ』に出てたタケティーに似てて推せる。』
カルーアちゃんはその日のうちにアカウントを作り直し、先ほど撮った写真を投稿していた。ふふふ。新しい推しが出来ちゃったー!明日からもゾンビナイトが楽しみだー!!パソコンで写真を整理しながら、カルーアちゃんは鼻歌を歌って明日に備えるのだった。
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