第37話 (29)オラフさんと黒い猫-2
夜が更け、ゾンビナイトの喧騒からパークが静けさを取り戻した頃。ダンサーやスタッフ達の休憩室に張り紙がしてあった。その張り紙には、デカデカと『正直に名乗り出なさい! 前田』と書かれており、中央には黒猫のイラストと猫缶の写真がどんっと描かれていた。そして、右下には『バレてるのよ、もう。』と小さく書かれていた。
「何?これ?」
ココロさんが紙パックジュースのストローをガジガジと噛みながら、張り紙を指差す。カッピーも訳がわからず、「なんでしょうね?」と首を傾げるだけであった。すると背後から「ひぃっ!」という声がした。振り返るとオラフさんが顔面蒼白で突っ立っていた。
「ど、どうしたんですか?オラフさん?」
「なに、ビビってんすか??」
オラフさんの視線の先には先程の張り紙があった。そしてカッピーは先程缶詰のようなものをオラフさんが持っているのを思い出していた。
「えっ?もしかしてこの張り紙って、オラフさん??」
カッピーが恐る恐る問いかけると、少しの沈黙の後にオラフさんは絶叫したーー。
「ごめんなざぁあぃぃい。だってだって、可哀想で、ぐっうぅうう。」
オラフさんの突然の慟哭に2人は驚きつつ、泣き叫ぶオラフさんを何とか落ち着かせて話を聞くことになった。
〜〜〜
「これこれこういうことで。」
オラフさん曰く、数日前にパークの裏でコンビニのゴミを漁ってる黒猫を見つけたらしい。可哀想に思ったオラフさんは、すぐに猫缶を買い与えたらしい。その後すぐに猫に懐かれたオラフさんは、猫を抱っこしてパークの外へ出してあげたらしい。しかし、次の日コンビニの近くへ行くと。
ニャ〜。
「あの猫ちゃんがいてさぁ、何度連れ出しても戻って来ちゃうんだよ。でも、僕の家ペット禁止だから連れ帰れないし。痩せててかわいそうだから、餌をあげなきゃと思って。」
「そうだったんですね。」
「オラフさんらしい、話っす…ね…。はっ、はっくしょーーん!!」
突然大きなくしゃみをするココロさん。カッピーが大丈夫ですか?と言いながら、テーブルの上にあったティッシュを差し出す。
「わ、悪い。俺、猫アレルギーでさ。多分オラフさんに着いてる猫のなんかが。はっくしょーーん!道理で最近オラフさんの近くにいると、目が痒い訳だ。」
俺ちょっと席外すわ、と言い残しココロさんは去っていった。ココロさん猫アレルギーなのか。確か、ハナさんに昔のショーの動画を見せてもらった時、猫耳つけて猫男の役でショーで踊っていたのに。意外なギャップである。
「とりあえずオラフさん。ビッグボスに謝りに行きましょうよ。猫ちゃんの活動範囲が広がって、お客さんがいる時に表に出たら騒ぎになりますよ。」
「そ、そうだね。」
カッピーはスマートフォンを取り出し、ビッグボスに電話をかけた。オラフさんにも聞こえるようにスピーカーモードに切り替える。コール音が2回ほど鳴った後、慌ただしい様子のビッグボスが電話に出た。
『も、もしもし?!カッピー?何?今大変だから、後でも良い?う、うわぁぁあ!!』
電話の向こうからガッシャァアンという音と共にキャーやらワーやら声が聞こえて来た。一体何をしているんだろう。ビッグボスがあまりの忙しさに半狂乱になって暴れているのだろうか。だとしたら、最悪のタイミングで電話をかけてしまった。
『カッピー、暇ならこっちに来て手伝って!!今、ベイサイドエリアにいるから!』
「手伝うって何をですか?」
完全に嫌な予感がする。僕はただオラフさんの黒猫の話を伝えるだけだったのに。くそぅ、今日は妙に追い回してくる女性のお客さんがいて、疲れてたのに!
『とにかく来て!逃げ回ってる猫を追いかけてるの!』
プツッ。という音と共に電話が切れた。
ーー猫!!
カッピーとオラフさんは互いに向き合い、目を見合わせた。そして、話もせずにすぐに休憩室の扉を開き、ベイサイドエリアへと向かうのだった。
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