第36話 (28)オラフさんと黒い猫-1
ニャ〜。
「よしよし、ごめんねぇ〜。お腹すいたよね。」
暗がりで猫を撫でながら、餌である猫缶を差し出す男。猫は嬉しそうにその巨漢の男に擦り寄り、餌を頬張るのだった。
「よしよし、可愛いなぁ〜。」
ニャ〜。
「あれ?猫ちゃん?いるのー?」
巨漢の男が猫と戯れていると、遠くから女の子の声がした。巨漢の男は見つかるとやばい!と思って急いで身を隠した。そして、猫もそれは同じようで颯爽とどこかへと走り去っていったのであった。
〜〜〜
「あの、ビッグボス。話があるんですけどー。」
「あかねちゃん、どうしたの?神妙な顔して。」
そう言いつつ、ビッグボスは覚悟していた。新人のバイトが神妙な顔をしてやってくるということはーー、そういうことだ。
あかねちゃんは今までよくやってくれた。このまま続けてくれていれば、すごく助かったんだけどな。やっぱりタテノのミスをカバーするのに疲れたんだろうか。私のケアが足りなかったのだろうか。これからゾンビナイトは混雑が増していくのに、あかねちゃんを失ってしまうのはー。
「いや!私やめませんってば!!」
考え込んで涙目になっているビッグボスに、あかねちゃんが突っ込む。あかねちゃんの元気の良いツッコミにビッグボスも顔が綻ぶ。良かったーー、辞めないのか。確かに最近タテノともいい感じらしいし、辞めるわけがないかーー。
「タテノくんとも、別に良い感じじゃありません!」
「ごめんごめん、冗談だってば。話って何??」
ーーもう話しません!と言ってプイッとそっぽを向くあかねちゃん。ビッグボスはあかねちゃんの正面に向き直り、ごめんごめん冗談だからと繰り返す。その時間が少し続いた後、あかねちゃんが再び神妙な顔になって話し始めた。
「実は昨日ーー。」
あかねちゃんの話によると、昨日仕事を終えた後バックヤードを少し歩いていた時のことだと言う。バックヤードにあるコンビニでスイーツを買って、少し離れたところにあるベンチで食べようと移動をしていると、少し離れたところからニャ〜と猫の鳴き声がしたとのことだった。
「最初は猫ちゃんだ!可愛い〜!と思ってたんですけど、そういえばパークの中だし、猫っていて良いんだっけ?と思って。」
ーー良くない。もし、お客さんのいるエリアに猫が入ってしまったら大騒ぎになってしまうだろう。もし、それがゾンビナイトの混雑の中だったらと思うと。想像しただけで恐ろしい。
「で、その猫ちゃんはどうなったの?」
「声のする方に近づいていくと、影からシャッタと黒猫ちゃんが出て来て、2秒くらい目が合った後に向こうの方に走って逃げちゃったんですよ。」
「そうかー。もうパークにいない可能性もあるのかな?何にせよ、気をつけておかないといけないわね。」
「で、昨日その猫ちゃんがいた茂みにこれが置いてあっててーー。」
と言って、あかねちゃんがビニール袋を差し出した。その中を開いてみると、綺麗に舐め取られ空になった猫缶が入っていた。
〜〜〜
(まずい!やばい!どこにもない!)
オラフさんが茂みを懸命に探していた。巨漢の男がウロウロしながら茂みを見ている様は異様でものすごく目立ってしまっていた。
「オラフさん!何してるんですか?」
「あ?!え?!カ、カッピー!別に何もしてないよ。あはは。」
「?」
焦りまくるオラフさんを見て不思議そうな顔をするカッピー。焦るオラフさんのポケットには、缶詰のようなものが入っているのが丸わかりで膨れているのが見えた。
「オラフさん、今日のご飯缶詰なんですか?持ってくるなんて珍しいですね?」
「ん?え?缶詰?あーこれ?これなんだろ?間違って家の持って来ちゃったのかも。あはは。」
いつもの優しい雰囲気と違い、何だか様子のおかしいオラフさん。オラフさんは焦りながらも、カッピーが大きな箱を持っているのに気がついた。
「カ、カッピー。そういえば、その手に持ってる箱は何??」
「あっ、これですかー?見てくださいよ!そこのコンビニで100番くじがあったので、買ってみたら当たったんですよ!ジャンピースのルディのフィギュア!かっこいいですよねー!」
「えーー!すごい!何回引いたの?」
「ん?あー、これ?一回で当てました。」
ドヤ顔をして一回で当てたことを自慢するカッピー。オラフさんはうまいこと話を逸らせたと思い、ほっと一安心していたのだった。
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