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第35話 (27)テーマパークのコツについて

『本日のウルパーの混雑度は『大混雑』です。加えて、近隣開催イベントで最寄駅は大混乱の可能性有り。ご注意を。』


 SNSのとある投稿を見ているタテノくん。そうか、なるほど〜。今日は大混雑なのか。ありがたい情報だ。こういう助かる情報を発信してくれているアカウントがあるなんて、今まで全く知らなかった。フォロワー数も50万人もいるのか。すごいなぁ。みんなこの投稿で助かるんだろうなぁ。


 タテノくんがそう思いながら更衣室の方へ歩いていると、ちょうど同じく出勤してきたあかねちゃんと遭遇した。


「お疲れさまー!あかねちゃん聞いた?」


「おつかれー、聞いたって何を?」


「今日とんでもなく混雑するらしいから、気をつけてね。」


「えっ?そうなの?今のところ、駅とかエントランスはそこまで混んでないみたいだったけど。」


「えっ?あかねちゃん知らない?テーマパークのコツ。」


「テマ…?コツ?」


「この、テーマパークのコツってアカウントが毎日混雑情報発信してくれてるんだ。あかねちゃんも参考にしたほうが良いよ!」


「へー。でも、何でその人混雑するかどうかわかるんですか?」


「えっ?何でって…。そりゃあ何か裏付けがあるんじゃないかな?それに…ほら!50万人もフォロワーがいるんだから間違いないよ!」


「ふ〜ん。そんなもんなのかな〜。あっ、私こっちだからまた後で!」


 手を振りながら更衣室へ向かっていくあかねちゃん。私服姿も可愛いなぁ〜。今日は混雑するとのことでより一層気合が入る。よし、あかねちゃんの前でかっこ悪い姿見せないように頑張るぞ!


〜〜〜


「この、バカタテノ!!ネットの情報を鵜呑みにするんじゃないよ!」


 更衣室で着替えを終えて外で待っていたのは、制服姿のあかねちゃんではなく、ビッグボスだった。何でも女子更衣室であかねちゃんが「タテノくんが今日混雑するって言ってましたよ」的な話をしていたらしい。いくら怒られやすい僕でも、勤務時間の前に怒られるのは史上最短記録である。


「で、でもこの人フォロワー50万人もいるし…。」


「そんなの情報の真偽には関係ないわ!バカタレ!」


「えっ?!じゃあこれ何ですか?」


「適当よ、適当。それに今日はチケットの販売枚数も平均くらいだから、特別混雑は多分しないわよ。」


「て、適当〜?!でもこの近隣開催イベントって?」


「それも大したイベントじゃない!近くの公園でゲートボール大会があるだけよ。特に影響ないわ。」


「え〜?!何すか?!それ??じゃあこのアカウントなんなんですか?!」


 たじろぐタテノくんに、呆れた顔をするビッグボス。タテノくんのスマホに映し出された『テーマパークのコツ』のアカウントを見て、ビッグボスが吐き捨てる。


「そのアカウント、数あるウルパー系アカウントでも質の低い情報を発信することで有名なのよ。ウルパーに詳しい人なら誰でも知ってることわざがあるわ。『コツが混むと言ったら空く、空くと言ったら混む。』ってね。」


「それことわざってより、慣用句なんじゃ?」


 突っ込んでくるタテノくんに「細かいことはいいのよ!」といってもはたくビッグボス。そして、そのアカウントには迷惑してるのよ〜とまたもやいつも通りため息をつく。


「その人、勝手な考察を真実みたいに発信するから、その件で問い合わせが来たり、デマが拡散されたりで困らされてるのよ。最近はテーマパーク攻略みたいな情報をネットで売り捌いてるらしいし。要注意人物ね。」


「えっ?!じゃあこの情報も嘘ってことですか?!」


 タテノくんがスマホをいじり、テーマパークのコツの投稿を遡る。そして、「ありました、これです!」と言って画面をビッグボスに向ける。


『現在工事中のこのエリア、某モンスターゲームのアトラクションで確定か。映画のテーマパークでなく、ゲームのテーマパークまっしぐら、ですね。映画の世界を楽しみたいゲストのパーク離れは深刻化です。』


「完全に嘘ね。」


「そ、そんなぁぁあ。僕このゲーム好きだから楽しみにしてたのにぃいい。」


「そのゲームはアトラクションにはならないけど、別でコラボが今度ある予定だからそっちを楽しみにすることね。」


「えっ?!マジっすか!やったぁ!」


 先程まで嘘への怒りに震え、嘘情報に悲しんでいたタテノくんであったが、今はコラボの話を聞き喜び踊っている。なんて感情の機微が豊かな人間なんだろう。「ちなみにコラボがあるってことは絶対に誰にも言わないでね。」とタテノくんに釘を刺しておくビッグボス。確かにタテノくんのすぐに言いそう感は異常だ、とあかねちゃんも思っていた。


「じゃあ、あんまりこの混雑カレンダーも当てにしないほうがいいってことか。あかねちゃんとのデートを閑散日って書いてるところでしようと思ってたのに」


 その言葉を聞いてビッグボスは衝撃を隠せなかった。え?デート?タテノくんとあかねちゃんってもう?もう、そんなところまで行ってたの?おばさん知らなかったわ。え?どこまで?A?まさかB?Cまで?!きゃーー!!


「ビッグボス!変な勘違いしないでくださいね!デートじゃないですから!タテノくんが私のジェットコースター巡りを手伝ってくれるって話になっただけですから!」


 勘違いされるようなこと言わないで!と言い、小突かれるタテノくん。なんだ、まだ付き合ってるわけではないのかと安心するビッグボス。しかし、ビッグボスは危惧していた。この2人もしかしたら今後発展する可能性は充分にあると。そして、急速に別れる可能性もある。もし別れてしまったらどちらかはバイトを辞めてしまうかもしれない。それは困る。秋〜冬にかけてはとにかく人手不足だ。2人の破局は何としても後ろ倒しにしなくてはならない。


 その為にはやはり付き合わせないことが大事だ、と結論づけたビッグボス。そうとなると2人を近い場所に配置するのを少し避けたほうが良い気がする。長い間パークで働いてきたビッグボスの感が冴え渡る。


「よし、タテノくん。今日はこっちのエリアお願いしてもいい?」


「えっ、僕このエリア担当したことないですよ。大丈夫ですか?」


「タテノくん、最近仕事すごく出来るようになってきたよね。私も評価してるの。だから、今日はエリアを経験してもらって、どんどん成長してほしいな。このエリアの人達もタテノくんの働きを見たら、意識変わると思うんだよね。」


 ビッグボスのお褒めの言葉を受けて、嬉しくて感極まるタテノくん。ビッグボス、そんなに僕の仕事を評価してくれてたんですね。いつも厳しい言葉を言われるのも、僕の成長の為だったのか。あかねちゃんと離れるのは残念だけど、ビッグボスの期待に応えたい。タテノくんは「わかりました!」と元気よく挨拶して、担当のエリアへと向かった。


 その後ろ姿を見送りながら、「よし、とりあえずこれで今日は2人の関係は進展しないわね。」と胸を撫で下ろしたビッグボス。


 テーマパークのコツの投稿を見てみると、またもや適当なことを言っていた。


『ハロウィン本番の10/31はガラ空きに。ゾンビナイトのマンネリ化とチケット代値上げで、コスプレ若者達もチケットの安い水族館へ。』


ーー何で水族館にハロウィンのコスプレして行くんだよ!と画面に突っ込みつつ、10/31が本当にがら空きだったら良いのにとも思っていた。


 そろそろゾンビナイトのオールナイト開催が発表される。イベントのこともあるし、10/31はかつてないほどの混雑になるだろう。ちゃんと対策しないと本当に大変なことになるかもしれない。まぁでも、チケットの枚数制限もあるしそこまで混雑はしないか。


 頭の片隅に心配を抱えつつも、あかねちゃんと共に『大混雑』予報の仕事場への向かうのであった。

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