第33話 (25)心配するオラフさん。
やぁ、僕はオラフ。UPJで一際大きいゾンビダンサーがいたら、それは僕さ。聞いておくれよ、最近友達のカッピーについて心配していることがあるんだ。カッピーの人気が高まっている、同じエリアのゾンビとして特に最近それを強く感じる。
ゾンビナイトの開始当初はカッピーとすれ違うたびにアイコンタクトで「頑張ろう!」とお互いに目をパチクリとすることが多かった。でも、最近はすれ違ってもカメラを持った女の子達や子供達に囲まれていることが多く、カッピーとは目が合わないことが多い。合間の休憩時間にもカッピーはぐだっと座り込んでて、疲れている様子だ。
「カッピー、最近大変そうだね。」
「ありがとうございます、オラフさん。でもそんなに大変じゃないですよ。このくらいはやらないと。ビッグボスの話では、まだまだこれからお客さんが増えていくって話ですから。」
「そ、そう?なら良いんだけど。よかったらこれクッキー焼いてきたから、食べる?」
「え!良いんですか!わー、オラフさんのクッキー嬉しいです!パク。美味しー!」
「なになに?私にもクッキーちょうだいよ。」
そう言いながら、ハナさんがやってきてカッピーの分のクッキーも平らげてしまった。ま、まぁ別に良いんだけどね。カッピー、僕の心配しすぎなのかな。
「カッピーさん、そろそろ出番です!」
「あ、わかりました!オラフさん、口にクッキーついてないですよね?」
口をイーっとして僕に見せてくるカッピー。
「うん。大丈夫そう!行ってらっしゃい!」
「ありがとうございます!行ってきます!」
ゾンビの出る門の方へと急ぐカッピー。横にいるハナさんもクッキーを口一杯に含みながら、カッピーを見送っていた。
「はっひーも、ほんびないとになへてひはみたいだね。」
「え?あ、ああ。そうみたい!でもなんか最近疲れてるんじゃないかと思って、ハナさんから見てどう?なんかカッピーが人気になってきて大変なんじゃないかと思って。」
ハナさんはゴクリと音を立てて、クッキーを飲み込み、ポケットからスマホを取り出して、何やら調べ物をし始めた。ゾンビがポケットにスマホ入れてちゃダメでしょ、とも思ったがハナさんに言っても暖簾に腕押しだろうと思って何も言わなかった。
「まぁまぁ、スマホ持ったままゾンビになっちゃう人もいるでしょ?」
心を見透かされたようなハナさんの言葉に驚きつつ、ハナさんが「ほれ。」と言ってとあるSNSの投稿を見せてくれた。
その画面には、『このゾンビさん、『ゾンきみ』に出てたタケティーに似てて推せる。』と言う文章と共にカッピーのゾンビ姿とドラマに出てくるゾンビ姿のタケティーの画像が横並びに載せられていた。
「あ、あれ?タケティーってあの有名なアイドルグループの?」
普段カッピーと接していて似てると思ったことはなかったけど、この写真をみると確かにタケティーに似てる気がする。
「まぁ奇跡の一枚ってやつだね。普段はあのマヌケカッピーなんだからさ。」
「確かにこの王子様キャラのタケティーとは真逆だもんなぁ。それにしてもこの格好が似てるよね、タケティーってゾンビの役をやってたのかぁ。」
「何?!オラフ殿!ゾンきみこと、『ゾンビになっても君を愛すカラ』を知らないのか?!」
急にメガネをすちゃすちゃとする仕草を見せるハナさん。その様はオールドタイプのオタク女子の動きだった。
ーー『ゾンビになっても君を愛すカラ』、略して『ゾンきみ』。最終話でタケティー演じる主人公がゾンビになってなお、ヒロインを愛し、守った姿が多くの人の涙腺を刺激したらしい。ネットで調べるとオチまで綺麗に解説されていた。
「全然知らなかったぁ。面白そうだね。」
「それだけではないよ。オラフくん。私を見て何か気づくことはないかね?」
「気づくこと?なんだろう。」
挑発的な顔で、自分の服をくいっくいっと指で摘み上げるハナさん。スマホに表示されたヒロインの服装と見比べてみると、、
「あ!ハナさんの格好にそっくり!」
ハナさんの扮するゾンビと、ゾンきみのヒロインの格好が瓜二つだった。
「でも、どうして?特にコラボしてるわけじゃないのに。まさかパクリ?」
「そう。パクリの可能性もあるよねー。こんなに似てるなんて他人の空似とは思えないよ。」
目を閉じて大袈裟に考える“ふり”をするハナさん。“ふり”というのは一休さんがポクポクする時のようなコミカルな動きをしているからである。そして、チーンとなったハナさんが話し始める。
「私はね。コラボする予定だったのが、何らかの原因でポシャったんだと思うんだよね。ほら、今年のテーマソングもノベルナイトでしょ?ゾンきみの主題歌もノベルナイトだし。」
「えー、その名残で衣装がそのままに?」
「そうさ!そして、そのままの衣装になるのを避ける為なのか、所々装飾が違うんだよ。2Pカラーになってる程度の差だけどね。」
そんなことがあるのかぁ。上の方でどんなやり取りがあったかは僕らダンサーにはわからないもんなぁ。そう考えて、はっとするオラフさん。
「もしかして、僕のこの格好も登場人物から取られてたりする?そしたら僕も人気が出ちゃうかもしれないなぁ。」
「いや、オラフっちのゾンビは何にも関係ない。全く出てきてないね。」
「ガーン。そうなのか。」
「まぁ、オラフっちは一定の人気があるからいいじゃないの〜。」
バンバンっと背中を叩いてくるハナさん。まぁ僕は別に人気が出なくたっていいんだけど。カッピーが心配だなぁ。
「カッピーに人が殺到して、トラブルになったりしないといいけど。」
「確かにねぇ。まぁ何かあったら助けられるように、私たちで注意してカッピーを見守ろうじゃないか!」
「そうだね!」
この時はカッピーとハナさんがあんなことになるなんて思いもしないのであった。と、漫画のよくあるヒキのようなことを想像してフフフと笑うオラフさん。
ーーしかし、その無邪気な想像は現実となり、カッピーとハナさんに本当にとある大事件が起こってしまうのであった。
全くその事を知らないオラフさんは今日もストリートに繰り出し、お客さんを驚かして回る。そして、同じく驚かして回るカッピーと目が合い、「頑張ろう!」とアイコンタクトを送るのであった。
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