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第30話 (24)GIRL ON TV

『ウルパーの人気イベントと言えば、ハロウィーンに行われるゾンビナイト。大人気のイベントには、それを支える裏方さんの存在がいました』


 画面にパークの華やかな映像が流れる。そして、あのインタビューが行われた部屋が映し出され、ビッグボスのインタビューが始まったのだが。


『やはり沢山のお客様が来られるイベントですのでー』


「あれ?なにこれ?何で私の顔写ってないの?」


 画面には確かにビッグボスが映っているのだが、全身ではなく首から下だけが映し出されていた。そしてその下には更に驚くべき字幕が表示されていたのだった。


『ゾンビナイト運営スタッフ(※匿名希望)』


「え?なんで?匿名希望にしてないんだけど?てか、なんで顔映ってないの?なんか事件の関係者みたいになってない?」


 ビッグボスのインタビュー映像は、ドキュメンタリー番組の覆面インタビューのようになってしまっており、まるで詐欺グループの実態を話す専門家のように見える。


 カッピーは知っていた。あの日あかねちゃん達が「ビッグボスのメイクが派手すぎる」と話していたことを。カッピー自身もビッグボスの顔を見てバブル期の再来かと思ったほどだった。そして、テレビスタッフ達がその映像に頭を悩ませていたことも知っていた。しかし、ビッグボスも女の子だ。恥をかかせてはいけない。伝えることはできなかった。


「何かスタッフさんとの行き違いがあったのかもしれないですね。この人は匿名希望だって。裏方さんだからって気を遣われたのかもしれないし」


『その一心で私達もより良いパークの環境作りに取り組んでいます』


 どうやら、今の言葉でビッグボス(匿名希望)のインタビューは終了したようだった。


「え?!もう終わり?こんなちょっとしかないの?」


 唖然とするビッグボスの横で、ニコニコしたオラフさんがポテチを咥えたままテレビを指差す。


「あ!ココロくんだー!」


 続いて映ったのはココロさんだった。


『この方誰だと思いますか?なんとー。ゾンビの中の人なんです!』


 ココロさんのインタビュー映像からアハ体験のようにココロさんのゾンビ姿の映像へと切り替わる演出がされていた。ココロさんの出演シーンはここのみ。短い!カッピーの予感は当たった。ココロさん、やっぱりインタビューは全てカットのようです。でも、ドリームビリーバーのTシャツちょっと映って良かったですね。


〜〜〜


ーー同時刻。ココロさん宅にて。


「えー?!俺のシーンここだけ?!あんなに撮ったのに?!どうなってんのー?」


〜〜〜


ーー再び、カッピー宅。


 そして遂にカッピーのインタビューが始まる。


『続いてはゾンビダンサー初挑戦のフレッシュな彼にインタビュー!』


 画面いっぱいに映るカッピーの顔。


「遂にカッピーきたー!めっちゃちゃんと映ってるじゃん!」


『初めてなんですけど、先輩達や同僚に助けられながらー』


「しかも、インタビューもめちゃくちゃ使われてるじゃない?!悔しいー!なんで!」


「いや、でも僕、あんまり大したこと言ってないはず…」


ーーしかし、テレビの編集マジックはすごかった。


『はい!初めは緊張しちゃいましたけど、今はすごく楽しいです!先輩方も優しくて、毎日充実してます!』


『そう話す彼。しかし、彼がダンサーを志すまでには姉との姉弟の絆が隠されていたのであった…』


 神妙な声のナレーションが挟まり、なんとカッピーがダンサーに応募するまでの物語が脚色たっぷりの物語となって再現VTRとなって放送されていた。


「えぇ?!何ですか?!これ?僕ちょっとお姉ちゃんに応援されて、パークのダンサーに応募したって話しただけなのに」


『ダンサーを挫折した過去。しかし、姉はそんな彼を励まし続けた…!』


「あはは!カ、カッピー、なんか苦労の末にやっと夢を叶えた少年みたいになってるね!」


「そんな!僕ただのテーマパークのバイトなのに!」


「このVTR見た人はもうカッピーの事をものすごい苦労人だと思うだろうね」


「テレビ怖っ!!!」


 テレビには挫折した様子のカッピー役の男性が必死の特訓の末、ダンスを習得し、オーディションを受ける姿。そして合格して、夢の仕事を行っている旨が感動的なBGMと共に流されていた。そして、空からカッピーを見守る姉の映像が挟まる。


「これお姉ちゃん死んだみたいになってません?めっちゃ生きてますよ!なんですか、これ!」


 続いて、テレビにはリポーターのチョウチョさんがカッピーをヨシヨシと撫でる画面が映し出されていた。カメラの角度でカッピーの顔は隠れており、泣いているカッピーを慰めているように見える。


「い、印象操作だ!嘘っぱちですよ!」


「てか、カッピーこの時チョウチョの胸見てない?やらしー」


「見てませんよ!確かにセクシーな格好してるなとは思ったけど、まじまじとは見ませんって!」


「カッピーは意外にすけべだからなぁ。この前もー」


「オラフさん!ビッグボスの前で変なこと言わないで下さい!何もないですから!」


 3人がわいわいと騒いでるうちに場面が切り替わっていた。テレビには、カッピーがいつも休憩しているベンチを紹介する様子が映し出されていた。


「まだカッピーのターンなんだ。すごいなぁ!もうカッピーの特集みたいになってるね!」


 カッピーもここまで自分がクローズアップされるとは思わず、恥ずかしさでいっぱいだった。それもこれもビッグボスとココロさんのせいだ。くそう。


 ビッグボスは憎しみの目で、オラフさんは愉快な目で、画面をみつめていた。そして、一瞬だけ、映らないはずの人物が映ったのだった。


「……あれ?」


カッピーの肩越しに、パークの奥のゾーンが映る。そして、その隅にーー


ーーハナさんがいた。完全にテレビの画面に映ってしまっていた。カッピーが喋っているシーンの背景、休憩室の扉が開き、チラッと映るハナさんの姿。


 帽子を深くかぶり、気づかれないようにしているが、知っている人が見ればすぐにわかる。


「ハナさん、あんなにテレビ出るの嫌がってたのに、思いっきり映り込んじゃってるー!」


「用事あるって言ってたのにこの時間まで残ってたんですね!」


 カッピーとオラフが大笑いする。 ビッグボスもふふっと笑いながら、「まあ、別に変なことしてるわけじゃないし、大丈夫でしょ」と軽く流した。


〜〜〜


ーーパークの外、あるカフェ。


 Sポテトさんが、スマホの画面をじっと見つめていた。ウルパーオタクとして、ウルパーが特集されるテレビ番組は全てチェックしなければならない。推しのダンサーが出るかもしれないのでね。最近はアプリでもテレビ番組がすぐ見られるので出先でも助かる。しかし、その番組を見てSポテトさんは驚くのだった。


「え?これ……」


 カッピーのインタビューの後ろに映るハナさん。 その向かいに立つ、セクシー系リポーターのチョウチョ。チョウチョは人気アイドルグループのRainのメンバーだ。そしてハナは…。


ーーこれって、あのオーディションの2人だ…


 ゴクリと唾を飲み込むSポテトさん。これはすごいことになった。ハナさんの過去を知る者は少なくない。これがどれほどの火種となりうるか、わかる人にはわかってしまう。


 きっとこの炎はジワジワと、確実に燃え広がることとなってしまうだろう。そんなSポテトさんの予感は、少し後に的中することになってしまうのであった。

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