第29話 (23)Cigarettes & Valentines
「はい。勿論大変なこともありますけど、それよりもパークに来ていただくお客様に最高の思い出を作っていただく事、その一心で私達もより良いパークの環境作りに取り組んでいます」
「はい!OK!ありがとうございますー!」
「じゃあ続いて、ゾンビの人のインタビューに行こうか。おい、AD用意」
「はい」
淡々と進むテレビの撮影。ビッグボスのインタビュー部分がつつがなく終了したかに見えたが、テレビクルー達はその様子を見て違和感を覚えていた。
「ねぇ、あの人化粧なんか変じゃない?」ヒソヒソ
「わたしも思ったー。めちゃくちゃ化粧濃いよね」ヒソヒソ
「リポーターのチョウチョさんも時々笑っちゃってたよね」ヒソヒソ
ーーそしてディレクターも頭を悩ませていた。
(あのスタッフの人、すごくいいこと言ってたんだけど、映像だと化粧が濃くてインタビューの内容に集中できないんだよなぁ。チョウチョのやつも笑っちゃってたし。編集大変だぞ、これ。はぁ〜。タバコ吸いてぇ。)
「はぁ〜」
編集に頭を悩ませるディレクターを尻目に、テキパキと撮影の準備をするテレビスタッフ達。僕はただただそれに圧倒されていた。
ふと、横にいるココロさんを見てみると、何やら色々と用意をしているようでたくさんの荷物を持っていた。何を持っているんだろう。
「じゃあまずはココロさんからいいですか?こちらに来ていただいて」
「あっ、はい。よろしくお願いします!」
「はい。よろしくー」
リポーターの女性がココロさんへ挨拶を返す。カメラが回っている時はあんなに感情豊かだったのに、止まった瞬間こんなに変わるのか。これはこれでプロを感じる。
テレビに出てる人って結構こういうものなのかもな、とカッピーが考えているとスタッフさん達の準備が終わったようで「じゃあ早速始めましょうか」と声をかけてきた。
「3 2 …」
そう言った後、スタッフさんが手のひらを差し出して撮影がスタートした。リポーターがにこやかに話し始める。
「はい。では続いてはゾンビの中の人にお話を伺いたいと思いますー」
「うっす!夢は見るものじゃなく、叶えるもの!ドリームビリーバーのココロです!オナシャス!」
「はい?」
突然謎の言語を発したココロさんに戸惑い、リポーターの女性が硬直する。そして、それはディレクターもそうだった。リポーターのチョウチョにカンペが出る。
『気にせず続けて!』
ーーそれを見て、心を落ち着かせてチョウチョが続ける。
「えーっと。ゾンビナイトのダンサーさんと言うことで、いつ頃からやられているんですか?」
「ドリームビリーバーの結成が3年前なんで、ウルパーでダンサー始めたのは4年前ですね!ちょうどこれ、ほら!今ドリームビリーバーの結成3周年の記念グッズ持ってきてて、俺ら普段ライブハウスとかでー」
ココロさんの暴走は止まらない。走り出した彼を誰も止めることは出来ないのだった。その後もココロさんは、チョウチョさんが話すこと全てにドリームビリーバーの話を絡めて話すと言う荒技を見せ、テレビスタッフ達は頭を抱えていた。特にディレクターとチョウチョさんは地獄を見ているような気分であった。
(これ、番組成立しないんじゃ…)
ディレクターがそう思いながら、カンペをチョウチョさんに出し、早くココロさんのインタビューを終わらせようとしていた。
『適当に切り上げて次の人に!』
「…!はい、と言うわけでダンサーさんの苦労がわかりますねー!大変だー!ありがとうございましたー!」
「え?終わり?まだ話し足りないんだけど?」
「それは、またの機会に。と言うことで。ほ、ほら、ドリームビリーバーさんがビッグになった際は特集を組ませていただいて、ねぇ?ディレクター?」
「え?!う、うん。そうですね。ありがたい話ありがとうございました!」
「まじっすか?ディレクターさん、今日の映像俺たちの下積み時代の貴重映像になりますよー。ラッキーすね!出世作だー!」
「は、はは!」
思いっきり困った様子のディレクター。その後もココロさんの猛プッシュを受け、連絡先の交換までしてしまっていた。かわいそうに。
インタビューを終えたココロさんが、少し離れた場所で待機していたカッピーの元へとやってきた。ココロさんはカッピーを抱擁して激励をするのだった。
「何も気にすんな。カッピーの魂?それをあいつらに見せつけてやれ。場はあっためておいた。かましてこい!」
ーーと言って、背中をバン!と叩かれた。かますも何もインタビューに答えるだけでは?とも思ったが、あまりの勢いに「はい…」と返事をすることしかできなかった。
カッピーがスタッフに案内され、インタビュー用のスペースに向かうとそこは異様な空気感が漂っていた。ディレクターは頭を抱えて、「撮れ高が…これじゃ成立しない…」とブツブツと呟き、チョウチョさんは「何で私がこんなことしなくちゃいけないのよ!何であんな奴の話に付き合わなきゃ!私を誰だと思ってるの?Rainのメンバーなのよ!全く」とマネージャーに向かって怒っていた。心なしかスタッフも元気がなく、みんなどっと疲れてやる気を失っているように見えた。
「あ、カッピーさんですね。こちらへどうぞ」
「はい、よろしくお願いします!」
「じゃあ、始めようか」
元気のないディレクターの声。カッピーも訳がわかっていなかったが、きっとココロさんが“かましてしまった”のだろうと確信していた。まぁ、自分は聞かれたことに答えるだけだ。何も緊張することはない。大丈夫。よし。
「3 2 …」
「はい!続いては、今年初めてダンサーになられたと言うカッピーさんに話を聴きたいと思いますー!」
〜〜〜
「いやー、もうすぐ放送だねー。楽しみだなー」
悪夢のようなインタビューから数日後。約束通りカッピー宅にビッグボスとオラフさんが集まり、番組の鑑賞会が開かれることとなった。と言っても、楽しみにしているのはビッグボスとオラフさんだけで、カッピーは不安でいっぱいだった。
(ココロさんのインタビューがよっぽど使えなかったのか、すごい僕のインタビューの時間長かったんだよなぁ。色々予定にないこともあったし、大丈夫なのかなぁ。ディレクターの人も撮影終わって、すぐタバコ吸いに行ってたし。)
「楽しみねぇ〜。UPJの美人スタッフって話題になったらどうしようかなー」
「ビッグボス、ただでさえ忙しいのに更に忙しくなっちゃいますねー!」
「いやー、やばいなー!あっはっはー!」
完全にお酒が入って盛り上がるオラフさんとビッグボス。オラフさんはポテチの袋をそのまま口に当てて、ごくごくと飲んでいた。そしてあっという間に空になってしまった。え?オラフさんそのポテチビッグサイズですよ?もう全部食べちゃったんですか?てか、飲んだんですか?
デデーン。
『特集!ハロウィーンの裏側!ゾンビナイトの舞台裏に密着!』
「あ、始まった!」
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
ここまで読んで頂いて本当に嬉しいです。
このキャラのエピソードもっと読みたいなどあれば、コメントで教えて頂きたいです!
ぜひよろしくお願いします!




