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第200話 (186)Movie

——すごい!撮った!撮ったぞ!


 バックヤードを出た俺は、逃げながらカメラの映像を確認していた。まさかこんなことになるなんて!


〜〜〜


 俺はメインステージのショーを見ていた。歴代のゾンビが出てくる演出を見ながら、これを投稿してもオタク受けするだけでバズりはしないだろうなと思っていた。


——思った程バズりそうなのないな


 オールナイトでの一夜限りのショーと聞いていたので期待していたが、チャンネルに投稿してどうにかなりそうな素材はないように見えた。しかし、軍服ゾンビが出てきてルッタッタダンスを踊った瞬間少し閃くものがあった。


——あんなダンサーいたか?


 どんな仮装をしていようと、パークのオタクならばある程度中のダンサーが誰なのかわかるものだ。特にゾンビナイトも終盤に差し掛かっている今は。しかし、軍服ゾンビの動きやダンスを見ても誰なのか全く心当たりがなかった。


——新人?もしくは、昔のダンサーがカムバックしたのか?


 ルッタッタダンスという昔のダンスを踊っているあたり、昔の伝説のダンサーが復活した可能性がある。前にカムバックしたダンサーの動画を投稿したところ、新旧のオタクの間で話題になって再生回数が伸びたのを思い出した。


——もしかしたら俺の知らない昔の人かもな


 昔のダンサーなら、写真を撮ってシャクレさんに見せれば誰かわかるかもしれない。ここからの映像では、あまり顔がはっきり見えない。バックヤードに忍び込んで、なんとか近くで顔の写真が撮れないものだろうか。


——善は急げってね


 軍服ゾンビのダンスが終わるやいなや、俺はバックヤードに侵入するためにショーの観覧スペースから離れて、ステージ裏の方へと向かって行った。


タッタッタッ


 そんな俺を追い越すようにゾンビが一人走って行った。あれは巨大で有名な名物ダンサーのオラフとかいうやつだ。オラフゾンビはゾンビの動きをするでもなく、一目散にステージの裏へと向かって行き、バックヤードへと入って行った。


——何だ?


 ダンサーがゾンビの演技も忘れて行くなんて初めて見た。よっぽどの何かが起こったのか?くそ、今のも撮影しておけばよかった!今のを撮影して、『ゾンビにトラブル?素に戻っているゾンビがいた件www』とかのタイトルで投稿すれば多少バズっただろう。


——まぁいい。今は軍服ゾンビだ。


 俺は周囲の目を気にしつつ、バックヤードへと侵入することに成功した。するとそのすぐ近くで、オラフゾンビと軍服ゾンビが何やら話しているようだった。


——ここからじゃ誰かわからないな


 多少近いとは言え、何を話しているかやダンサーの顔までははっきり見えない。俺は先ほどの失敗のこともあって、一応カメラで動画を撮っていた。軍服ゾンビにズームで寄ってみるが、顔は上手く映らない。


——もう少し近づけば…


 そう思った瞬間、軍服ゾンビが宙へと浮き始めた。


——え?!


 俺は呆気にとられながらも、それを記録することを忘れなかった。軍服ゾンビは宙に浮いて、服を脱ぎ、そして見えなくなった。


——と、とんでもないものが撮れてしまった


 俺はカメラを止めて、先ほどの映像が撮れているか確認しようとする。しかし、慌てすぎて腕が近くにある箱に触れてしまう。


ガタン!


〜〜〜


——よし!撮れてる!撮れてるぞ!


 何だったんだ?さっきの宙に浮いた軍服ゾンビは。タネも仕掛けもわからない。宇宙人か?超能力者か?はたまた透明人間?いや、何でもいい。それは動画の視聴者が決めることだ。これはバズる。サムネイルで煽りに煽る。動画だけじゃなくショート動画にもする。これはバズる。オカルト界が黙っちゃいない。オカルト系インフルエンサーへの道も開くかもしれない。怪談界に殴り込みだ!毎年夏に怖い話をして全国行脚だ!!稼げる!稼げるぞ!!テレビにも出られるかもしれない!くぅー!


——金持ちになれる!


 やっぱりそうだ。俺は“くりえいてぃぶ”な人間なんだ。これはその切符。やっと手にしたこの切符。離しはしない。早くどこかに隠れてこれを投稿したい。このカメラのメモリーを奴らに奪われてしまう前に。

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