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第199話 (185)追いかけっこ

「はぁ…はぁ…こいつ何なんだよ!いつまで追って来るんだよー!」


「らぶぅ!らぶぅ!らぁ!ぶぅ!」


「らぶぅ!じゃねー!ボクはゾンビじゃないんだよー!」


 ゾンビが全員メインステージへ移動したにも関わらず、1人ストリートに残ったゾンビがいた。そう、カントクちゃん扮するゾンビである。カントクちゃんはラブさんのあまりの猛追に屈してゾンビモードを解除し、もはや普通に走って喋ってしまっていた。


「ひぃー!助けてー!」


「待ってよー!逃げないでー!怖くないよー!らーぶー!」


「それが怖いんだよー!」


 しかし、道ゆくお客さんたちはまさかそれが本当に助けを求めているとは思わず笑ってその様子を眺めていた。


「見てー!あれ!ゾンビが人に追いかけられてる!」


「面白い演出だなー!遂にゾンビナイトもここまで来たかぁ!」


——違うんだよー!二人とも客だよー!


 カントクちゃんはラブさんのラブ攻撃から逃げるため、パークを走り回るのだった。


〜〜〜


 パークの一角、ここにも走っている二人がいた。ハッタリとあかねちゃんだ。先陣を切って走っているハッタリに何とかついていくあかねちゃん。


「はぁ…待ってくださいよ!急に走って!」


「時間がないんや!」


 私はトップスピードで走り続けるハッタリさんに、何とかついていっていた。それにしても、この探偵はさっきから息も切らさずに走り続けている。探偵っていうのは体力まであるものなんですか?


——カッピーさんを探さなきゃいけないのにっ!


 少し前に聞き込みをして回っていた私たちの元に、ダイさんが走ってやって来て、こう叫んだ。


『お化けだ!お化けが出たぁ!』


 どうやら廃アトラクションにお化けが出たとのことだった。それはそれで気になるけれど、今はカッピーさんの捜索で忙しい。私は、お化けはまた今度調べますねと伝えるた。しかし、探偵さんはその話を聞いた瞬間、ありがとうとダイさんに伝えるやいなや、走り出していってしまった。


「はぁ…お化け事件がそんなに大事ですか?」


 私は息を切らせながら、ハッタリさんに話しかける。するとハッタリさんはバッと私の方を振り返りこう伝えるのだった。


「お化けぇ?アホか、お前は!お化けちゃう!」


——アホぉ?!


 何で私はこの人にアホ呼ばわりされなきゃいけないんだろう。苛立ちで頬がぷくーっと膨れる。


「あんなぁ〜!一から十まで説明せんとあかんか?」


「説明してくださいよ!何も言わないで伝わるわけないじゃないですか!」


「相棒のくせに察しの悪いやっちゃの〜。あっ、もう相棒って呼んだらあかんのか。ん〜助手ならOKか?」


「そんなのどうでもいいんですよ!いいから早く…」


「無駄話しとる間に着いたわ、アホぉ」


「ここは…さっき話してた廃アトラクション…」


 そう。私たちはダイさんがお化けを見たと話していた廃アトラクションの前に辿り着いていた。ここに人は誰もいない。オールナイトの間は閉鎖されているエリアだからだ。廃アトラクションの入り口の前には柵やポールが仮置きされている。タテノくんがビッグボスに移動するのとか何か話していた気がするな…。


「おい!ボケーっとしてる場合ちゃうで!手伝え!」


「え?」


 ハッタリさんはそう言いながら、入り口に大量に設置してある柵やポールをひとつずつ入り口から遠ざけるように移動させていた。


「何やってるんですか?柵とポールなんて使わないのに…」


「やーかーらー!ここにおんねん!」


「怨念?お化けのですか?」


「アホか!怨念ちゃうわ!おる、ゆーことや!」


「おる?何がです?」


「そんなもんカッピーに決まっとるやろ!何のためにオレらが動き回っとったと思ってるんや!」


「え?!」


〜〜〜


ガタン!


「あれ?リュウ何してるんだ?」


 ユウくんを見送った僕。そのことをビッグボスに説明する時間もなく、また新たなトラブルが起きようとしていた。関係者用の入り口付近にいる侵入者はリュウだったのだ。


「え?!シャクレさん…どうしてここに…」


「ま、まぁ…色々あってな…」


 シャクレさんとリュウが何やら話している。そんなことより僕は彼がカメラのレンズをこっちに向けていたことが気になっていた。


「リュ、リュウさん?もしかして何か見ましたか?」


「え?!な、ななななな何も?!」


 挙動不審なリュウを見て、怪しく思ったのかビッグボスも質問をする。


「というか、ここ関係者以外立ち入り禁止なんだけど…」


「えっ?!あ、ああああれー間違えちゃったぁ…あははは…」


——怪しい


 僕の中に嫌な予感がよぎる。こいつは前にハナさんに迷惑行為を働いた。パークの動画を投稿するインフルエンサーのような活動もしているらしい。そして、何やら僕らの方にカメラを向けて何かを撮影していたようだ。


——まさかユウくんの動画を…?


 可能性はある。もしかして、ユウくんが空へと昇っていくところを動画に収めているんじゃないか?そして、それを怪奇現象とか言って投稿する気じゃないだろうな?そんなことさせない。あの僕とユウくんの特別な時間を、変なやつのバズり動画にさせたくない。


「ちょっとリュウさん?カメラのメモリー見せてもらっていいかな?」


「えっ?どどどどうして?!俺もうショーに戻らないと…!」


「ビッグボス!この人バックヤードの撮影してた可能性があります!」


 僕はビッグボスに、リュウが問題行動を起こしている可能性を伝える。そう、そもそもバックヤードを撮影することは禁止事項なのだ。つまり、この状況でスタッフがカメラのメモリーを確認するのは自然なことだ。ビッグボスが僕に目配せをして、リュウの方へと近づいていく。


「そうなの?リュウくん、ちょっとこっちに来てもらえるかな?」


 横にいたシャクレさんもリュウを諭すように話しかける。


「なんかわかんねぇけど、リュウ?メモリーくらい見せてもいいんじゃねぇか?」


「…」


 沈黙するリュウ。そこへニセ姉が近づいて、カメラを受け取ろうとする。


「ちょっとこれ見させてもらうわね〜。あら!リトルナイトベアーの可愛いキーホルダーじゃな〜い!カメラもいいカメラね…」


 ニセ姉がカメラに手をかけようとした瞬間、リュウを身を翻し、ニセ姉を突き飛ばした。


「い、いやぁ〜ん!暴力的〜!!何よ〜!!」


「…たさないっ!!」


「え?」


「このカメラは渡さない!!俺は万バズでミリオンで日本一のインフルエンサーになるんだよぉおおおおおお!!!」


タッタッタッ


 リュウはそう叫ぶと、バックヤードから走って出て行ってしまった。彼に突き飛ばされて呆気にとられているニセ姉が呟く。


「彼…オトコって感じ。パワフルねぇ…」


「言ってる場合じゃないですよ!追いかけないと!」


 ビッグボスが流石のツッコミをニセ姉に入れながら、出て行ったリュウを追いかける。僕もそれに続こうとするが、シャクレさんに止められる。


「オラフくん、自分の格好見てみろ。ゾンビのまま外走っていくわけにいかないだろ?追うなら、なんか羽織ったりしな!」


「え?!で、でも…」


「一旦ここは俺に任せな!」


タッタッタッ


 そう言ってシャクレさんはビッグボスの後を追いかけて走って行った。僕とニセ姉がその場にポツンと残される。


「強引なオトコって、嫌いじゃないわ」


「ニセ姉!いいから!なんかフードないですか?仮装を隠す用の!」


「あら、あなたも強引ね。ここバックヤードだから、あっちの方にあると思うけど…」


「どこですか!案内してください!」


「ご〜うい〜ん!こっちよ〜!」


 僕はニセ姉に着いていく。ユウくんの映像をリュウに好きにさせるわけにはいかない。早くあいつを止めないと!!

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