第195話 (181)WHO?
「ありがとうー!僕達は一旦引っ込みますが、ショーはまだまだ続きます!」
そう言うとノベルナイト達はステージ裏へと帰っていった。
「いやぁ、ノベルナイトかっこよかったなぁ」
「キョドリー出てくるなんて激アツ」
「写真撮影もOKで助かったよー!キョドリーを見られる機会なんて本当に…」
ドォォン
僕と文子ちゃんが話しているとステージが突然音と共に暗転した。そして、背面にあるモニターに映像が映し出された。
——これはこれまでのゾンビナイトの映像?
その映像は過去のゾンビナイトの映像をマッシュアップしたものになっており、今はもういない懐かしのゾンビの姿も映っていた。
「この演出熱すぎィ!オタク達、息してるか?」
「ゔぅお!!ぁあ!」
そして、ステージの花道には何と昔のゾンビ達が1人ずつ登場してきていた。
——こ、これは熱い演出だ!!
「Sポテさん、これ神演出では?」
「これはやばいね!!」
「きゃーー!!」
「懐かしい!!」
「このゾンビに追いかけ回されたんだよなあ」
僕達だけじゃなく、ステージに集まったオタク達の盛り上がる声があちこちから聞こえる。そして、このレアな瞬間を写真に収めるために、オタク達の撮影にも一層熱が入り、シャッター音が響いている。
——本当に来てよかった…
昔のゾンビを見る機会なんて本当にない。去年いたゾンビがいないなんて、ゾンビナイトでは当たり前のことだ。だからこそ、こんなステージを作ってくれて本当に嬉しい。
そして、ステージには軍服ゾンビが出てきていた。懐かしい。この年まではゾンビが踊るのはメインでなく、オマケみたいな感じだった。軍服ゾンビの年にルッタッタダンスというのが流行って、そこから毎年ゾンビが踊るようになったんだよなぁ。あまりダンスが得意じゃなかったけど、一緒に踊る為に振り付けを頑張って覚えた記憶が蘇る。
ちゃんちゃらら〜
そして、BGMが切り替わる。そのBGMは聞き覚えのある。昔、これでもかと言うほど聞いた曲だった。
「え?まじ?ルッタッタ復活?!」
「Sポテさん、大盛り上がりでアツい」
〜〜〜
「もういい!アタシが出るわ!」
「何だよ!連れてきておいて!」
「だってアナタ全然ダメじゃない!」
「大体こんな感じだろ!」
「全然ダメよ!」
パーク内の一室で、シャクレとニセ姉は揉めていた。シャクレはダンスを踊れると言っていたが、ニセ姉からすればとてもステージに立てるレベルのダンスには見えなかった。
「こんなんじゃステージに出せないわ。アタシが出ます」
ニセ姉は自分で急ごしらえのゾンビメイクを施し、ステージに向かおうとする。
ちゃんちゃらら〜
その瞬間、外のBGMが切り替わったのが聞こえた。それを聞いてニセ姉は焦り始める。
「やばいじゃない!もうルッタッタダンス始まっちゃってるわ!」
「おい!誰か踊ってるぞ?」
——え?
シャクレが指差したステージを見ると、軍服ゾンビがルッタッタダンスを踊っている。遠目に見ても、その振り付けは完璧に見えた。
「何だよ!ココロのやつか?元気になったんじゃねぇか!早く言えよ!」
「え?!ココロくん?いや、違う。一体あれは誰?!」
ガチャ
「あ、タテノくん?軍服ゾンビいたのね?ありがとう、確認してくれて。私も今ステージ見えてるわ!うん、はーい」
そこへビッグボスが電話をしながら入ってくる。
「ニセ姉〜!ステージのシャクレいい感じじゃないですか!よかったですね!」
続けてそう話すビッグボス。どうやらビッグボスはステージで踊っているのがシャクレだと思っているらしい。
「え?俺?」
「は?シャクレ何でここにいるの?」
ビッグボスはシャクレを見て目を丸くする。それはそうだ。ステージで踊っていると思っていた人間が目の前にいるのだ。
ルッタッタ〜
「「あれは誰?!」」