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第186話 (172)働く男

「すごいねー今年のダンス覚えたんだ!」


「そうなの〜、うちの子は『独学』なんですよ〜」


「デイちゃんにも教えてあげようか?」


「えー教えて教えて〜!」


 ラブさんと別れた私はメインステージへと向かっている途中で、影の船団親子と出会った。どうやら彼女らもメインステージに向かっているようだった。娘さんは今年のゾンビナイトに来るのは今日で2回目なのだという。


「去年は沢山来てたのに…」


「うーん、なんかあきちゃって!デイちゃんはあきないの?」


「私は毎日来てるけど、飽きたことはないかなぁ〜。毎日違うからね、パークは」


〜〜〜


「ふ〜ん」


 わたしはデイちゃんと一緒にメインステージの方にむかっていた。デイちゃんは毎日パークに遊びにきているらしい。それでもあきないなんてすごいなぁ。そもそもどうして毎日これるのだろう。おしごとはなにをしているんだろう。


『あまり詮索するものじゃないわよ』


 前にお母さんがそんなことを言っていた。大人って難しいのかもしれない。気になったからと言って、すぐに聞いてはいけないことがあるみたい。


——でも、デイちゃんがいてくれて良かった


 今日家を出る時にお母さんがこっそりカメラを用意しているのを見てしまった。今日はカメラで撮らないって約束したのに。さっきそのことをお母さんに言ったら、気まずい雰囲気になってしまった。思い出用で、わたしのダンスを撮るわけじゃないって言ってたけど、信用できない。


——お母さんがカメラを構えたら踊らないぞ


 わたしは心に決めていた。カメラで撮られるのは恥ずかしいから、撮るなら踊らない。お母さんともそう約束したんだ。


〜〜〜


「どうぞ〜、もうすぐショー始まりますよ〜」


 僕はビッグボスの代わりにメインステージのお客様の誘導のヘルプに入っていた。ステージ周りはかなりの混雑になってきている。もう間も無くショーが始まる。始まるというのに…


——ハッタリ野郎何やってるんだ


 ココロさんの代役は何とかなったとビッグボスが言っていた。しかし、カッピーさんについての情報はなにも僕まで流れてきていない。


——僕も捜索に加わるべきか?


 ここで手柄を立てれば…そう思っていたが、スタッフの数が足りない。ただでさえ、オールナイトは人手が足りないのに、カッピーさん捜索であかねちゃんが抜け、ココロさんの件でビッグボスも今抜けてしまっている。ここで僕まで抜けてしまったら、ステージ周りのスタッフ数が足りなくなり、運営が回らなくなるかもしれない。


——僕はどうすることもできないか…


「あの…すいません」


「はい!どうされましたか?」


 焦っている僕に女性と親子、合わせて3人組が話しかけてきた。そのうちの1人の顔は見覚えがあった。


——この人デイちゃんだ!


 パークに毎日来ているという噂のデイちゃん。まさかオールナイトにも来ているなんて…。本当に毎日来ているんだ…。僕が休みの日も来ているということなのか…?


「メインステージのショー見に来たんですけど…もう場所埋まってしまってますかね?」


「あーそうですね…」


 最後列付近で見ることはできそうだが、子ども連れだとそれは厳しそうだ。パークのルールで肩車も禁止されているし。


——あ!


 そこまで考えたところでハッとした。もしかしたらあそこならまだ余裕があるかもしれない。


「僕にいい場所の心当たりがあります!ちょっと着いてきてください」


 メインステージの周りは公園をイメージされており、ぐるりと360度を道路のようなもので囲まれている。メインステージへの導線として、上手からいらっしゃるお客様が多いため、上手側は混雑し、下手側は空く傾向がある。そこにいつも空いている箇所があるので、もしかしたら…。


「あ、ここ空いてますよ!」


「ありがとうございます!見えそう?」


「うん!見える!おじさん、ありがとうー!」


「おじさんじゃなくて、お兄さんだよー!どういたしまして!楽しんでねー!」


——おじさん?!


 僕って子どもから見たらそんなに老けて見えるのかな?!まぁでも喜んでもらえて良かった。それにここは前が道路になっているから、他のエリアから集まってきたゾンビが目の前で踊ってくれる場所だ。きっと子どもさんも喜ぶだろう。


——ハッタリ野郎!僕は仕事をしているぞ!


——ビッグボス!僕は立派にやってますよ!


——あかねちゃん!仕事のできる男はどうですか?


「どうぞ〜、もうすぐショー始まりますよ〜」


『ウォォーン、ウォォーン』


 僕は再びお客様の誘導を始めた。すると、ショー開始の合図のサイレンがパークに鳴り響いた。いよいよショーが始まるな。オールナイトのメインイベントだ。どうにか成功してお客様が楽しめますように。ただのバイトながら、そう願うのだった。

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