第177話 (163)千客万来-3
ふーん
カシャカシャ
ふーん
カシャカシャ
『ウルパー、やりますね。ここで、新ゾンビ、出して、きました。大企業の、意地、ですね』
ポン
『流石コツさん、迅速な情報共有。有り難いです』
〜〜〜
私達はメインステージの前で地蔵という行為をしていた。地蔵とはいわゆるお地蔵さんの事ではなく、ショー等を鑑賞するために長時間同じ場所で待ち続けることである。UPJのショーガチ勢はステージの前で何時間でも平気で地蔵を行うのだ。今日もそれに漏れず、地蔵をしていた。なんていったって、オールナイトのショーは今日しかないのだ。これはオタクとして逃せない。
「ちょっと!もじゃちゃんこれ見てよ!」
突然Sポテさんが騒ぎ出す。
「Sポテさん、急にどうしたんですか?」
「こ、こここここれ!見て!」
そう言ってSポテさんが差し出した画面を見てみると、そこにはテーマパークのコツというアカウントの投稿が映し出されていた。
『ウルパー、やりますね。ここで、新ゾンビ、出して、きました。大企業の、意地、ですね』
その呟きと共に2枚の写真が添付されていた。そこにはそれぞれゾンビが写っていた。
——えっこれってもしかして…
「そうだよ!もじゃちゃん!もじゃもじゃゾンビだよ!」
「もじゃもじゃゾンビ復活なんて激アツ」
黙っていた文子も会話に加わってくる。そして、そこに写っていたのは後ろ姿ではっきりしないが、間違いなくもじゃもじゃゾンビだった。情報の出所がテーマパークのコツという誤情報アカウントなのが気になるけど、写真に写っているので疑いようがない。
「えっこれどういう事?復活したって事ですか?」
「わ、わからないけど多分ストリートにいるって事じゃないかな?ほら!他にもいたって投稿してる人がいるよ!」
え?復活?私の推しゾンビが?オールナイトの日に?今年忽然と姿を消していたもじゃもじゃゾンビさんが?
ポロリ
あまりの出来事に涙が溢れてくる。もう会えないと思っていた推しゾンビに会えるの?私?去年ありがとうって伝え損ねた私の推しに。今年急にいなくなってたもじゃもじゃゾンビに。
「行ってきなよ、もじゃちゃん」
Sポテさんが私の背中を押す。
「で、でも…カルーアさんの荷物も見てないといけないし…」
「もじゃ…推しは推せる時に推せ。でしょ?」
文子が私の方を見てそう話す。確かに、復活がこのオールナイトだけの可能性もある。今行かなければ、もう2度と会えないかもしれない。
「ごめん!Sポテさん!文子!私行ってくるよ!」
「う、うん!行ってらっしゃい!」
「もじゃ歓喜で草」
私は急いでメインステージの地蔵から離脱して、もじゃもじゃゾンビがいるであろうエリアへと向かうことにした。写真の背景で大体の場所はわかる。まだ、そこにいてくれよ。私の推しよ。




