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ゾンビナイト  作者: むーん
オールナイト編

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176/222

第176話 (162)千客万来-2

「うー!わー!わー!」


「何このゾンビちゃん!可愛いー!」


「初めて見るゾンビだな…」


「オールナイトだから特別なレアゾンビなんじゃ?」


「うー!わーーー!!」


「きゃー!可愛いー!」


——可愛いって何だよ!怖いだろ!


 内心そうツッコミながらも、可愛いと言われることに悪い気はしなかった。私のゾンビ知識を詰め込んで作った自作のゾンビ仮装。特にこのゾンビメイクは一流のゾンビ映画にも引けを取らないクオリティのはずだ。実際すれ違う殆どの人は私のことを、パークのゾンビダンサーだと勘違いしているようだ。まさか私の正体がカントクちゃんだとは気づくまい。


「うー!うー!」


 それにしてもずっとゾンビとして漂うのはかなり体力を消耗するな。一体私はどこでいつ休憩すればいいんだ?普通のゾンビ達は時折、門からバックヤードへと戻っていって休憩しているようだが、私は当然そこには入れない。となると、私は自ずからゾンビ状態を脱してベンチに座って休むしかないのか?


「おかーさーん!あのゾンビさん、ベンチに座ってるよー!」


「本当ねぇ〜。きっとゾンビ疲れしちゃったのねぇ〜」


——こんな風に指をさされかねない


 ダメだ。折角こんなにクオリティの高いゾンビになれたんだ。動きから何から完璧にゾンビになりきらなければならない。ゾンビはベンチで休んだりしない。体力の持つ限りはゆらゆらと漂っていよう。


——あれ?トイレはどうしたらいいんだ?


 ゾンビ漂いはまだ何とかなるとしても、トイレは生理現象だ。どうしようもない。もし催してしまった場合、このままトイレに駆け込むしかないのか?


「おとーさーん!トイレにゾンビが入ってきたよー!」


「本当だなぁ〜。ゾンビもトイレするんだなー!あはは!」


——これもダメだ!


 ゾンビが洋式便所に座って、用を足していてはゾンビ台無しだ。そういえばゾンビはトイレに行かないのか?よく人を食べている様子が映画などでは描かれているが、それを消化して排出する様子は描かれてない。お腹の膨れたゾンビはいるので、消化せずにそのまま溜め込んでいるのだろうか。いや、もしくは…。


——まさか垂れ流しなのか?


 間違いない。立ち小便や野糞をしているゾンビなんかどの作品でも見たことない。きっとゾンビ達は糞尿を垂れ流しながら歩いているのだ。つまり私はゾンビになりきる以上、催してしまった場合は…。


——い、いやいや!流石にそれはないでしょ!


 催してしまった場合のことを考えるのはやめよう。催さなければ良いのだ。うん。オールナイト終了までは何時間かしかない。その程度トイレに行かないことなんてよくある事だ。もう考えるのはやめよう。トイレのことを考えてしまうとトイレに行きたくなってしまう。


〜〜〜


——くそっ!あのハッタリ野郎!


「押し合わずゆっくり歩いて楽しんでくださいねー!走ると大変危険ですので、歩いて楽しんでいただくようご協力お願いしますー!」


 僕はストリートでお客様の誘導をしながら、ハッタリ野郎とあかねちゃんのことを考えていた。あの2人は今カッピーさんを探している。2人で。2人きりで。どうしてだ?おかしい。僕はジェットコースター対決でハッタリ野郎に勝ったのに。勝ったということは、あかねちゃんはもうハッタリ野郎の相棒ではないのに。ちゃんとそのことをビッグボスに伝えておくべきだった。事前にちゃんと伝えておけば、「それならこの2人に探させるわけにはいかないわね」とビッグボスも言っていたはずだ。後悔が僕の心に降り積もる。


「うー!うー!」


——ん?何だ?あのゾンビ


 考え事をしながら仕事をしている僕の目の前を、見覚えのないゾンビが横切る。


——あんなゾンビいなかったよな?


「うー!わー!」


 ここでバイトし始めて2ヶ月ちょい。流石にゾンビの見分けもつくようになってきた。あんなゾンビは見たことないし、こんなダンサーさんはいないはずだ。


——となると…


 ゾンビに仮装したお客様の可能性が高い。高いのだが…


「うー!わー!」


「きゃーー!」


 あのゾンビはお客様を驚かして回っている。これは完全にアウトだ。お客様同士で驚かすのはルール違反である。バイトを始めた初期にビッグボスに教えてもらったのを僕はちゃんと覚えている。中々そういった類の人はいなかったがついに学びが生かされる時が来たのだ。


——よし、注意しに行くぞ


「すいません!」


「え?あ、はい!何でしょう?」


 お客様ゾンビを注意しに行こうとしたところに、他のお客様から話しかけられてしまう。


「あの…ノベルナイトが出るショーに行きたいんですけど、場所がわからなくて…」


「あ、それでしたらこの道をまっすぐ行ってもらうと右手側に大きいステージが見えますので、そちらになります」


「なるほど!ありがとうございます!もう始まりますか?」


「もう少ししたらスタートの時間ですね!」


「ありがとうございますー!ノベルナイトのファンで楽しみに来たんですー!急いで行きますね!」


「はい!楽しんでくださいね!あ!でも、走らないでくださいね!」


「はい!ありがとうございます!」


 お客様はそう言うと、早歩きでメインステージの方へと向かっていった。まぁ、走ってないからセーフか?


——あ、お客様ゾンビはどこだ?


 そう思ってあたりを見回してみるが、先ほどのゾンビの姿は見えなくなってしまっていた。逃してしまったか。しかし、他のスタッフも違和感に気づいて注意するだろう。明らかに見たことのないゾンビなのだから。


——一応ビッグボスに報告しておくか。


 後から何で言わなかったの!と怒られたくはないので、逐一ビッグボスに報告する習慣がついてしまった。まぁバイトとしては良いことか。そういえば、ショーまでそんなに時間はないけどカッピーさんは見つかったのだろうか?


——ハッタリ野郎!急げよ!天才パーク探偵なら、見つけられるはずだろう?今回は特別にあかねちゃんを貸してあげてるんだから。


 僕はそう思いながら、粛々と仕事をするのだった。

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