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ゾンビナイト  作者: むーん
オールナイト編

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170/222

第170話 (156)MAKUAKE

「あの〜、お客様。閉園時間になりますので、退出のご協力お願いします〜」


「あっ俺たちオールナイトも参加するんで」


「一晩中ケンくんと遊園地デートなんて最高〜」


「俺も嬉しいよ、カオル」


「すいません、お客様オールナイトのチケットはお持ちでしょうか?」


「何言ってんの?チケット持ってるからここに入れてるわけでしょ?」


「や〜ん。このスタッフさん怖いよ〜、ケンく〜ん!」


「安心しろ、カオルは俺が死んでも守るって誓ってっから」


「きゃーー!ケンくーーん!」


「オールナイトイベントへの参加は、別途チケットが必要になりまして…お持ちなのでしたら、一旦ゲートから出てもらってから再入場して頂く形になります…」


「え?このチケットじゃ参加できないってこと?」


「えーそうなんだー知らなかったー」


「じゃあ仕方ないから、カラオケ行くか!」


「えーー!それめっちゃ良いー!カラオケオールはやばくなーい!」


「ご来園ありがとうございましたー」


 これで何組目だろうか。オールナイトイベントにそのまま参加できると思って、そのままパークに残ろうとする人が一定数いる。そんな人たちの追い出しをスタッフ総出で行なっている。まずい。オールナイトの開園まで時間がない。急いで追い出し切らなければ、入場が始まってしまう。


「今日もスヤスヤ〜サボちゃんです!今日はハロウィン当日ということで、何とオールナイトが…」


「お客様〜。閉園時間になりますので、退出のご協力お願いできますでしょうか?」


「あ、僕サボちゃんですよ?」


「はい?」


「テーマパークインフルエンサーの、今日もすやすや〜サボちゃんです!」


「はぁ…とりあえず閉園時間になりますので…」


「あのさぁ、チャンネルでオールナイトの宣伝してあげるからさ、このまま居させてよ」


「そういうわけには…。チケットをお持ちなのでしたら、一旦出て頂いて再入場してもらえれば…動画の撮影も自由になっているので…」


「オールナイトのチケット取れなかったんだよね〜。俺のチャンネルで動画あげたら宣伝になるよ?登録者も多いし」


「…。閉園時間なので、出ていってください」


「なんだよー話通じないなぁ!お偉いさん呼んでよ!コラボ動画ってことにしてさ!案件なら金額応相談ってことでさー」


「…」


ギロリ


「じょ、冗談だよぉ〜。殺気漏れてるけど、大丈夫ーなんて…あはは」


「お出口はあちらです」


「あ、気が変わったら動画の概要欄からお仕事の依頼募集してるからー!」


〜〜〜


ピリピリピリ


 追い出しを行いつつ、ゲートの方へと向かっているとケータイに着信があった。誰かと思い、画面を見ると“タテノ”と書いてあった。


ーーこの忙しい時になんだろう


 そんなことを思ったが、電話をしてくるということはよっぽどのトラブルなのかもしれないと思って急いで電話に出た。


「もしもし?」


『あっ、ビッグボスお疲れ様です!ちょっと相談がありまして…』


「なに?どうしたの?」


『今ベイサイドエリアの封鎖をしてたんですけど…』


 ベイサイドエリアの封鎖。オールナイト営業と言ってもパークの全てをそのまま運営するわけではない。働くスタッフの数の関係もあり、一部のエリアやレストラン、アトラクションなどは閉鎖するのだ。


『封鎖に使う柵とポールが結構な数余っちゃって。ど、どうしたら良いでしょうか?開園までに倉庫に戻す時間がどう考えてもなくて…』


 時計に目をやる。たしかに今から倉庫に運ぶのは時間的に厳しい。かといってそのまま放置するのも…。そう思ったところで一つアイデアが浮かぶ。


「タテノ、近くに少し前に閉鎖したアトラクションがあるのわかる?あの入り口のスペースに運べるかしら?そこに入るくらいの量?」


『あっえーと。待ってくださいね。あっ!多分大丈夫だと思います!急いで運びますね!』


「よろしく!」


 そう言って、会話を切り上げようとした。その瞬間、あることを思い出した。


「そういえばニンジャはいた?」


『いや、僕も探したんですけどいないと思います。隠れる場所もないし、諦めたんじゃないですかね?』


 そうだろうか。確かに、今日はニンジャらしき人を見かけなかった。SNSのアカウントも確認したが、沈黙を保っている。今回は諦めてくれたのだろうか。


「そう…。それなら良いけど…」


 本当ならパークを一周してチェックしたい。パーク中の壁をペタペタと触っていって確認したいのだが、それは無理だ。タテノや他のスタッフに確認を任せたのだから信用しよう。やれるだけのことはやったのだ。


 そう思ってゲートの方へと歩を速めた。でも、念の為その道すがら壁をペタペタと触り、ニンジャが隠れてないかを確かめてみるのだった。


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