第169話 (155)なぜか今日は-2
『ナイトベアー様!行くのであります!』
『貴様らも踊る阿呆にならNight〜!』
てくてくてく
僕たちはナイトベアーショーを終えてバックヤードへと戻った。着ぐるみで動くのは結構疲れる。真夏じゃないだけマシだけど、肌寒い季節といえど汗だくになってしまう。椅子に座って休憩しながら、すぐにメイクルームに行かなきゃなと思った。今日はこの後にオールナイトのショーもあるのだ。普通のパークの営業の後に、オールナイトのショーもあるなんて冷静に考えたら大変だな。単純に労働時間がいつもの倍あるということだ。
「ミッキーさん、僕次のショーのメイクしなきゃなんで先に失礼しますね」
「おう、ブラザー夜も頑張れよ。楽しみにしてっから」
「はい、ありがとうございます!」
僕はメインステージのバックヤードを出て、メイクルームへと向かう。ゾンビのメイクして人前に出るのは久しぶりだ。1ヶ月ぶりぐらいだろうか。すっかりリトルナイトベアーの体になっちゃってるからな。ゾンビモードに切り替えないと。それに、今日はその前に一つやることもあるしな。ゾンビメイクも急いで終わらせないと。
〜〜〜
「やっぱり久しぶりに見ると良いなぁ」
「ずっとカルーアさんの姿見なかったから心配しましたよー」
「心配かけちゃってごめんね。キーホルダーもありがとう!嬉しくってカメラにつけちゃった!」
私はもじゃちゃんにカメラにつけたリトルナイトベアーのキーホルダーを見せる。デイちゃんに貰った時は本当に嬉しかった。こんな私のことを心配してくれる子もいるんだ。私が1人で勝手に塞ぎ込んでいただけなのに、伝言を聞いた時は嬉しさと申し訳なさでいっぱいだった。
「閉園まで後1時間くらいだね」
「お腹空きすぎて今これ」
Sポテトさんと文子ちゃんがそう話す。確かにオールナイトの前に腹ごしらえをした方がいいかもしれない。
「確かにお腹すいたねぇ。オールナイト前に何かお腹に入れようよー」
「Sポテトさん、またポテトのエスサイズ頼むんですかー?」
「もじゃちゃん!いつまでその話するんだよ!」
「あはは!」
もじゃちゃん達のやり取りは見てるだけで楽しい。こんなオタク仲間に出会えて、私は幸せ者だなぁ。
「じゃあ、一回パーク出て腹ごしらえしようか!」
「ごめん!私ちょっと行かなきゃいけないところがあって…すぐ戻るから!」
「あ、じゃあ荷物もっとこうか?重いでしょ?」
「え?いいんですか?」
「Sポテさん力持ちで草」
「このくらい屁でもねーしw」
「草ポテさんで森」
「草ポテになっちゃってるよ!文子ちゃん!Sポテだから!」
みんなと一緒にご飯食べたかったけど、私はその前に一つやらなきゃいけないことがある。私はSポテトさんの好意に甘えて荷物を持っててもらうことにした。すぐにみんなの元に戻る予定だし。
カメラにつけたリトルナイトベアーのキーホルダーをぎゅっと握りしめながら、手を振ってみんなと別れた。




