第160話 (147)二十九、三十-6
「ユウくーーん!!ユウくーーん!」
「僕だよ!ケンジだよー!出て来てよー!」
ーー俺はここにいるんだけどな
ふわりと浮いてしまった俺はパークの中を叫びながら走り回り、時折こけてしまうケンジを眺めていた。
「ケンジーー!そんなに走らなくても俺はここに…」
「どこなのー!いるんでしょー?」
ーーやっぱり聞こえないか
どうしてケンジには俺の姿も声も届かないんだろう。俺の未練と言えばケンジだ。ケンジに俺が元気に踊ってる姿を見せたかった。ケンジを元気付けたくて。でも俺が死んで記憶を失っている間に、ケンジはしっかり前を向いて元気に生きていた。それでもう十分だった。なのに…。
ーーなんで俺はここにいるんだろうな
神様のせいなんだとしたら、意地悪な神様だ。目的も義務もないのに、俺は何故か幽霊なんていう中途半端な存在としてここに漂っている。生きてるような死んでるような中途半端な存在だ。ははっ、ゾンビみたいだな。
「ユウくーーーん!」
未だ走り回っているケンジを見て、申し訳なさが込み上げてくる。俺が幽霊なんかになってしまったばかりに、ケンジが俺を探す羽目になっている。虚しい。こんな気持ちは初めてだ。俺がここにいる意味ってなんなんだろう。誰かに存在を伝えることも、探してくれている親友の声に応えることも出来ない。神様、何で俺を幽霊にしてここに残したの?何か成すべきことがまだここにあるのかな?




