第153話 (140)愛しさと心の壁-2
ピーポーピーポー
僕らは救急車に乗る先輩を見送りにきていた。責任者としてビッグボスも事態の把握のためにやってきていた。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「はい」
「ビッグボス〜。ごめんよ〜!」
「怪我はしょうがないですよ。診断出たら、また連絡お願いしまーす!!気をつけて!」
救急車の中に運ばれる先輩がビッグボスに向かって話しかける。先輩は声を出すだけで足に響くのか、話しながら顔をしかめているのがわかる。
「先輩!オレも行きます!オレが100悪いので!」
「いやいいって!ココロくん居たら、逆に気を使うから!それに100悪いのは俺だから!」
「いや、オレです…オレが120悪いんです…!」
「いやいや!俺が150悪いから!」
「あのー、そろそろ出発していいですか?」
どっちが悪いかの数字がオークションの如く吊り上がってゆく様子を見ながら、救急隊員が痺れを切らして話しかける。ビッグボスが申し訳なさそうに答える。
「あっごめんなさい!大丈夫です!」
ピーポーピーポー
「オレが200…!200悪いんだあ!!」
僕たちは意地でも救急車に乗り込もうとするココロくんを何とか引き留めて、出発した救急車を見送っていた。僕とココロくんはゾンビメイクをまだ落としてなかったので、救急車の隊員さんが僕らを見て驚いた顔をしていた。もしかしたら、僕たちが怪我人だと思ったのかもしれない。救急車でゾンビを運ぶのはさぞかし怖いだろう。
「それにしても困ったわね…」
「ショーの出演ですか?」
僕は難しい顔をして考え込むビッグボスに話しかけた。オールナイトのショーの出演者が足りない足りないと前に騒いでいたのを思い出す。何とか調整したのにさらに不足したのだから、もう無理なのかもしれない。
「軍服ゾンビの箇所を削る相談を…?いや、今更それは…」
ブツブツと呟くビッグボスにココロくんが話しかける。
「ビッグボス…!」
「なに?どうしたの?」
「今回のことオレのせいなんです…!オレが…オレが…」
「もうそれはいいわよ。」
「だから…オレがやります…」
「え?やるって何を?」
ビッグボスが首を傾げる。僕もココロくんが一体何をやると言っているのか疑問だった。
「軍服ゾンビ、オレやります…!」
「やるって言っても…あなた…」
「オレ、ルッタッタダンスも踊れるし…先輩の穴オレが埋めます!オレの責任なんで!!」
確かにココロくんはルッタッタダンスの頃からパークでダンサーをしている。軍服ゾンビが踊る昔のダンスも踊れるということだ。ちなみに僕も踊れるんだけど、多分衣装のサイズが合わないので黙っておいた。軍服ゾンビはシュッとしたかっこいいゾンビで僕のイメージには合わない。
「確かにココロくんなら、衣装のサイズもそんなに調整しなくても…」
「オレやれます!先輩の分までやります!」
「…わかったわ。緊急事態だものね」
「申し訳ないです。オレの責任なんで…」
「衣装の人まだいるかしら。衣装の調整してもらわなきゃ…今から大丈夫?」
「大丈夫っす!!」
「じゃあ行きましょう!」
とんとん拍子で先輩の代演がココロくんに決まってしまった。二人は軍服ゾンビの衣装を持って急いで去っていってしまった。ビッグボスとココロくんで勝手に決めてたけどいいのかな?ニセ姉に相談しなくても。
「ココロくん、がんばれ!」
僕は病院に運ばれた先輩を案じつつ、急にショーの代演をするココロくんに心の中でエールを送った。こんなバタバタで本番大丈夫なんだろうか…。




