第147話 (135)祭りの準備
「カッピー!今のめっちゃ良いじゃん!」
「ありがとうございます!ですよね!」
連日のダンス練習の成果もあり、ハナさんとのダンスの息もかなりあってきたように感じる。本番まで後数日だ。明日からリハーサルも始まる。ハロウィン当日、一度きりのショー、一度だけ踊るダンス。これを一回きりにするのは何だかもったいない気がする。でも普通のイベントとはそう言うものなのか。たった1日のたった数分のためにこんなに準備をするんだ。
「これでリハーサルも大丈夫そうだね。あとは当日カッピーが緊張して真っ白にならなければ大成功間違いなし!」
「嫌なこと言わないでください!流石にもう緊張しませんよ!」
「いやぁ、どうだろうねぇ。今でも初日に緊張でガクガク震えていたカッピーを思い出すよ…」
「そんなには震えてません!ちょい緊張くらいでした!」
「いやいや、本当にこの世の終わりみたいな顔してたよ。あんなに緊張してたやつも今日日珍しいね」
あっはっはと笑いだすハナさん。僕はそんなに緊張していたのだろうか。正直もう覚えていない。覚えていないということは緊張していたということなのだろうか。いや、真実はどうでも良い!あの時は緊張していなかったで押し切ろう。
「と、とにかく!もう緊張しないから大丈夫ですよ!」
「ほいほい」
ハナさんは僕のことを全然信じていない様子だった。舐めるなよ!当日はこれまでになく平常心で緊張せずに臨んでやるからな!
「じゃあ、この練習も今日で終わりでいいかな」
「え?あっ、そうですね」
ハナさんの言葉に少し驚いてしまう。そりゃそうか。この練習も永遠に続くわけはない。ちゃんと踊れるようになったら終わるのは当たり前だ。ハナさんにとっては残業代のでない残業のようなものだ。
ーーもっとハナさんと一緒にいたい
チョウチョさんとの勝負で楽しそうに踊っていたハナさんの姿が頭に浮かぶ。僕もあんな風に踊れたら…あの日からそんなことをずっと考えていた。ハナさんと一緒にいるとダンサーとしても人間としても学ぶことが沢山ある。
ここ最近のハナさんと2人で練習した時間は本当に楽しくて…何というか、この時間がずっと続けばいいのにとも思ってしまっていた。このままずっと本番なんて来ずに2人でふざけたり、踊ったりそんな日が続いていけば…。
でも、そんな日がずっと続くわけないことは僕が一番知っていた。僕の夢、僕のダンサーとしての区切り。その為にもこのオールナイトのショーは成功しなくては。ハナさんもここまでやってくれたのだ。信頼して僕にショーを任せてくれたニセ姉のことも裏切れない。
「カッピー、どうしたの?」
沈黙していた僕にハナさんが話しかけてくる。
「いや!何でもないです!練習付き合ってくれてありがとうございました!」
「いいねぇ。カッピーもちゃんとお礼の言える大人になったんだねぇ」
「僕だってお礼くらい言えますよ!」
「じゃあ、お礼ついでにジュースでも奢ってもらおうかな?」
「いいですよ!今日は僕が奢ります。“大人”の僕がね!」
そして大人の僕はハナさんに、練習のお礼のジュースを奢ったのだった。明日からは全体のリハーサル。頑張るぞ。




