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ゾンビナイト  作者: むーん
激動編

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144/222

第144話 (132)プレゼント

「推しゾンビの最前ゼロズレとか、明日死ぬんか私?」


「いいなぁ。文子ちゃん、今日の写真僕にも送ってよー!」


「だが、断るっ!!」


「し、辛辣ぅ〜!」


 文子とSポテトさんが軽快にやり取りをしているのを聞きながら、私は考え事をしていた。


ーー心配だなぁ


 最近、カルーアさんの姿を見ない。カッピーさんが出ているナイトベアーのショーにもしばらく来ていない。忙しいのかな?ゾンビナイト期間は推しのために全てを捧げるんだ、という人だったのに。こんなに姿を見ないなんて、何かおかしい。もしかしたら、体調を崩しているのだろうか?すごーく心配だ。


 他のエリアへと向かうと言う文子とSポテトさんを見送り、私はベンチに座って休憩をしていた。今日はなんだかゾンビナイトを楽しむ気分になれない。


「もじゃちゃん、こんなところでたそがれてどうしたの?ショー、そろそろ始まるんじゃない?」


「デイちゃん!今日はなんだか疲れちゃって…」


「まぁ、そう言う日もあるよね。ゆっくり休むといいわ」


「はい…。あっ!雨グリの時はありがとうございました!」


「いいってことよ。もじゃちゃん達の頼みだもの。私も自分が楽しむついでだしね」


 デイちゃんはニコッと微笑んだ。すらっとしていて、かっこいい大人の女性と言った感じ。だけど、この人パークに毎日きているんだよなぁ。どんなオタクでも流石に毎日は来られない。そんな中、彼女は何年も毎日通い続けている。とんでもない異常行動である。こんなに普通の良い人なのに、その行動だけ異常なんだよなぁ。


 そんなことを思いながら、もしかしてデイちゃんならカルーアさんのことを知っているんじゃないか、と考える。私はすかさず聞いてみた。


「ちなみになんですが、カルーアさん最近会ったりしてますか?」


「え?カルーアちゃん?今日のお昼に会ったわよ?」


「え?!本当ですか?!」


 流石の情報通のデイちゃんだ。誰々を見なかった?と聞くと絶対になんらかの情報を教えてくれる。カルーアさんお昼にはいたけど、夕方には帰っちゃったってこと?UPJオタクの本番はゾンビナイトなのに…。どうしてだろう…。


「カルーアさん、元気そうでしたか?最近ゾンビナイトに姿を現さなくて心配なんです」


「確かに言われてみれば元気なかったかも…。前に炎上した時と同じ顔してたわ。話す分には元気そうなんだけど…」


「やっぱり…。何かあったのかな…」


「後はゾンビナイトは卒業します、とか変なことも言ってたわね」


「え?!卒業?!」


 ありえない。UPJオタクが、ゾンビナイトを卒業する?!UPJで一年で一番盛り上がる秋ですよ?この前まであんなに熱狂してたのに。おかしい。何かあったんだ。何かが。


「急に姿見なくなったから心配なんです…。アカウントもまた消しちゃったみたいで連絡も取れないし…」


「わかった!今度会った時に、もじゃちゃんが心配してたって伝えとくわ!」


「あっ…でも…」


 こういう時にどうしたらいいんだろう。私はカルーアさんにとって何なんだろう。正直連絡先を知ってるわけでもない。UPJで会った時に話したり、時々ご飯を食べたり、SNSで交流したりする程度の関係。UPJ以外で遊んだり、ご飯を食べに行ったりしたことはない。はたからみれば薄い繋がりなんだと思う。世間から見てどういう関係にカテゴライズされるんだろう。たかがテーマパークのダンサー好きって言うだけの繋がり。それだけ。


ーー私なんかが友達面していいのかな


 他人のくせに友達面して心配しやがって、と思われるかもしれない。迷惑かもしれない。他人のくせに私の領域に踏み込んでこないでって思われるかもしれない。


ーーでも、心配だもん


 かもしれない、かもしれない、かもしれない。そうだ、本当のことなんてわからない。私が心配してるってこと、伝えるくらい大丈夫だよね。だってカルーアさん、私を心配させてるんだもん。また、カルーアさんと話したいよ。ゾンビの写真見せて欲しい。この前みたいに、カッピーさんの写真見せ合いもしたい。


ーー友達…ではないかもしれないけど!


「あっ!デイちゃん!ちょっとここで待っててください!」


シュタタタ


「えっ??どうしたの??」


〜〜〜


シュタタタ


「はぁはぁ。これ…これカルーアさんに渡してください…」


「これはキーホルダー??」


 私はグッズショップで買ってきたリトルナイトベアーのキーホルダーをデイちゃんに手渡した。


「これカルーアさんに…。はぁはぁ…。心配してるって。また一緒にショー見たいですって渡してください」


 カッピーさん推しの私たちの仲間の証。リトルナイトベアーのキーホルダー。これをカルーアさんにプレゼントしたら、少しは元気になってもらえるかな。また、お話できるかな。


「うん!もじゃちゃんの気持ち、ちゃんとカルーアちゃんに渡すね!」


「はい!お願いします!」


 親戚でも兄弟でも家族でもなければ友達ですらない。でも、知り合い以上にカルーアさんのことを知っている。曖昧な関係。SNSで元気そうだったら嬉しいし、落ち込んでたら心配。パークで姿を見かけると嬉しい、見かけないと心配だ。


ーーいつかは友達になれるかな


 また一緒にオタクしましょう。カルーアさんの写真は素敵なんだから。

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