第141話 (129)WanteD! WanteD!-2
「ハッタリくんは事件が起きた時しか、姿を現さないの。その素性は謎に包まれているわ。」
「何ですか、それ?!でも、あの人UPJのスタッフではあるんですよね?」
「そう、パークのどこかにいるとは聞くんだけど、私は一度も普段の姿を見たことがないのよ。」
そんなことがあるのか?一体奴は給料をいくらもらっているんだ。バイトなのか?社員か?まさか事件の時以外は、パイプを吸ってサボっているのか?それならば許せない。お前も僕と一緒にお客様の案内や誘導をしろぉ!
「タテノくん。ハッタリくん探しも良いけど、そろそろ仕事の時間だからね?勤務時間は、ちゃーんと仕事に集中するのよ?ただでさえ10月下旬は人が増えて忙しくなるんだから。」
「は、はい!わかりました!」
と言いつつも、仕事中もストリートで奴を探そう。そうしないと見つけられないーー。
「何考えてるの?本当にわかったのかしら?」
びくっ
ビッグボスは僕の心を見透かしたように顔を近づけて、睨んでくる。これは、無理だ。仕事中は仕事をしよう。
「す、すいません。わかりました…。」
それにしても事件が起こった時にしか現れない、か。成程。逆に言えば事件が起これば、奴は現れるということだ。待ってろ、ハッタリ。僕には作戦があるぞ!
〜〜〜
「どこだぁあ!!ハッタリぃ!!僕とあかねちゃんを賭けて、ジェットコースター対決しろぉ!!」
ーーなんや、物騒やなぁ〜
男のスタッフがオレの近くを走り抜けてゆく。アイツは確か…タテノや。間抜けで有名な新人バイトのやつやな。何でアイツ、オレをあんな目の敵みたいに探しとるんや?まぁ、ええか。オレがここにいることにも気づけないようじゃ、やっぱり間抜けっちゅーことやな。
ガチャ、カラカラカラ
オレは門を通って、お客様のいるエリアへと入った。オレは天才パーク探偵やけど、事件っちゅーのはそうそう起こらへん。そんな事件ばっか起こるテーマパーク、誰も来たないやろ?ちゅーわけで、事件がない時はーー。
ガサゴソガサ
オレはゴミ箱から袋を取り出し、中身を手元にあるダストボックスへと移動させた。さっき、カラカラ言うてたんはこの手押しのダストボックスや。そう、オレの普段の仕事はテーマパークのゴミ集めや。ゴミが落ちてたら拾うし、ゴミ箱が一杯になってたら回収して回る。
「あっ、すいませーん。これ、捨てても良いですか?」
「はい。大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
お客様がゴミを預けにくる。にこやかに、にこやかに対応をする。オレはこの仕事をしている時は標準語で話すようにしている。理由は、探偵であることがバレちゃあかんから。このゴミ回収の仕事は探偵としての情報集めにピッタシや。誰がどこにおるか、どんな話をしているか、それを怪しまれずに行うことができる。探偵のハッタリがゴミ回収して、情報も集めていると知られては商売上がったりや。
「あっ、ゴミのお兄さん!これ、さっき落ちてたやつです。」
「あ、ありがとうございます。ゴミのお兄さんはやめてください。僕にはコウノって名前がありますので。」
「あはは!そうですよね。ごめんなさい、コウノさん。」
「じゃあ、僕は向こうのゴミ箱を回収してくるので…。ではまた、あかねさん」
「はい!お疲れ様です!」
オレはコウノとして、あかねちゃんからゴミを受け取りその場を去ろうとした。すると、そこへ先ほど聞いたばかりの間抜けな声が聞こえてきた。
「あっ、おーい!あかねちゃん!」
「タテノくん、どうしたの?」
「向こうの誘導の人手が足りないんだよ!無線で呼んでたんだけど、応答がなかったからさ」
「あっ、ごめん!スイッチが切れてたみたい!すぐ向かうね!」
やっぱりタテノか。相変わらず間抜けだ。こんなに目の前にオレがいるっちゅーのに、全く気付くそぶりもない。
「あ、初めまして。僕コウノって言います。ゴミ収集の担当なんです」
「どうも初めまして。僕もう1ヶ月以上働いてるのに、初めてですね!よろしくお願いします!」
「タテノくん、ビッグボスが無線で急いでって言ってる!」
「あっ、ごめんごめん!今行く!じゃあコウノさん、またいつか!」
そう言うと2人は去っていった。話しても気づかないなんて、そんな洞察力じゃアイツは探偵にはなれへんな。




