第135話 (123)SAD GIRL-2
「ではぁ!!ここでチョウチョ対ハナのリベンジダンス対決を始めます!!」
「す、すいません…シャクレさん!勢いよく叫んだところ申し訳ないですが、まだカメラ回してないです!」
「なっ、リュウー!とりあえず、ずっとカメラ回しとけよ!そんなんじゃ俺と天下取れないぞ?」
「…!そうですね!天下取りたいです!これからは回します!」
「おう!頼むぞ!」
「へへへ。はいっ!どうぞ!」
ーーこの2人ってこんな感じの関係なんだな
シャクレさんとリュウのやり取りを見て、そんなことを思った。リュウと言えば迷惑行為を行うヤバい奴というイメージしかなかったが、シャクレさんと普通のやり取りもする普通の人間なんだな。
「そんなのは後から幾らでも撮れるでしょう。さっさとやりましょう」
「おーおー。チョウチョさん、そんなに焦っちゃ折角の乳が台無しだぜ?まずは前戯からゆっくりとー」
「ハナ、相変わらずおっさんみたいなことを!それセクハラだから!もう時代が違うのよ!」
ーーあれ?この2人意外に仲良いのか?
ハナさんはテレビ撮影でチョウチョさんが来た際、彼女を避けるために出演を拒否していた。それもあって、チョウチョさんとは険悪なのだと思っていた。しかし、今目の前で言い合っている2人を見ると、イメージとは全く異なる。
「もういい。ハナのペースにはさせないわ。さっさとやりましょう」
「オッケー!ルールを説明するのは俺!12の3でボッカァーン!愛の爆弾のシャクレ!」
MCモードに入ったシャクレさんが対決のルールの説明を始める。少し離れた場所から、その様子をリュウがカメラに収めている。
ーーあれ?
リュウが持っているカメラにキラッと光る何かが目に入った。カメラについているキーホルダーがゆらゆらと揺れていた。よく見るとそれはリトルナイトベアーのグッズのキーホルダーだった。
ーー何でよりによってリュウがリトルナイトベアーを…
僕がリトルナイトベアーの中の人だと言うことを知ってわざとなのだろうか?いやそんなことはあり得ないか。それを知ってるのはパーク側の人間と外ではカルーアさんくらいのものである。ん?カルーアさん?
ーーあっ!あのカメラ!
リュウが持っているカメラに目がいく。あれはカルーアさんが持っていたものと全く同じものだ。なにか既視感があると思っていた。何だ?あのカメラ流行っているのか?
ーーカルーアさんか…
あのストーカー未遂事件からカルーアさんの姿を見ていない。ナイトベアーのショーにも姿を現していない。もしかしたら、パークにも来ていないのかもしれない。姿を見ないなら見ないで心配である。最後に直接会ってちゃんと自分の至らなさを僕から伝えるべきだったかもしれない。
あの後、1通ファンレターが届いた。たくさんの写真が入っているであろう分厚い封筒の後ろには「カルーア」と書かれていた。まだ封は開けれずにいる。どんなことが書かれているのか、何だか確かめるのに二の足を踏んでしまっていた。
「ーというわけで、これから見てもらうダンス動画をどちらが完璧に再現して踊れるかの対決になります!」
シャクレさんの大声で我に帰る。そうだ。集中しろ、僕。今はハナさんのことだ。
シャクレさんはスマートフォンをハナさんとチョウチョさんの前に差し出し、課題の動画を見せていた。僕も遠巻きながらその動画を見させてもらう。
画面にはシャクレさんがフリー音源と思われる音楽に合わせてダンスを踊っている様子が写っていた。そのダンスはとても巧みでさすがベテランといった雰囲気だった。
ーーやっぱりこの人ダンス上手なんだな。
動画を見ればわかる。この人が今もダンスを練習して励んでいることが。どうしてパークのダンサー辞めてしまったんだろう。やっぱり何か問題を起こしてしまったのか?この人がパークにいる時どんな感じだったのか、とても気になる。
そんなことを考えているとダンス動画が終わった。ぼーっと考え事をして見ていたため、ダンスの振り付けは全く頭に入らなかった。自分が勝負するんじゃなくて良かった。これから勝負するのが僕だったら、適当に出鱈目なステップを踏んで誤魔化すしかなかった。さぞかし滑稽に映ることだろう…。
〜〜〜
動画を見終わった2人は少し離れて横並びに立っていた。それはまるであの日のオーディションの並びのようだった。その様子をリュウがカメラで撮影している。
「私はいつでもいいわ」
「こっちも同じく!さっさとやろうにゃー」
「…言っておくけどズルはしてないわよ」
チョウチョがハナにそう話しかける。ハナはとぼけたような顔をして、返事を返した。
「まぁ…そんなことはどっちでもいいさ」
ハナはそう言うとフッと視線を下に向ける。
「なによそれ」
チョウチョはハナの全てをわかっているかのような返答に苛立ちを隠せなかった。
「…」
2人の間に緊張感が走る。唯一の観客であるカッピーも固唾を飲んで見守っていた。その緊張感をシャクレが大きな声でぶった斬るのだった。
「じゃあ!ダンス対決、はじめます!ミュージックスタートぉお!!」




