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第13話 (13)触れたい、

「はぁ〜。今年どうしよ」


「これ、公式がしていいことじゃないだろ。知らんけど」


「本当だよ〜。文子〜。去年あんなに人気だったのにさ〜。居なくなってるなんて酷すぎるよ〜」


「もじゃちゃん、可哀想すぎて泣けてくる。誰だよ、もじゃちゃん泣かしたやつ」


「文子〜」


 泣きながら文子ちゃんに抱きつくもじゃちゃん。もじゃの天然パーマの髪の毛が、文子のセーターに絡みついていた。文子の方がもじゃより一回りも二回りも小さいにも関わらず、こうなってしまうともじゃの方が幼く見えてしまう。


「もじゃもじゃゾンビが今年もいると思ってた人、正直に手を挙げなさい」


「は〜い」


「こんなに跡形もなく居なくなってると正直笑うしかない」


 もじゃが泣いている理由。それは、去年から推していたゾンビが今年は居なくなっていた為である。しかもそのゾンビがいたエリアごと消え失せていたのである。今でもゾンビナイト初日にゾンビ入場ゲートが開いて、ゾンビが全員出てきたあとも呆然と立ち尽くすもじゃの顔が思い出される。驚きすぎると人間、何のリアクションも取れないのだ。その後、パーク中を推しゾンビを探して歩き回ったが遂に見つけることはできなかった。ゾンビナイト初日終了のサイレンが鳴る中、もじゃは泣き崩れてしまったのであった。その翌日、少し気持ちが落ち着いてきていたもじゃは文子に話を聞いてもらっているのだった。


「わたしもう、ゾンビナイト来る理由がないよ。もじゃもじゃゾンビがいなかったら私は何を見ればいいの?」


 もじゃは天然パーマが自慢でもあり、コンプレックスでもあった。自分では気に入っているが、クラスメイトに天パなどとからかわれることも多かったからである。そんな中、自分とほぼ同じ髪型のもじゃもじゃゾンビを見て、惹かれたのだった。


「ちょっと、文子!私を慰めるフリしながら、昨日撮った写真の整理してない?」


 少し落ち着いたもじゃが、ふと横に目線をやると沢山のゾンビの写真をフォルダ分けしている文子の姿があった。その手際はまるでプロのようであった。


「もじゃが悲しんでる一方で、私はゾンビの写真撮りまくってた話する?」


「そんな話はしなくていいです!」


 写真を整理する文子の目はキラキラと輝いていた。今2人が休憩している芝生に降り注ぐ太陽の光が反射しているからだろうが、おそらく理由はそれだけではなく、本当にキラキラと多幸感に溢れた目で画面を眺めていた。


「ゾンビナイト初日最高すぎた。今年のゾンビのビジュ良すぎる。あまりにもオタク心をわかっている。まさかの殺人鬼ゾンビ復活しててアツい」


 もじゃを無視してペラペラと喋る文子。もじゃはそんな文子にも慣れた様子で、軽く流しつつごろんっと芝生に寝転んだ。あー今日どうしようかな。6時からゾンビナイト始まるけど、どこのエリアに行こうかな。今年は推しのゾンビを見つけられるんだろうか。柔らかな日差しに目を細めながら、ぼーっと考えていた。すると、少し離れたところからノシノシと足音がしてきていた。


「あ、も、もじゃちゃんにTK〜!き、今日も来てたんだね〜」


「あ、Sポテトさん!お久しぶりです!」


「Sポテトさん、もう今年のゾンビの推しグッズ作ってるの死ぬwww」


「さ、流石TKちゃん。き、昨日徹夜して作ったんだ。まじ寝てないから、ねみー。エナドリ全く効かんわ〜。ふ、ふふ」


 Sポテトさんは今年から登場したゾンビをイメージした簡単なコスプレをしてきていた。Sポテトさんにカーキのオーバーオールがよく似合っている。


「き、昨日もじゃちゃんSNSで荒れてたから心配してたんだよ。まさかもじゃもじゃゾンビが居なくなってるなんてね」


「そうなんですよ〜。今、文子に慰めてもらってたところです」


「いや、慰めてねーし」


「相変わらず仲良いね〜。でも思ったより元気そうです良かった〜。ち、ちなみに昨日もじゃもじゃゾンビの中の人は別のゾンビしてたみたいだよ」


「そうらしいですね〜。でも、私中の人には興味ないからあんまり惹かれないんです〜」


 話しながら、汗だくになっているSポテトさん。肩にかけたタオルで顔を拭いながら、もう秋なのに暑いよね〜と呟いていた。確かにこの暑さで何がハロウィンイベントなんだろう。まだまだ水パレの暑さである。


「Sポテトさん、今日はどうされるんですか?」


「ぼ、僕はね。今からあっちのゲートで出待ちするところ。推しのユミちゃんが土日シフトみたいだからね。ふふふ」


「Sポテトさんの推しゾンビは今年もいていいなー」


「ユミちゃんの包帯ゾンビ、今見ても結構良い。推せる」


「だ、だよね〜。今年もあのエリア、終盤は混みそうだから今のうちに写真撮らないと。日没の時間もどんどん早くなるし。じ、じゃあまたね!」


ーーと言いながら小走りで去っていくSポテトさん。Sと言いつつ、その体はLサイズである。それでも、巨大ゾンビの横に並ぶとSポテトさんが小さく見えるから不思議である。


 走らないでください、とスタッフさんに注意されるSポテトさんの後ろ姿を見ながら、もじゃは今後について思案するのであった。


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このキャラのエピソードもっと読みたいなどあれば、コメントで教えて頂きたいです!

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