第129話 (117)アナーキーインザUPJ
「12の3でボカァ〜ン!どうも愛の爆弾チャンネルのシャクレと…!」
「リュウでーす。」
「というわけで今日はメガネはいないんですが…。」
メガネさんがいない分、カメラ係の俺が返事をする。メガネさんがいたら反対されているかもな、と思いつつ居てくれなくて良かったとも思っていた。メガネさんは今回の撮影を止めそうな気がする。一応言っておくと、今回はシャクレさん主導だから俺は悪くないですよ。俺はアドバイスしただけなので。
「そしてそして!先日の生配信に続いてゲストが来てくれています!どうぞ!」
「ど、どうも…。チョウチョでーす。おぇ…。」
「二日酔いのチョウチョに来てもらってまーす!大丈夫?」
「大丈夫じゃな…。ごめん!ちょっとトイレ行ってくる…。おぇえ…。」
ーーこの調子で大丈夫か?
昨日の生配信後、酔い潰れてしまったチョウチョさん。案の定今日は二日酔いになってしまったようで、朝からずっと調子が悪そうだ。結局昨日のBAN生配信のせいで、俺の動画チャンネルは一時収益化停止となってしまった。現在は問い合わせをして、再開を待っているところだ。くそっ。金も入らず、手間だけかかる。こんなことならば、シャクレさんの愛の爆弾チャンネルの方でやっておけば良かった。
「リュウ、悪いな。色々と迷惑かけて。」
「い、いやぁ。あはは。大丈夫ですよー。シャクレさんの頼みですし!」
本当は大丈夫じゃないし、迷惑かけられたと思っていたが、シャクレさんにお世話になっている手前強くは言えなかった。それに、今日撮影する予定の動画は伸びるという確信があった。それを思えば、このくらい小さなことだ。俺はインフルエンサー様なのだ。落ち着け。このくらいのことで動じたりしない。
「で、ハナはどの辺にいるんだ?囚人エリアだっけ?」
「いや、違います。そこから移動になったみたいで、今はサイバーエリアにいます。」
「なるほどなー。あいつクビにならなかったんだなー。」
確かに。シャクレさんは問題を起こしてパークをクビになった人である。ハナさんも『アレ』で問題を起こしたようなので、同じように処分されてもおかしくないはずだ。何故なんだろう。
「まぁ、ハナのやつ。みんなに好かれてるからなー。上手くやったんだろうな。」
「へぇ。そうなんですか…。」
シャクレさんとはそれなりの期間仲良くさせてもらっているが、パークに居た頃の内情を話してもらうのは初めてだった。ハナさんは裏ではどんな感じなのだろう。他のダンサーは?オタクとして気になる。
「ご、ごめん。お待たせ…。」
トイレで吐いてきたであろうチョウチョさんが戻ってくる。先ほどより、すっきりした顔に見えた。
〜〜〜
「さぁ!と言うことでやってきました!ゾンビナイト!すごい人ですねぇ〜。」
「人だらけで酔っちゃうわね…!いつもこんな感じなの?」
人混みをかき分けながら、2人が歩く様子を撮影する。それにしても、こっちはインフルエンサーで芸能人のチョウチョさんに来てもらって撮影してるんだから、一般人は気を使って退いてくれたりしないものか。
「ゾンビナイト期間は結構こんな感じかな〜。チョウチョは初めて?」
「前に仕事で来た時はこんなに多くなかった気が…。」
「や、やっぱりゾンビナイトは後半になるにつれて、こここ混雑しますから。」
「ふーん。そうなの。で、ハナはどこにいるの?」
「あっ、ここここっちでふ!!」
緊張で声が震え、つい噛んでしまった。シャクレさんもチョウチョさんも出役のため、発声がちゃんとしている。一方こっちはインフルエンサー様と言っても、動画で顔出しもしていなければ、声もAI音声を使用している。動画に声がのると思うと、途端に緊張してしまった。人前に出る人はすごいなぁ。でも、俺もいつかは…。
「あ、いました!あの黒いローブを被ったゾンビです!」
「ゾンビ?あれがゾンビなの?」
「あれは、ああいう設定のゾンビなんです!」
「ふーん。そうなんだ。」
僕たち3人はハナさん扮するゾンビの方へと歩き出す。僕は一応マスクを取り出し顔が隠れるようにした。あの時の奴だとバレないように。もし、あの時の件でハナさんに睨まれたらどうしよう。で、でもこっちにはチョウチョさんもいるし、視線はそっちに集まるはず…。うん、大丈夫なはずだ。
そうしていると、シャクレさんがカメラ目線でこう言うのだった。
「さぁ!チョウチョとハナ!因縁の2人の再会ですー!!」




