第115話 (103)Zombie Lady
「くそ!何なんだよ!あれ!」
「まぁまぁ、落ち着いて!」
「オラフさんは気にならないんですか!調子狂いますよ!あんなの!」
ゾンビ仕事の合間、休憩室に戻るとココロくんがご立腹だった。原因は今日のカントクちゃんだろう。
〜〜〜
じーーーっ。
「ゔぅ…?!ゔぉわぁ!」
「ふーん。よく見ると中々良く出来てんじゃねーか。」
「ゔぅぉああああ!!」
「ほーほー。ここはこうなってんのか。写真撮らせてもらうぜ。」
カシャカシャカシャ
「お客様、あまり至近距離での撮影は困ります。」
ココロくん扮するゾンビに執拗に絡んでいくカントクちゃん。メイクを研究するのに必死なのか、カントクちゃんのカメラのレンズはココロさんの顔面に突き刺さる勢いだった。見かねたあかねちゃんは、注意をしたのだった。
「悪い悪い。ちゃんと見たらよく出来たメイクだと思ってさ!」
「ありがとうございます。適切な距離をとって楽しんで頂ければと思います。」
「はいはい。誠に申し訳ござませーんっと。」
カントクちゃんは憎たらしい言い方で、あかねちゃんに返事をした。ココロくんにひとしきり絡んだ後に、僕の方へ近づいてくるのだった。
「くっ、このゾンビデカくて顔が近くで見られねーよ!このっ!こいつっ!屈みやがれ!」
「ゔぅ…??」
カントクちゃんは僕のメイクも近くで見ようとしてくるが、かなりの身長差があるためか全く視線が届かないようだった。必死にジャンプして、見ようとしてくる様は子どものようで可愛かった。
「あの!だから、近づきすぎないようにお願いします!」
「だ、だって!こいつデカすぎて見えねーんだよ!脚立とか借りられないのか?!」
「そのようなサービスはございません。」
「チ、チビに人権はないのかー!くそぉー!」
カントクちゃんはジタバタと悔しそうにしていた。そこへ、カメラを持ったオタクたちの大群が近づいてくるのだった。
ガヤガヤガヤガヤ
カシャカシャカシャ
きゃー!きゃー!こっちこっちー!
カシャカシャカシャ
「う、うわぁ。なんだなんだー!」
僕にはわかっていた。あれは、りゅうじん君を取り巻くオタク達である。同じゾンビの僕ですら、ストリートでりゅうじん君の姿を見ることは少ない。常にオタク達に囲まれているからである。その動線上にいたカントクちゃんは、りゅうじん君の起こした嵐に巻き込まれてしまっていた。
「ひ、ひぃ〜。なんだってんだ。全く!もういい!疲れたから帰る!」
ココロくんがカントクちゃんが帰る後ろ姿をじーっと見ているのが見えた。恐らく、「疲れたのはこっちのセリフだよ!」と内心思っていることだろう。
〜〜〜
「俺もオラフさんくらいデカかったらなー!カメラこの距離ですよ?本当に目の前!ピストル突きつけられてるのかと思いましたよ!」
ココロくんは、手のひらを顔に当ててその時の状況を再現していた。確かにそのくらいカントクちゃんのカメラは顔に近付いていた。
「カ、カントクちゃんは最近オールナイトに向けて、コスプレのゾンビメイクの研究をしてるみたい。それで今日も僕らのメイクを見て勉強してたんだと思う。」
「勉強って!そんなに勉強したいんだったら、ゾンビダンサーになればいいのに!ちょうどさっきもビッグボスがオールナイトのダンサーが足りないー!って、大騒ぎしてたんだから。」
ガチャ
「あ、お疲れ様です!」
「カッピーじゃん!久しぶり!元気にしてたか?」
「あ、ココロさん。ありがとうございます。僕は元気です!」
「なら、良かった。お前とハナさんの穴は何とか俺らで埋めてっからよ!」
「その件に関しては、本当に頭が上がらないです。すいません。」
「良いって、良いって!『アレ』は俺も見てて楽しかったからさ!やる男だよな!カッピーは!」
ココロくんは、恐縮するカッピーと肩を組み、背中をバンバンと叩いていた。彼なりのスキンシップなのだろう。
「そういえば、ドリームビリーバーは最近どうですか?」
ドリームビリーバーとは、パークの外部でココロくんが所属しているダンスグループだ。前に一度、僕とカッピーとでライブを見に行ったことがある。
「あぁ。ドリームビリーバーな。今ちょっと活動休止中でさ。」
「え?何でですか?」
「メンバーの1人が結婚するらしくて、脱退したんだよ。田舎の方に帰るらしくてさ。まぁ、色々あんだよ。」
「そ、そうなんですか…。」
「だから、カッピー。加入してくれって話も一旦なしなんだ。すまねぇな。」
「いや、別に加入するつもりはなかったですけど。」
「相変わらず意志が硬いな、カッピー。」
ドリームビリーバーが活動休止していると言う話を聞いて、何だか少し悲しい気持ちになった。ダンサーなんて一生食べていける仕事ではない。脱退したメンバーも色々と考えることがあったのだろう。
「カッピーもバイトだもんな。ビッグボスから聞いたよ、ゾンビナイトが終わったら辞めるんだって?」
「え?!そうなの?!カッピー??」
「…はい。『アレ』で迷惑もかけたし、ダンサーとして踊ってても、何のために踊ってるのか分からなくなることもあって…。とりあえず区切りとして、今年のゾンビナイト期間だけはと思いまして。本当は『アレ』でクビになっててもおかしくなかったですし!」
「そ、そうなのかぁ。寂しくなるなぁ。」
「オラフさんも、毎年ゾンビナイトの期間だけじゃないですか!」
「ま、まぁそうなんだけどさ…。」
「でも!僕もダンサーは辞めちゃうけど、皆んなと会えなくなるわけじゃないんで!辞めても遊びましょうよ!」
「そ、そうだね!定期的に集まろうよ!」
「ドリームビリーバーの復活ライブの時も来てくれよな。」
「え?あ、はい。」
「カッピーがいつ気が変わってもいいように、加入できる席は用意しとくからな。」
「あ、ありがとうございます…。」
ココロくんはどうしてここまでカッピーを加入させたいのだろうか。何かビビッとくるものがあるのだろうか。あと、どうして僕はちっとも誘ってくれないんだろう。別に僕も入りたいわけじゃないけど、ここまでスルーされると少し傷つくぞ!
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