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ゾンビナイト  作者: むーん
激動編

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110/222

第110話 (98)迷子犬と雨のビート-6

「見つけたぁ!ここや!」


「エディーちゃん!こっちだよ!」


ワン!ワン!


 私はジャングルエリアの茂みでおとなしくなっているエディーに近づいていった。ハッタリは、捕まえるのは私に任せるといった具合で遠巻きに眺めているだけだった。安楽椅子探偵でも気取っているのだろうか。エディーの近くには、悲しみに打ちひしがれている様子の男性スタッフがいた。塗装チームの人だろうか?そして、エディーももう遊ぶのに疲れたのか、走り出す気配はない。


カチン!


「よし!首輪にリード付けました!」


「よし、でかしたで!あかねちゃん!」


ワン?


 私はエディーの首輪にリードをつけることに成功した。エディーは遊んでくれてありがとうとでも言うように、私の顔をぺろりと舐めてきた。可愛いやつめ。私はお返しにふわふわとした首のあたりを撫でてやった。すると、後ろにいたハッタリが突然大きな声で宣言するのだった。


「これにて、迷子犬事件解決や!オレに解決できひん事件はないんや!!」


〜〜〜


「オレに解決できひん事件はないんや!」


 先ほどまで静寂に包まれていた俺の作業場に、パーク探偵の声が響く。また、パーク探偵か。こいつと関わると碌なことがない。トラブルメーカーめ。解決できひん事件がない?なら、この溢れたペンキ事件を解決してみろよ!あのエディーとかいう犬が顔を出したと思ったら、俺の背中側に置いていたペンキ缶が倒れた。言っておくが、俺は全く触ってない。風で倒れた線もない。では、一体なぜなのか。迷宮なしの名探偵よ、この不可思議な出来事を推理しておくれ。


「お?なんや、おっさんやないか。」


「よぉ…。探偵坊主。話がーー。」


「なんや、おっさん。ペンキこぼしてもうたんか?アホなやっちゃな〜!」


「ち、違う!これは俺がやったんじゃーー。」


ポツ、ポツ、ザァァアアア


「あかん!雨が降ってきおった!」


ワンワン!


「探偵さん、私はエディーを連れて戻りますね!」


「おう!頼むで!おっさんも作業切り上げな、風邪ひくで。」


「いや、俺はまだ戻れねぇ。このペンキを落とさねぇと。」


「アホなこと言うとる場合ちゃうで。この雨じゃ作業どころじゃーー。」


「これは俺の仕事だ!ここを明日のパーク開演までに完璧な状態にするのが、俺の仕事だ。」


「気持ちはわかるんやが、流石にレインコートくらい着らんとやなーー。あれ?なんや、おっさんレインコート持っとるんかいな?」


「…?」


 パーク探偵にそう言われ、足元を見ると塗装の道具と共にスタッフ用のレインコートが置かれていた。しかし、俺はこんなものを用意した覚えはない。塗装チームの奴が気を利かせてくれたのだろうか?ありがたく使わせてもらう。


「ま、レインコートもあるんならええわ。拘るのもええけど、適当なとこで切り上げんと体が持たへんで。ほなな〜。」


〜〜〜


「ペンキこぼしちゃったから、このくらいはね。」


 ユーは雨の中、溢れたペンキの後片付けをしているダイさんを眺めていた。ダイさんはユーがその辺にいたスタッフから拝借したレインコートを着ていた。そう、ユーはペンキを倒してしまった贖罪を兼ねて、レインコートをこっそり荷物の中に置いておいたのだった。


「あの男の子には悪いことしたけど、しょうがないんよね。恨むならあの犬を恨んでおくれよ。」


〜〜〜


ーーない!ない!!


「へ、へ、へっくしょーん!」


ーー今日雨予報だったから、荷物にレインコート入れておいたのに!!


 タテノくんは、ニンジャが隠れる場所潰しをするために夜のパークを見回っていた。少し奥まった場所を確認するために荷物を置いて行動していた一瞬の隙にレインコートを盗られてしまっていたのだ。


「酷いよ!雨が降ったからってレインコート盗るなんて!うぅ、寒いよぉ。」


ザァァアアア


ーー急いで戻らないと風邪ひいちゃう!


 タテノくんはびしょびしょになった服を纏い、急いで事務所へと戻るのだった。まさか自分のレインコートを奪った犯人が幽霊の仕業であるとは考えもしていなかったのだった。

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