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第11話 (11)サタデーナイトフィーバー

「以上で終了〜!改めて今日のチャンピオンの『かくめいぐん』に大きな拍手を〜!ではまた!」


 シャクレた男性の声で僕たちの初めての外部イベントは幕を閉じた。


「うーん、かっこよかったね」


「いやー、そうですね」


 僕たちはそう話しながら、どっとした疲れを感じていた。いくらダンスが好きと言っても、10組以上のダンスを続け様に見るとしんどかった…。それに中には顔がかっこいいだけで、ダンスはイマイチなグループもいた。


 僕とオラフさんは早くここを脱出して、ゆっくりとできる場所に行きたいと考えて、出口へと急いでいた。すると、それを引き止めるように後ろから僕らの肩を叩いてきた人がいた。


「今日は来てくれてありがとう!投票もしてくれたのにチャンピオンになれなかった。悔しいよ」


 そこにはココロさんが立っていた。ステージでのダンス衣装のままだった。


「お疲れ様です!ダンスすごいかっこよかったです!」


「ありがとう。カッピーが見てるから、乗っちゃったよ。加入の話だけど、」


「あ、すいません!加入はしないです!」


「あっえっそう?まぁ気が向いたら、声かけてくれよ。悩みとかも全然相談に乗るし」


 何とかドリームビリーバーへの加入を断るという今日のミッションを終えた僕は、少しの違和感を感じていた。


ーーなんかココロさんこの前よりテンション低いな


 先日の陽キャでござる!という態度とは一変して、何だか落ち着いた態度なのだ。何故だ。チャンピオンになれなかったのがそんなに悔しいのか?そんなにこのライブに賭けていたのか?そう思ってココロさんを見ると目が潤んでいるような気がする。やっぱり悔しいのか?


 僕はココロさんを慰めるために追撃のように「本当によかったですよ」と伝えた。すると、ココロさんは潤んだ目でこっちを見ながら「ありがとう」と絞り出すように熱く抱擁を交わして来た。汗ばんだ彼の体に少しの不快感を覚えたが、大丈夫だ。服なんて洗えばいい。今はステージを終えた彼を讃えることが重要である。


「じゃあ、俺は物販があるから行くね!今日はありがとう!じゃあ!」


 抱擁を終えるとケロッとした顔で、出口の方へと向かって行ってしまった。少しは元気を取り戻したのだろうか。


「いやぁ、お腹すいたねぇ。ご飯食べて帰ろうよ」


 そう話すオラフさんに、同意しつつ僕らは出口へと向かった。出口の近くには、長机が並べられて、先程までの出演者達が物販を行っていた。


「それにしても物販なんてあるんですね。何を売ってるんだろう」


「こういう外部イベントでありがちなのは、チェキやアクスタみたい。缶バッチやタオルを売ったりもしているらしいよ」


 なるほど。ダンサーの人たちはここでの物販も生計のひとつにしているんだなぁ。見回してみると、先ほどパフォーマンスをしていたダンサーの人達が各々のグッズを並べて、常連であろう女性たちと談笑をしていた。


 ここで一つ、疑問が湧いた。ココロさん率いるドリームビリーバーは何を売っているのか。視線をキョロキョロと動かしてココロさんを探す。するとまさに女性とチェキを撮っているココロさんが右端の方にいた。ちょっと見て来て良いですか、とオラフさんに了解をとり、ドリームビリーバーの物販をチラッと見てみた。


 そこには、チェキにアクリルスタンド、タオルにランダム缶バッチが売っていた。オラフさんの言っていた通りのオーソドックスな商品が並んでいた。何かあれば記念に買ってあげようとも思ったが、全部千円以上するのか。ちょっと高いな…。しかもチェキって千円もするのか。そんなことを思っていると、横から男性が話しかけて来た。


「君、ウルパーでダンサーしてるんだってね」


 声の主の方を見てみると、そこには先ほど司会をしていたシャクレた男性が立っていた。


「あ、そうです。バイトなんですけど今年やらせてもらっています」


「ははっ。かしこまらなくていいよ。実は僕も以前はパークでダンサーをしていたのさ」


「あっそうなんですね。もう辞められたんですか?」


「うん。人生ってものを考えた時に、ステージを一つ一つと上がっていかなくてはならないだろう?正に一つステージを上がるために辞める時だったんだよね。わかるかい?」


 その独特な話し方に圧倒されつつ、はいと返事をしていると、後ろからオラフさんが近づいてきてシャクレた男性に話しかけた。


「シャクレさん。お久しぶりですー!オラフです、覚えていますか?」


「もちろんだよ!オラフくん!君のことは忘れないよ!また大きくなったんじゃないか?」


「はい。あの時よりは二回りくらい大きくなってしまいました。えへへ」


ーーシャクレさん?!


 このシャクレたおじさん、シャクレさんと呼ばれているのか?そんなそのまま呼ぶことある??まさかハナさんがつけたあだ名じゃないだろうな、と僕は疑っていた。


「2人とも。僕は今、愛の爆弾ってユニットで活動してて。あ、リュウって動画クリエイター知ってるかい?彼と動画サイトでも活動しているんだよ。知らない?彼の個人チャンネルは登録者2万人超えなんだよ。すごいやつなんだ、彼は。彼と『愛の爆弾チャンネル』って言うのもやっててね。良かったらチャンネル登録してほしくてね。頼むよ。オリジナルの楽曲も載せてるから聴いてみてよ」


 シャクレさんが早口で営業トークを始めた。あまりの早口に呆気に取られていると、オラフさんの空腹が限界に近づいているらしく、ふらつきだしていた。これはやばい!と思った僕は最近作った曲の良さを語るシャクレさんを遮ることにした。ごめんなさい。シャクレさん。


「すいません!この後オラフさんの用事があるので!この辺で失礼させていただきます!」


「あ、そうか。申し訳ないね。君たちもダンサーなら、イベントに出たかったら連絡してよ。調整するから。これも何かの縁だから。よろしくね」


 はい、失礼します。と言って、オラフさんと僕はその場を後にした。またねー、と言ってココロさんも手を振っていた。それにしてもココロさんはずっとチェキを撮り続けていたな。人気なんだなぁ、と思っていた。


 その後、オラフさんとチェーン店のカレー屋さんに入り、一緒にカレーを食べて帰った。

オラフさんはライスの量をMAX頼んでトッピングもカツやらソーセージやらを載せに載せて、何の苦もなくペロリと平らげていた。そんなにお腹減ってたんですね。シャクレさん、次にオラフさんと会う時はまた一回り大きくなってそうです。食後にタピオカを飲むオラフさんを見ながらそんなことを考えていた。

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ここまで読んで頂いて本当に嬉しいです。

このキャラのエピソードもっと読みたいなどあれば、コメントで教えて頂きたいです!

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