第104話 (92)忍者ロック-2
『ま、良いけどね〜。』
『最近また良い隠れ場所見つけたから』
『セキュリティガバガバで笑っちゃうwマジでw』
『チケ代浮いたからヨシとしよう』
『忍び込んで、混ざっちゃえば絶対バレないからww』
ビッグボスは一連の投稿を見せてくれた。そして、そのアカウント名は“裏ニンジャ”という名前だった。ニンジャさん、裏アカの名前わかりやすすぎるよ。これなら、少し頑張れば見つけられるかもしれない。何が探し方は企業秘密だよ。
「ね?侵入する気満々でしょ?」
確かに投稿内容を見るとオールナイトに忍び込むことを仄めかす内容に感じる。しかし、絶妙に確信的なことは言っていない。それぞれの投稿に関連性がないと言い張られたら、それまでである。
「でも、この投稿だけじゃ注意してもしらばっくられたらお終いですよ?」
「そう、だから事前に注意はしないわ。証拠もないし。」
注意はしない?ではどうするのだろう。当日現行犯で捕まえるのだろうか?
「そうね〜。現行犯で捕まえられたら良いんだけど。それはそれで問題になっちゃうじゃない?」
「まぁ問題のある人ですから、問題にしてしまえばいいと思うんですけど…。」
「私も鬼じゃないから、犯罪者を生みたくはないのよ。この人も腐ってもパークのファンなわけじゃない?」
「まぁ確かに。本当に腐ってはいますけどね。」
「だから、この人が問題を起こせないようにするのよ!」
「はい?それはどういう…。」
事態を飲み込めていない私にビッグボスは作戦を話すのだった。彼女がいうには、ニンジャさんは隠れる場所があるから隠れてしまうのだという。だから、事前にニンジャさんが隠れられそうな場所を虱潰しに探して行き、隠れられないようにしていくという作戦だそうだ。
「え?虱潰しにって、パークの中全部ですか?」
「そうよ。」
「え?それをビッグボス1人でやるということですか?」
「いやいや。1人じゃ無理に決まってるじゃない。」
「…。あー、タテノくんとやる感じですかね?頑張ってください!じゃあ、私はこれで!!」
「待ちなさい!逃げようってったってそうはいかないわよ。」
嫌な予感がした私はビッグボスの元からの逃走を図ったが、肩をガシッと掴まれてしまった。ゲームならば、「しかし、逃げられない!」という吹き出しが私の下に表示されていることだろう。
「まさか、これから毎日その場所を探していくってことですか?」
「勿論時間がないのはわかってるわ。だから、仕事中にちょっと周りを見てみて確認するだけでもやって欲しいの。あそこ隠れられそうだなとか。忍者の気持ちになってね。」
忍者の気持ちになる?大真面目に何を言ってるんだ、この人は。とても大人の仕事中の会話とは思えず、堪えられず笑ってしまった。
「あはは。忍者の気持ちになって、ですね。わかりました。タテノくんにも言っておきますね。」
「いや、タテノにはもう…。」
ガチャン!
「ビッグボス!隠れられそうな場所地図にマークしてきました!意外と沢山ありますねぇ!こことこことあとここも!ここも小柄な人なら隠れられちゃうんじゃないかと思うんですよねー!あとは…。」
沢山の書き込みとマークがされた地図を持って、意気揚々と部屋に入ってくるタテノくん。嬉々として報告する様は、よく躾けられた犬がブーメランを取って帰ってくるのによく似ていた。
ーー男の子ってこういうところで謎にやる気出すよなぁ。
そんなことを思いながら話し合うビッグボスとタテノくんを眺めていた。
〜〜〜
ーーなによこれ!
オールナイトの下見を兼ねて、パークにやってきたニンジャさん。彼女を待ち受けていたのは、隠れようとしていた場所が尽く封鎖されているという現実だった。
ーーここもダメ。ここもここも。
彼女はパークをくまなく歩いて回った。しかし、ニンジャさんが隠れスポットとしてマークしていた箇所は全て隠れられないように対策されてしまっていた。
ーーやるわね。
どうやらよっぽどの有能な人がスタッフに加わったみたいね。でも、甘いわ。私がどれだけのイベントに侵入してきたと思ってるの?隠れる場所をゼロにすることは不可能。見てなさい。
ぽん!
『ニンジャさん!オールナイトのチケット取れてないって聞きました!友達が予定合わなくなったので、チケット一枚余るのですが、良かったらどうですか?』
馴染みのオタク仲間から、チケットを譲ってくれるとの連絡がSNSで来る。オタクの繋がりはありがたい。当然返事はこうだ。
『そうなんですね!ありがとうございます!私、他の方からチケット譲ってもらえることになったので、大丈夫ですよ!当日、楽しみましょうね!』
勿論チケットは手に入っていない。では、なぜこんなことを言うのか。この隠れ場所の封鎖。これは私への挑戦状である。臨むところだ。もう私はこのオールナイトイベントに一銭たりとも払うつもりはない。そもそも年間パスの料金を払っているのだから、払う必要はないのだ。何としても当日隠れ切って、無料でオールナイトイベントを楽しんでやる。
「あはは!あはははは!!」
好敵手との出会いに笑いが止まらない。とっておきの隠れ場所を探して、隠れ切ってやるからな。これは私と運営の勝負だ。
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