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第102話 (90)Letter-2

 ファンレターの送り主はカルーアさんだった。それはそうである。関係者以外で僕が囚人ゾンビからリトルナイトベアーになったことを知っているのは、僕が直接話したカルーアさんだけである。


「カルーア…。なるほど、カルーアねぇ。」


「ハナさん、知っているんですか?」


「まぁ、有名なオタクだからね。前はりゅうじん君の熱狂的な追っかけだったんだにゃ〜。」


 そうだったのか。確かにゾンビナイト開始当初はあまり見かけなかった。僕の方に来るまでは、りゅうじんさんの方に行っていたのか。でも、なんでりゅうじんさんから僕のファンになってくれたんだろう。


「それはカルーアは炎上とか色々あったのさ。まぁ、そんなことはどうでも良くて。問題はこいつが何でカッピーがリトルナイトベアーやってるって知ってるかって話だよ。」


「あ、ああ。それは…。」


「なんだカッピー?心当たりあるのかい?」


「心当たりも何も…。僕が会った時に話したからですよ。」


「はぁ?!会って話したぁ?!」


 僕はハナさんにカルーアさんとのことを話した。たまたまベイサイドエリアで休んでいる時に会ったこと。そこでミルクがなくて困っている彼女を助けたこと。その少し後に偶然にも再会したこと。僕がストリートからいなくなって不安がってた彼女に事情を説明したこと。


「はぁ〜。なるほどねぇ。カッピーらしいと言えばらしいかぁ〜。」


 ハナさんは手を額に当てて、やれやれといったポーズをとっている。あれ?僕何かまずいことやっちゃいましたか?


「まずいも何も、あんまりファンとは話さない方が良い。ストーカーに発展する可能性もあるし。パークの内情を話すのも良くはないし。」


「ス、ストーカーって大袈裟な…。そんな人には見えなかったですよ?パークの内情って言ってもリトルナイトベアーになったこと話したくらいだし…。」


「いや!カルーアは間違いなく、“ガチ恋勢”だ!私の第六感がそう言っている!今に出勤退勤の時に待ち伏せされ始めるだろうね!もしくはもう遠巻きに見られているか…。」


「そんな!いくらなんでも酷いですよ!証拠もないのに!」


「まぁ、とにかく忠告はしたよ。ファンレターに連絡先が書いてても連絡するなよ。ファン喰いのカッピーって噂が広がらないように気をつけることだね。」


「話が発展しすぎですよ!まだファンレターが一通来ただけの話なのに!」


「2人してなんの話で盛り上がってるの?」


 ハナさんとの会話に夢中でオラフさんが休憩室に入ってきていることに気が付かなかった。オラフさんは不思議そうな顔で僕らを見ている。


「オラフさん!実は…。」


「カッピーがファンを喰おうとしてたから注意したんだ!」


「ハナさん!!違うんです、オラフさん。誤解です!」


「な、なになに?一体何の話なの??」


「僕が初めてファンレターを貰ったってだけの話ですよ!」


「えー!そうなんだぁ!良かったねぇ。最近カッピーの人気すごかったもんねぇ。」


 オラフさんは僕がファンレターを貰ったことを心の底から喜んでくれている様子だった。やっぱりオラフさんは良い人だ。


「実は僕もさっきビッグボスからファンレターが来てるって渡してもらったんだ〜。いつになっても嬉しいものだよね〜。」


 そう言ってオラフさんは、ファンレターを机の上にどさっと出して見せた。思ったより沢山あって驚く。ざっと10通ほどはあるのだろうか。


「めちゃくちゃ貰ってるじゃないですか!すごい!」


「オラフっちは幅広い層に人気だからねぇ。」


 オラフさんが人気なことを、自分のことのように自慢げにしているハナさん。どう言う立場のつもりなんですか?オラフさんの師匠面ですか?


「そうそう。カッピーやりゅうじん君と違って、僕は子どもだったり、僕と同じような人が送ってくれるのが多いんだよね。」


「オラフさんと同じような?」


「うん。身体が大きいのがコンプレックスだって人が、僕がゾンビで踊ってるの見て背中押してもらったとか言ってくれるんだよね。そう言うのがなんかすごく嬉しくて、ダンサーやってて良かったと思うよ。」


 照れくさそうに話すオラフさん。なんて素敵な話なんだろう。確かにオラフさんは巨大な身体とは思えないほど、ダンスの際は俊敏に動いてかっこいい。なんというか目を引くダンスなのだ。あれは唯一無二で、僕には真似できない。きっと他の誰にも真似できないだろう。


「僕もオラフさんみたいに、誰かの背中を押せるように頑張ります!」


「そんな立派なもんじゃないよ!きっと、カッピーだってもう誰かの背中を押してると思うけどな。」


「え〜?そうですかね〜?」


 そう話しているとハナさんとオラフさんはメイクのために休憩室から出て行ってしまった。僕は再び1人で休憩室に残されていた。カルーアさんからもらったファンレターを眺めながら、先ほどハナさんに言われた言葉を思い出す。ガチ恋勢、なのだろうか。もしそうならば、はっきりと断らなければいけない。ハナさんの言う通り、ファンとそう言う関係になるのは良くないと僕も思う。


 便箋を封筒にしまおうとすると、小さな紙がピラっと床に落ちた。写真と便箋以外にも何か入っていたのか?落ちてしまった紙を拾い上げるとそこにはこんなことが書いてあった。


『これ私の連絡先です。連絡待ってます(>_<)』


 その一文がカルーアさんの連絡先と思われるIDに添えられていた。カルーアさん、これどう言う意味ですか?ガチ恋じゃないですよね?変な意味じゃないですよね?僕はその紙をそっと封筒の中に戻したのであった。

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