第101話 (89)Letter-1
「えへへ〜。」
「何アホ面してんのさ、カッピー。リトルナイトベアーのやり過ぎで、頭までリトルになっちゃったのかい?」
「…。」
喜んでいる僕にハナさんが水をさしてくる。まるでツッコむ気も起きないのは、こうした行動に慣れてしまったからなのか。心の中ではツッコんでおく。誰の頭がリトルだよ!!
「これ見てくださいよ〜。これ!」
「何だい?これ?手紙?」
〜〜〜
遡ること小一時間前。1人休憩室で休んでいると、部屋にビッグボスが入ってきた。休憩室に2人きりと言うことで、勝手に緊張感を感じていると、いつも通りのビッグボスが僕に向かって、「ほれ」と言いながら手紙を渡してきたのだった。
「なんですか?これ?手紙?」
「そう、手紙。まぁ見ればわかるよ。」
ビッグボスから僕に手紙?なんだろう。もしかして、『アレ』が原因でいよいよ退職通知が来たのかと勘繰る。しかし、それにしてはカジュアルな封筒である。表書きには、“カッピーさんへ”と可愛らしい字体で書いてある。不思議に思って、渡された手紙を裏返してみると、ハートのシールで封がしてあった。
ーーえ?!まさかラブレター?!
なんと言うことだ。ビッグボスは僕に気があったのか。しかし、同じ職場の上司と部下で恋愛など許されるのだろうか。しかし、もしビッグボスと付き合ったら、僕は完全に尻に敷かれそうである。絵に描いたような姉さん女房になりそうだ。しかし、それも良いのかもしれない。そもほも僕からリードするタイプじゃないから、引っ張っていってくれる人の方が合うのかもしれない。どうしよう。返事は待ってくれるのだろうか。
「…。なんか勘違いしてたら腹立つから一応言っておくけど、それ私からじゃないからね?」
「あっえっ?!な、なんだぁ!そうなんですね?何ですか?これ?」
「パークの中にある窓口にファンレターボックスってのがあってね。そこに時々ファンレターが届くのよ。昨日カッピー宛のがあったから持ってきたってだけ。」
「ぼ、僕にファンレター?!」
「カッピー、ファンレター貰うの初めてなんだっけ?」
「は、初めてですよ!嬉しいなぁ。」
この手紙がビッグボスからの好意の証ではないことに、ホッとするようなガッカリするような複雑な気分をそっと胸の奥底に仕舞って、僕はファンレターがきた喜びに浸っていた。でも一体誰からなんだろう。
〜〜〜
「そう!ファンレターです!初めてファンレター貰ったんですよ!」
「ふーん。カッピーにファンレターねぇ。」
ビッグボスは僕にファンレターを渡すと、すぐに休憩室から出て行ってしまった。その後すぐにハナさんが入ってきて今に至る。
「で、開けないの?」
「あ、開けますよ!初めてのファンレターの嬉しさに少しは浸らせてくださいよ!」
「そうだねぇ。なんて言ったって、カッピーにとっては最初で最後のファンレターになるんだもんねぇ。」
「ハナさん!嫌なこと言わないでください!そうならないように頑張りますから!」
封を開けると、便箋と数枚の写真が入っていた。僕が囚人ゾンビをしていた頃の写真から最近のリトルナイトベアーの写真まで色んな角度から撮った写真が入っていた。
「うわぁ。綺麗によく撮れてるなぁ。プロに撮ってもらったみたいだ。」
写真を一枚一枚眺めていると、何だか感慨深くなってくる。あまり時間が経ってないように感じるが、こうして写真を見ると色んなことがあったと思い出す。一ヶ月前からすると、まさか今リトルナイトベアーの着ぐるみに入ることになっているとは夢にも思わなかったな。
「…。」
「ハナさん黙って眺めてどうしたんですか?そんなに羨ましいですか?」
「んなっ!羨ましくなんかないわ!私だってファンレターくらいカッピーの何倍も貰ってるわ!」
確かにハナさんのファンは結構いるので、かなりの数ファンレターを貰っていそうではある。しかし、ならば何でそんなに眺めていたんだろう。
「いや、何でこのファンレター出した子はカッピーが今リトルナイトベアーやってるって分かったんだろうと思ってね。不思議だったのさ。」
ーー確かに。
ハナさんに言われてハッとする。確かにそれを知っているのは、僕の思い当たる限り1人しかいない。もしやと思い、便箋を開いて見てみる。そこには、応援のメッセージや僕のダンスのここが良いとか日々の支えになっていることへの感謝など嬉しい言葉がつらつらと書かれていた。そして、その末尾には差出人の名前が書いてあった。
『カルーアより』
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