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076 - 汐見宅で(1)


 汐見の家に到着すると、1時半を過ぎた頃だった。

 刑事たちの到着まであと30分程度ある。


(今日は……大丈夫だな……)


 昨日来た時に感じた嫌な感覚はなく、フラッシュバックが起こる気配もなかった。

 汐見は安心してリビングにあるコンパクトなソファに座り、ふーっと息を吐き出す。


「疲れたか?」

「いや……疲れたというか……」

「?」


 佐藤は汐見の様子を伺いながら、持っていたノートパソコンを食卓に置き、改めて汐見家をぐるりと眺める。

 佐藤宅と異なり、汐見の家のリビングは広さはあるものの、モノが極限まで存在せずソファの前には40インチテレビが置かれているだけだ。

 食卓は6人掛けくらい大きめなのに、なぜか広いリビングにこじんまりとしたソファだけが置かれていて、ローテーブルもなければソファも少し硬めだった。


(長居し辛いんだよな、この家……)


 友人である佐藤にすら、そう思われる雰囲気だった。

 ちり一つ落ちてない空間リビング

 ソファの下にかろうじて敷かれているラグだけが少し温かみのある色をしているだけで、それ以外には


(殺風景で……2人も住んでるはずなのに人の気配がしないっていうか……)


 今日日(きょうび)、ドラマでも見かけないくらい物が無い。


「悪い、佐藤、そのテーブルにあるテレビのリモコン取ってくれるか?」

「あ、あぁ」


 そう言われた佐藤がテーブルの上にあるリモコンを取って、汐見に渡す。

 佐藤が汐見宅で違和感を感じるのは今に始まったことじゃない。だが、その違和感はおそらく住んでいる夫婦2人が醸し出す空気そのものだった。


「サンキュ」

「……」


 リモコンを受け取った汐見がテレビをつけるとニュース番組が流れ始めた。お昼のバラエティー番組の合間に挟まれているニュース速報。


 それを眺めながら佐藤は思った。


(身内の傷害事件って割と多いって聞くのに……ニュースに取り上げられないだけなのか……)


 ぼんやりとテレビを眺めていた汐見が、ふと突っ立ったままの佐藤に気づいて声をかける。


「お前も座れよ。お前のソファほど大きくないけどさ」

「あ、うん……いや、俺はこっちでいい」


 そう言って、佐藤は食卓の椅子を引いてテレビの方を向くことにした。


(いや、そのソファ、狭いから無理だって……)


 佐藤宅のリビングにあるソファは余裕のある3人掛けで、173センチの汐見が寝そべってもまだ少し余裕があるくらいなので、2人で座ってもかなり距離的に間隔が空く。

 だが、汐見宅のソファは2人掛けで、2人で座ると接触するくらい近くなってしまう。

 その空間の余裕の無さはきっと佐藤の心理にも余裕を失わせてしまうのがわかる。


 つい先ほど商店街で感じていた佐藤の葛藤を汐見は知らない。

 知らないからこそ気軽に自分との距離を考えないで発言するのだということもわかっている。

 だからこそ────


(……俺の気持ちに気づいていないお前に……今は、まだ……)


 そう考えながら2人でテレビを数分くらい眺めていると佐藤が聞いてきた。


「そういえば……渡すデータの方は準備できたのか?」

「ああ、昨日でUSBにコピーしといた」

「スマホでコンバートしたやつも?」

「一旦クラウドにUPしてからPCから取り出してUSBにコピーしといたよ」

「そうか……」

「まぁ……全部は確認してないけど……データ容量は変わってなかったから大丈夫だろ」

「……ぁあ」


 あの動画をもう一度最初から再生して確認しろと言われても断固として断りたいのが本音だ。もう二度と観たくない映像だった。


 佐藤が汐見に確認する。


「刑事さんたちは2時、だったよな?」

「……少し話したいから時間くれって言ってたんだろう?」

「そういえばそういうこと言ってたな。なんだろう?」

「……米山って刑事が心配してたって……」

「……言ってたな。原口先生が……」


 佐藤も汐見も妙な胸騒ぎを感じるが、でも実際にその米山刑事と会って話してみないとわからないだろう、とその話はそこで終了し


 ピンポーン


 ちょうど2時きっかりに汐見家のインターホンが鳴った。





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君知るや〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜



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