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069 - 佐藤宅で2人(4)


「ハンドマッサージ……オレやったことないけど……」

「やってみると結構良くてさ。こないだやってもらった時にもらった残りのやつがあるから、ちょっと待ってろよ」


 佐藤はそう言い残すと、汐見をリビングに残したままあの部屋に向かった。


 汐見と出会ってからの佐藤は、秘蔵オタクグッズが目に見えて減っていった。

 目の前にリアル最推しがいるのに他のことに金と時間を費やしてられなかった。そのおかげもあって、汐見の隠し撮り写真だけが増えていった。


 もう数えることすらしていないが【ロール壁面】で隠しきれないくらいの数に写真が増えてしまってからは、大判の写真は机の鍵付きの引き出しに入れ、見やすいサイズのものと小さいやつをコラージュっぽく大量に貼り出していた。遠目で見たら一瞬何かの模様かと思うくらいだ。


(とりあえず、汐見がいる間は、鍵掛てあまりこの部屋に出入りしないようにしよう)


 佐藤はそう決意すると、先月行ったアロママッサージ店でもらったハンドマッサージ用のオイルを探した。


(確か、この辺に……)


 左袖机の引き出し2段目に入れていたはず、と思って探す。


「あった。これだ」


 オイルでマッサージした後でもすぐにサラっとした感触になって、お気に入りになった一品で、こればかりリピートしている。


 その小さい小瓶を手に持ったまま佐藤がリビングに戻ると、そこには。

 外したメガネを無造作にローテーブルに置き、でかいソファにそのままうつ伏せて寝そべっている汐見がいた。


 リビングに佐藤がいないと、汐見は時々こうやってソファにうつ伏せて寝そべる。だが、家主が戻ってくる足音を聞くと慌てて起き上がり、何事もなかったかのように振る舞う。

 人の家のソファに寝そべるのは汐見的には行儀が悪い、と思っているんだろう。

 粗野な印象のする汐見の育ちの良さが見え、それ以上にその行動がおかしいくらい可愛くて。

 佐藤は寝そべってソファを堪能している汐見を邪魔しないように少し鑑賞して一拍置いた後、わざと足音を立ててリビングに戻るのが日常化していた。


(はー……かわいぃ……うつ伏せてるとその尻の盛り上がり具合が一段とヤバい……)


 筋トレを日常的にやってると姿勢が良くなるものだが、汐見は背筋から腰、腰から臀部にかけてS字を描くカーブが──主に尻の天頂部分が──通常の男より上向きである。だから、異様にエロく感じるのだ。

 佐藤が最初に見た時の衝撃も凄かったが、もう今やその尻を生で見たくて触りたくて揉みたくてどうしようもない。


(……昨日で色々済ませといてよかったよな、俺……)


 抜いてない状態でこんなに無防備な汐見がいたら、理性が飛んでその臀部めがけて襲い掛かっていただろう、と佐藤は思った。

 とりあえず、視線で十分にその尻を堪能した後、いつものように足音を立てて戻ろうとした佐藤が、ふと思い直して忍び足でソファの裏まで移動した。


 至近距離で確認するとソファの背もたれ越しからは後頭部が見えた。

 右手だけソファからだらしなく肩先から落ちた状態で静かな呼吸が聞こえてくる。時計をみると、まだ8時前。


「お~い、寝る前に風呂入らないのか~?」


 小声で話しかけても反応がない。完全に寝入った寝息ではない。

 起こしたら起きると思うが、どうしたものかと思った佐藤は


(まぁ、口実もできたから大丈夫だろ)


 ソファの前に回り込んで汐見を確認した。

 右側を向いてうとうとしている汐見の寝顔を堪能しながら、その右手を手にとった。

 ちなみに至近距離から汐見の尻を直視してはならない、ということを佐藤は自分自身に試練として課している。その視覚情報は確実に佐藤の股間を直撃するからだ。


(相変わらず体温高いなぁ……)


 佐藤も体温が低い訳ではないが、汐見の体温に触れると、もっと触れていたい、と思うほど安心する。

 ワンプッシュしてトロ味のあるオイルを自分の手に馴染ませた後、汐見の右手を取ってゆるゆるとマッサージを施す。


「んん……」


(っ! なんだその声! た、立つだろ!)


 気を紛らわせるように声をかけた。


「汐見? 寝るのか? 風呂は?」


 問いかけてる間もゆるゆるマッサージをしてやると、汐見が目を薄く開け、口元が緩んだとろりとした表情をする。


「……それ、気持ちぃいな……」


(ぅぉお! お、おっまえ! このっ!)


 そんなこと言われた佐藤は若干のヤバさを感じていた。主に股間から。


「だ、だろ? このオイル、鎮痛効果もあるんだと。点滴の箇所はまずいと思うから、そこは避けて肩までやるか?」

「……いいのか?」


(いちいち股間に来る……この姿勢なら多分見えないと思うけど……)


 佐藤は、すでに甘く立ち上がってる自身──の息子──が汐見から見えないように隠す。


(もぞもぞしてる汐見の尻がゆるゆる動くのはさらにエロ……、ん?)


「汐見?お前、尻ポケットに何か入れてるのか?」

「?」

「何か入ってるぞ、なんだ……?」


 佐藤はテーブルにあるティッシュでオイルを拭き取ると、恐る恐るその禁断の尻に触ってしまわないよう、ポケットから少しだけ顔を覗かせている何かを取り出そうとした。すると汐見が


「あっ!」

「な、なんだ?!」


(尻には触ってないぞ?!)


 大きな声を出したため、ビビった佐藤がその手を引っ込めた。


「そうだ! 忘れてた!」


 汐見はオイルが着いたままの右手を尻ポケットに回してそれを取り出した。


「これ! この人に連絡しないと!」

「へ?」


 どこぞの印籠のように見せられたそれは一枚の名刺。その中央部には


【弁護士 池宮 秋彦】という名前が印字されていた───






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▼ 他 掲載作品 ▼

君知るや〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜



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