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042 - 事情聴取(5)


 汐見以外の3人はこの時ようやく汐見が落ち着いている理由がわかった。


(……〈春風〉、君は……)


 その時、でっぷり刑事が左の内ポケットから何かを取り出し

 ピッ、ガガッ! と音を立てた。

 ──警察無線用のマイクだ。


「あ~、○○署捜査二課の米山です。本部、応答願います」


 ピッ! ガ~ッ! ガガッ!


『こちら本部。どうぞ』

「○○署○×△号事件の件でT病院にいます。23日(木)夜の傷害事件で任意の事情聴取にてマルヒとマルガイを確認中。マルヒは頭部外傷の女、マルガイは刺された男の方で確定しました。本部に報告願います」

『了解しました。他には?』

「マルヒにマルセイの疑いあり。そのまま聴取続行します」

『了解です! ~~~~~~東部○○号線辺りでトラック車両の大規模事故発生中、近隣にいる~~~』


 警察無線の向こうからは他の無線連絡が入っているのかこちらにも少し内容が漏れ聞こえてくる。

 マルヒは被疑者、マルガイは被害者、マルセイとは精神障害者のことを称する警察用語だ。


「すまんね、中断させて。一応、仕事なんでね。本部も暇じゃないから事件の結論が出たら即ホウレンソウなんだ」

「いえ……」

「……とりあえず、撤収は全部聞いてから……ですよね、ヨネさん」

「そうだなぁ……帰ったら調書作り、メンドそうだなぁ」


 ヨネさんと呼ばれたでっぷり刑事・米山の、うんざりという表情が見てとれた。


「……この後は、あんたが救急車を待ってるだけかい?」


 今流れている映像は、汐見が紗妃の頭部を押さえているシーンだ。


「ええ、そうです……」

「この間、奥さんに何か変化は?」

「ありません。このまま救急の方が来るまで待って、担架が運び込まれて……」

「そこまで少し早送り再生してもらえるかね?」

「わかりました」


 そう言われて、その場面までを2倍速再生する。


 一瞬、紗妃の元から離れた汐見がリビングの壁にあるインターホンに向かって何か言っている。

 その後、汐見がリビングから消える。すぐに戻ってきて紗妃の頭を押さえている汐見。

 程なくして、救急隊員らしき人物2人が担架を持ってリビングに入ってくる。

 紗妃の隣に担架がおかれ、様子を確認して3人がかりでそっと紗妃が担架に乗せられると全員リビングから消えた。

 と思ったら、汐見が腹を押さえた顔色の悪い状態で、自分と紗妃のスマホを持ち、自分のカバンから財布を抜き出してまた出て行った。


(……めちゃくちゃ痛いはずなのに……冷静すぎるだろ、汐見……)


 そう思いながら佐藤はその画面を眺めていたが、行動の端々に汐見らしさを見て、感情に混沌を感じた。


「……これで全部、です……」

「……です、な……」


 は~~~っと、汐見以外が、三者三様のため息を吐き出した。


「……まぁ、なんでしょう……まさか被害者から映像の提供があるとは思ってなかったので……」

「……そう、ですよね……」

「この映像は調書の資料としてお預かりしたいのですが、可能ですか?」


 でかい男が言うと、汐見は頷いた。


「データは自宅PCの方が鮮明なんですが、その方が?」

「そうですね。……退院はいつですか?」


 大男が確認する。

 汐見は担当医師に言われた通り


「順調にいけば、月曜日には」

「早いですな?!」

「はい。かなり回復が早いと医者にも驚かれました」


 自身の回復状況を話す。

 その話には佐藤も若干驚いた。


「では、火曜日にご自宅に伺っても?」

「わかりました。USBにコピーしておきます」

「助かります」


 大男と汐見が2人でやりとりしているのを眺めている佐藤が、ふと、少し気落ちしている気がして汐見に声をかけた。


「汐見? 大丈夫か?」

「あ? あ、ああ……」

「さて、じゃあ、とりあえず、残ってる、奥さんの音声の方を確認しましょうか」

「……はい」

「まだ汐見さんも確認していないんでしたな?」

「……えぇ……」

「「「??」」」


 映像を見せている時はそれほど気にも止めず冷静に対応していた汐見が、刑事にもわかるほど明らかに様子がおかしかった。


(挙動不審……とまでは行かないが、なんか、変? だよな?)






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君知るや〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜



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