表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/211

021 - 病院にて(3)


「ちょっと先生呼んできますね! 9時前になるとあの人捕まんないんで!」

「あ、はい」


 本当に慌ただしい看護師さんだ。まぁ、元気なのはいいことだと思う。


 だが、数分後に『やなせ』くんが連れて来た先生は、ひょろひょろと細長く青白い顔を長い前髪でゆらゆらさせて、オレよりも寝不足っぽく今にもぶっ倒れそうな、オレと同年代くらいの男性の医者だった。


「先生! はい! 昨日の急患! えっと……『汐見』さん!」

 やなせくんは、オレの患者名プレートを確認しつつ、先生に紹介した。


「あー、……? ……昨日って……」

「急患の! 脇腹の!」

「……あぁ~。あの2人か……」

「先生! しっかりして! 昨夜、急患多くて寝てないの知ってるけど!」

「声大きいよ、やなせくん……」


 のっそりとした動きをする先生の横で小刻みに動くやなせくんは身長差も相まってリスのようで、面白いコンビ芸を見ているようだった。


「バイタルはオールオッケーでした!」

「うん……えー、『汐見潮さん』ですね?」

「はい」

「念の為……生年月日を西暦でお願いします」

「はい。1988年7月10日です」

「他も確認しますので、上着、広げてもらえますか?」


 そう言って、さっきやなせくんが座っていたスツールに座ると、聴診器を耳にかけて構える。

 オレはいつの間にか着替えられている病院服にようやく気づいて、合わせを解いた。


「大きく息を吸って……」


 医者の男性が、聴診器を心臓に当て、指示を出したので

 す~~~~っっっ!!!


「吐いて……」


 は~~~~~!!! と大袈裟に呼吸した。


「うん……大丈夫そうだね」


 聴診器を耳から外しながら、今度は瞳孔のチェック。喉のチェック。脈のチェック。

 看護師のやなせくんの手元の紙を見て、うんと一つうなづいた。


「裂傷の大きさから推測すると……ハサミ?ですかね?」

「はい……」

「運が良かったです。内臓と動脈を傷つけていなかったので」

「そうなんですか……」

「よく使われてたモノだったんですか?」

「え?」

「凶器が鈍いものだと刺し傷はかなり危ないんですよ」

「……僕がいつも使ってるハサミで……先が割と尖ってて、よく切れる良いものです……」

「そうなんですね。裂傷としては切れ口が小さく、凶器の切れ味がよく切先が鋭かった、そしてさほど長くなかったのが幸いしたんだと思います。傷内部の周辺にもあまり損傷がないので」


 そういうと、顔を見えにくくしている前髪を揺らして先生がにっこり笑った。

 笑うとちょっと男前度が上がるようだ。


「今日は金曜日ですし……土日お休みのお仕事ですか?」

「はい」

「じゃあ、日曜まで入院してもらって、傷が開かないようであれば、月曜日には退院できると思います」

「え? そんなに早く?」

「ええ。まぁ、でも今日1日はゆっくり休まれてください。こちらでも連絡しないといけないところがありますが、まだ早いでしょうし」

「?」


 連絡? 誰に? と聞くよりも早く


「救急隊員から警察に通報されてます。昨夜、汐見さんの処置中に警察から問い合わせが来てました」

「!!!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読みいただきありがとうございます。
今後とも応援いただけますと大変励みになります。

─────────────────────────

◆人物紹介リンク(1)

▶ 登場人物紹介・イラストあり(1)◀


─────────────────────────

◆人物紹介リンク(2)
▶︎▶︎前半部未読の方はご注意ください◀◀

▶︎ [7章開始前 ] 登場人物紹介(2)◀


─────────────────────────

▼ 他 掲載作品 ▼

君知るや〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ