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147 - 覚醒(4)


  ◇◇



 のっそり起き出したオレは、今日の予定を確認しようとベッドを降りた。

 寝室の時計を見ると、9時を回っている。


(昨日はそのままベッドに倒れ込んだからな……)


 ベタついた自分の体にようやく気づき、起き抜けから涙を流してまぶたが重くなった顔を確認しに洗面所に行った。


「あー……れてる……」


 佐藤と違ってオレはあまり泣くことはないが、泣くと瞼が腫れて見るに耐えなくなるから泣きたくないという自制心の賜物たまものでもある。

 ただでさえ怖がられる一重の目なのに、さらに目つきが悪くなるからだ。


「はぁ……風呂、入るか」


 洗面所を一旦出て、風呂場に行く。


 このマンションでは洗面所はトイレと一体化していて、風呂場と別だ。風呂から上がった時、洗面所にいるオレとかち合いたくないという紗妃の希望があって、そういう間取りを選んだ。

 オレは、リビングに行くと、コップ一杯の水を飲み、それから寝室に戻って着替えを取るとそのまま風呂に直行した。

 30分もしないうちに風呂から上がると、リビングに行ってテレビを付ける。


『金曜日の朝のエンタメです! 今日の運勢の1位は! さそり座のあなたです!』


(さそり座……たしか、佐藤の誕生日が11月17日だったから、さそり座で……)


 無意識に佐藤のことを考えて、そういえば。と、占いを本格的にやっている同じ部署の女性部下が、1年ほど前に興味深いことを言っていたのを思い出した。




『すごい!! 汐見先輩と佐藤さん! めちゃくちゃ相性いいんです!』


 やや興奮気味に言われて、何事かと聞いてみると


『汐見先輩は7月10日生まれのかに座で、佐藤さんは11月17日生まれのさそり座なんですよね?!』

『? そうだけど?』

『やっぱりそういうのってあるんですね~!』

『は? 何が?』

『汐見先輩と佐藤さんは()()()()()()なんですよ!! だからあんなに仲が良いんです!!』

『??』


 その時は知らなかったオレがネットで調べてみると、ソウルメイトとは【魂の伴侶】のことらしかった。

 ついでだから紗妃の誕生日(10月20日)との相性を調べてみると


『ライバルって……なんのだよ……』


 相性が悪いだの、ライバルだの、夫婦としては良くない不吉な言葉が並んでいてさすがに凹んだ。




(あの時は一瞬で、その後、何も考えなかったけど……今になって思うと……)


 そういうこともあったのかもしれないな、と少し感慨深かった。


「佐藤とのこと、は……」


 どうすべきか悩む。

 ようやく自分の中にある固定観念の元を確認することができた。

 もうそれには惑わされない。


 だが、この先、どうしよう、というのはあまり考えてはいない。


(ただ……佐藤が、オレをそういう意味で好きって……)


 そのことを考えると、自分も、佐藤に対してどういう感情を持っているのか、ちゃんと把握する必要があるだろうと思っている。


(それに……もし、断ることになるなら……)


 もう二度と佐藤には接触しない方がいいだろうとも。

 そこまで考えて、オレは憂鬱になった。


(佐藤と……この先、どうするか……)


 オレにとって、佐藤との関係は()()()()()()()()()()


 さ今の関係が居心地がいいと感じるくらいには()()()()()()()()()()()()()を自覚している。


 ただ、佐藤がその先の関係を望んでいることを知ってしまった。


(ずっと片想いって……諦めきれないって……()()()()()()、だろう)


 考えたことがなかっただけに、その事実に面食らっている。


(……あれは、なぁ……)


 オレの半裸写真形に隠し撮りした上半身裸の写真を大量に秘蔵しているくらいだ。


 口に出して言うことははばかられるが、きっとオレ相手にそういう──()()として──欲望を感じているのだろう。

 

(昨夜は、後ろから抱きしめ、られ…………)


 今更ながら、思い出した。一瞬の出来事ではあったが──


 そういう感情がない同性の人間を──たとえ、親友でも、同情したのだとしても、30を超える男を──()()()()()()()()()、なんてこと、おそらく、しない。


(欲望……加藤と同じような……? いや、佐藤は加藤とは違う)


 加藤の場合、好意の裏には支配欲(欲望)があった。


 だが、佐藤の好意には、なんの裏もない。

 ただただ、オレが好きだという、それだけを感じた。


 そして、その好意を純粋に嬉しいと思ってしまう自分を自覚してはいる。


(佐藤は、加藤とは違う。……そうじゃなくて……でも……ED? つってたよな?)


 自問自答を繰り返したところで脳内の質問に佐藤が回答をくれるわけがないのに、それでも考えてしまうのはもうオレの思考習慣だった。


 少し遅い朝食を食べつつ、起きてから初めてスマホを確認すると、珍しく佐藤から大量のLIMEが入っていた。


「あいつ……」


 開かなくても予想はつく。

 おそらく、あの写真についてか、あるいは自分の告白についての話かもしれない。


(確認して既読がつけば、また送ってくるな……)


 そう感じたオレはトークリストから佐藤を選択すると、非表示設定にした。


(今はこれで……)


 オレのスマホで非表示にしたところで、佐藤からはわからない。

 もし追いLIMEが来た場合は結局、オレのスマホ画面に表示されてしまうのだが


(今、来てる分を開いて……読む勇気がない……)


 佐藤から向けられる感情の意味を明確に知ってしまった今、自分が佐藤に返す適切な答えを探さなければならないだろうと思う。


(オレの中での佐藤の立ち位置、を……確認してから……)


 そうやって週末前の平日だというのに、テレビを見たり、スマホでくだらないニュースを読んだりとダラダラ過ごして12時を過ぎた頃。


 LIMEではなく、スマホの着信音が鳴った。

 見ると【弁護士法人リーガルリザルト】と表示されていた。






7章:──── 汐見視点<2> ──── 終了


▷次話から三人称視点です.




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▼ 他 掲載作品 ▼

君知るや〜 最強のΩと出会ったβの因果律 〜



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