邪竜との再戦
町に戻ってきました。ユーディット様達は試練を乗り越え、新たなる力を手に入れてバルバロッサに再び戦いを挑んだのです。
「おや詩人さん、試練の山はどうだった?」
前に話をしてくださった方がまた話しかけてくださいました。
「思ったより気軽に行ける場所なんですね。試練の内容はさすがに厳しいものでしたが」
「そうだね、突破した人間がいなかったからあんなに強くなれるとは誰も思ってなかったよ。
それであの後挑戦者が殺到したけど、やっぱり誰も成功してないんだよね」
自分と戦うというのはやはりそれほど大変な事なのでしょう。軽い気持ちで挑戦しないで良かったです。
――――――
己の弱さ、醜さを受け入れて神の祝福を受けた勇者達。
まるで歯が立たなかった赤き邪竜に再度戦いを挑む。
バルバロッサは余裕の態度で迎え撃った。
だが前とは様子が違う。勇者達の刃はかの邪竜の鱗を切り裂き、魔法に翼が凍りつく。
これは堪らぬと口を開き、猛烈な炎を吐き出すが、聖女の祈りに阻まれた。
勝負はあったかに見えたもののさすがは邪竜、そう簡単にはやられない。
身に宿す魔力を解放し、辺り一面を炎の海へと変えてしまった。
これは勇者達も一網打尽と思いきや、天から光が降り注ぎ、邪な炎は瞬時に消滅してしまう。
爽やかな風が吹き抜けて、力を使い果たした竜がうずくまる。
ついにユーディットがその首を落とし、グランドールに平和がもたらされたのだった。
――――――
「天からの光は、神様が手を貸してくださったのでしょうか?」
「そうなんじゃないかな?」
神様が味方してくれるなら、魔王が相手でもきっと大丈夫でしょうね。
では、私も次の土地へ向かいましょう。遥か昔に悪魔に滅ぼされた地、ルインウッドへ。
この先は彼女達の事を教えてくれる人もいない、不毛の土地です。勇者の足跡を調べながら進むしかないでしょう。
とはいえ、ユーディット様達が強力なモンスターを退治して下さったので、徐々に人の手が入りはじめています。さほど危険な旅にはならないでしょう。
――そう、かの地までは。