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騎兵隊参上

……………………


 ──騎兵隊参上



 迫りくるテクニカルに向けて放たれるグレネード弾。


 誘導補正がかかったそれがテクニカルのエンジンを吹き飛ばし、テクニカルが爆発炎上しながら脱落する。


『不味い。ジャガーよりレオパード。敵の装甲車です。エイタン装甲兵員輸送車。イスラエル製で、無人銃架(RWS)に50口径機関銃を装備』


『グレネード弾の対戦車榴弾(HEAT)で潰せるか?』


『恐らくは無理です』


『畜生』


 羽地は必死に考えを巡らせる。


『客車に飛び移るぞ。予定変更だ。インディゴ特殊作戦群と合流する』


『了解』


 流石に敵も乗客で一杯の客車を機銃掃射することはないだろう。


『レオパードよりレイピア。まだ客車と貨物車を引き離してないか?』


『まだだ。爆弾の設置に手間取っている』


『まだ待ってくれ。そっちに合流する。敵の装甲車と攻撃ヘリに追いかけられている』


『何だって? こっちの客車内にも民間軍事企業の連中はいるんだぞ?』


『じゃあ、俺たちに装甲車と攻撃ヘリの相手をしろってのか!』


『畜生。分かった。合流を待つ』


 インディゴ特殊作戦群は限定的に戦術脳神経ネットワークに接続されているだけだ。現状を完全に把握しているわけではない。


 羽地たちはコンテナの上を機関銃の射撃で狙われながら駆け抜け、客車に向けて飛び込んだ。インディゴ特殊作戦群が後方車両を制圧していた。


『ナイスタッチダウンだ、レオパード。だが、これからが地獄だぞ』


『民間人がいるのに連中もやたらめったら撃てはしないだろう』


『どうだろうな』


 予定通り貨物車両が客車から引き剥がされる。


『アルファ部隊もすぐに鉄道を止める。そうなったら何があろうと離脱しないと不味い。民間軍事企業の連中も、超国家主義派ロシア軍の連中も、馬鹿みたいに押し寄せてくるだろう。そうなったら本物の地獄だ』


『ああ。そうだな』


 地獄はこれから始まるのだ。


『ハルバードよりレイピア。我々のいる後方車両に民間軍事企業の連中が乗り込んできます。交戦許可を』


『交戦待て。民間人に被害が出ると不味い』


『しかし……』


『状況は向こうもこちらも同じはずだ。向こうもむやみに発砲はできないだろう』


 そして、インディゴ特殊作戦群の指揮官が羽地の方を向く。


『どうする? あんた方を追って来てるぜ』


『向こうがやる気なら迎え撃つだけだ。座席を遮蔽物にして立て籠もろう』


『了解』


 羽地たちは人工筋肉にものを言わせて座席をはぎ取り、驚くロシア人たちを尻目に陣地を構築していった。


 そこで乾いた発砲音が響く。


『連中、民間人ごと撃ってきてます! 繰り返す、敵は民間人に構わずに発砲!』


『連中イカれてんのか』


 乾いた発砲音とロシア人の悲鳴が響き、後方車両からロシア人が逃げていく。


『これで人間の盾はなくなったな』


『正面からやり合うしかないわけだ』


 羽地たちは陣地から向こうの様子を見た。


『ジャガー。迎え撃つぞ。敵の姿が見えたら撃っていい』


『了解』


 羽地とリリスが陣地から僅かに身を乗り出して銃を構える。


『レイピアよりハルバード。交戦を許可する』


『ハルバード、了解』


 前方車両から後退してきたインディゴ特殊作戦群のオペレーターが座席に隠れて射撃を始める。民間軍事企業のコントラクターたちは軍閥に比べれば遥かに正確な射撃で、インディゴ特殊作戦群を攻撃する。


『射撃開始。撃て、撃て』


 羽地たちも援護すべきと後方車両から民間軍事企業のコントラクターたちを狙って射撃する。銃弾の応酬が始まり、民間軍事企業と羽地たちの間で激しい銃撃戦が始まる。


『スタングレネード』


 羽地はとっておきの強襲制圧用スタングレネードを使用する。


 閃光と爆音が民間軍事企業のコントラクターたちを怯ませる。


『畜生。連中、痛覚をマスキングしてやがる。いくら撃っても怯みやしない。この手の技術は民間軍事企業も持ってるってわけか』


『頭をぶち抜いてやれば、静かになるさ』


 羽地はそう言って後方車両から前方に向けて鉛玉の雨を浴びせる。


 相手は痛覚をマスキングしている上に、体内循環型ナノマシンを利用しているようで出血は即座に止血される。本当に頭か胸に鉛玉を叩き込んでやるしかない。


『グレネード』


 羽地が目標をマークしてグレネード弾を叩き込む。


 空中炸裂型グレネード弾は鉄球を撒き散らし、複数の民間軍事企業のコントラクターたちを死亡させる。


 だが、敵は次から次に湧きてくる。


『そろそろ回収を要請しないとジリ貧だぞ』


『敵の攻撃ヘリがぴったり後方に付いてる。輸送機は呼べない』


 そこで列車の速度が落ち始めた。


『アルファ部隊が列車を止めた。本当にどうにかしないと不味いぞ』


『俺に言うな。司令部には支援を要請してある。撃ち続けろ』


 羽地たちは目標に向けて銃弾を放ち、民間軍事企業のコントラクターたちも応戦してくる。銃弾の応酬が激しくなっていき、羽地たちの陣地にグレネード弾が叩き込まれ始める。いよいよ以て不味い状況になってきた。


『シープドッグよりレオパード。航空支援の準備が整った。これより敵の攻撃ヘリを撃墜し、装甲車を撃破する。準備しろ』


『了解、シープドッグ』


 こういうときアメリカ人なら騎兵隊の参上だと喜ぶのだろうかと羽地は思った。


 次の瞬間、後方にいた攻撃ヘリが4機とも吹き飛び、加えて装甲車が吹き飛ぶ。


『ドローンか』


 攻撃ヘリと装甲車を撃破したのは日本情報軍のドローンだった。


 ステルス仕様でハードポイントには対空ミサイルと対戦車ミサイルが搭載可能。


 それは攻撃ヘリと装甲車を撃破すると無言で空を駆け抜けていった。


『もうすぐ列車が止まるぞ。アルファ部隊も回収して脱出だ』


『了解。アルファ部隊を回収だ。行くぞ!』


 一斉に攻勢に転じる。完全に停車した車内の中で羽地たちは民間軍事企業のコントラクターたちを射殺しながら、前方車両に向かう。羽地たちも無傷とはいかなかったが、多少の傷は体内循環型ナノマシンが治療してくれる。


 撃って、撃って、撃って、撃ちまくって前方車両を目指す。やがてロシアに民間人がすし詰めになった車両に来た。流石にここでは民間軍事企業のコントラクターも発砲しようとはせず、大人しく車両から撤退していった。


 そのまま勢いよく羽地たちは先頭車両を目指す。そして、運転室に辿り着いた。


「撤退だ。迎えが来る」


「了解。待っていたところだ」


 羽地たちはアルファ部隊と合流すると、戦術脳神経ネットワークに現在地を表示させた。それに合わせて輸送機が飛行してくる。


『敵のテクニカルを視認。50口径機関銃を装備』


『レオパードよりクーガー。目標をマークした。狙えるか?』


 ここで羽地が尋ねる。


『お安い御用です、レオパード』


 25ミリ弾が再び発射され、敵のテクニカルが爆発炎上する。


 そして、輸送機がゆっくりと降りて来た。


「乗り込め、乗り込め。離脱だ」


 羽地は速やかに指示を出し、全員が輸送機に乗ったのを確認するとシベリア鉄道から離脱していった。


 何かしらの負傷をしている人間もいるが月城が治療している。


 だが、戦術核はどこに消えた?


……………………

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