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吹き荒れる銃弾

……………………


 ──吹き荒れる銃弾



 国際経済センターの最上階は75階。49階というのはまだまだ高くはない。


 だが、もはやいつ戦術核が起爆してもおかしくない状況だった。


 羽地たちは非常階段を駆け下り、49階に迫る。


『前方、鷲獅子旅団と思われる兵士。カラシニコフを所持』


『時間がない。突破しよう』


 羽地たちは熱光学迷彩で姿を隠しているのがアドバンテージだった。


 サプレッサー付きの自動小銃で敵の頭を撃ち抜く。


 異変に気づいた兵士が現れる前に突破する。


 非常階段には鷲獅子旅団の兵士たちが詰め寄せていた。彼らは戦術核を上層に運ぶつもりで準備しているらしい。


『グレネード弾』


 羽地は空中炸裂型のグレネード弾を敵に叩き込むj。


 ボールベアリング状の鉄球が撒き散らされ、鷲獅子旅団の兵士たちを薙ぎ払う。


 もちろん、お返しはすぐに飛んできた。


『撃ってきたぞ!』


『撃ち返せ! 火力を集中! アリス! 遮蔽物だ!』


 鷲獅子旅団の兵士たちのカラシニコフが大合唱を奏でる。羽地たちが爆薬と銃弾をたんまりとお見舞いし、激しい銃撃の応酬が続いた。


 鉛玉と鉛玉が行きかい、非常階段のコンクリートが削れる音がする。


『全員一斉にグレネードを投擲。爆発地点はマーク済み』


『了解』


 羽地たちが一斉に手榴弾を投擲する。


 爆発地点としてマークされた位置で手榴弾が炸裂する。


 これでかなりの鷲獅子旅団の兵士たちがなぎ倒され、撤退していった。


『追撃だ。進め、進め』


 スモークグレネードを投擲し、煙幕を展開すると視神経介入型ナノマシンの入力をサーマルセンサーに切り替える。敵はこの手の暗視装置を装備していない。熱光学迷彩の効果は薄れるが、既に戦闘状態に突入して、警戒されている中を熱光学迷彩で進んでも効果はあまり見込めない。


『撃たれた!』


『クソ。連中、見えてるってのか?』


 むやみな発砲ではない正確に羽地たちを狙って撃ってきている。


『サーマルセンサーに反応なし。畜生。敵は熱光学迷彩を使ってるぞ』


 先遣の1個分隊の分隊長が呟くように告げる。


『指向性EMPグレネードを』


『了解』


 羽地たちが一斉に指向性EMPグレネードを周囲に叩き込む。


 すると、熱光学迷彩が剥げた兵士たちが姿を見せる。装備は最新式。ビッグシックスの部隊だとしてもかなり進んだ装備で武装している。


『撃て、撃て!』


『クソ。倒れない。痛覚をマスキングしてやがる』


『脳天と心臓に叩き込むんだよ!』


 とは言え、ボディアーマーもヘルメットもかなり頑丈なものを使っている。なかなか撃ち抜けない。


 不毛な撃ち合いが進み、銃弾だけが損耗していく。既に鹵獲したカラシニコフを使用している兵士すらいる。


『ナインテールよりレオパード。近接航空支援可能』


『ナインテール! 目標をマークする! 全武装を叩き込んでくれ!』


『了解、レオパード。退避されたし』


『全員、退避、退避!』


 羽地の指示で全員が49階のフロアの敵がいない場所に散っていく。


 そして、猛火が吹き荒れた。


 最初に飛び込んできたのはアヴェンジャー機関砲の砲弾でそれによって兵士たちがなぎ倒される。それからハイドラ70ロケットポッドから榴弾が叩き込まれ、最後にマーヴェリック対戦車ミサイルが飛び込み、全てが炸裂する。


 49階の床は崩壊し、48階と直通になってしまった。


『戦術核は?』


『ないぞ。どこにもない』


『業務用エレベーターが再稼働している! 畜生! やられた!』


 業務用エレベーターが最上階に向けて戦術核を輸送中だった。


『フォックスハンター! 俺たちをすぐに最上階に上げてくれ!』


『やってる! エレベーターが到着したはずだ! それに乗り込んでくれ!』


 チンと音がしてエレベーターが開く。


『乗り込め、乗り込め。負傷者は衛生兵を残しておいていけ!』


『了解!』


 エレベーターが凄まじい速度で羽地たちを最上階に押し上げていく。


『先輩』


『どうした、アリス?』


『帰ったらお祝いですよ』


『ああ。もちろんだ』


 そのためには生きて帰らないといけない。


 魂の喪失は不可逆だ。一度失われた魂は二度と元へは戻らない。


 アリスたちも一度シャットダウンされてしまったら、魂を失うだろう。


 それどころか、核爆発に巻き込まれたら何も残らない。


『まもなく最上階』


『備えろ』


 チンとまた音がしてエレベーターが開くと同時に羽地たちが手榴弾を投擲する。


 それはそこにいた複数の鷲獅子旅団の兵士たちを吹き飛ばし、道を作った。


『行け、行け、行け!』


 羽地たちはエレベーターを飛び出て、外に向かう。


 戦術核があった。


『放射線値からして本物です』


『なんとしても奪還する』


 またビッグシックスの兵士と思われる熱光学迷彩に姿を隠した兵士たちがでたらめに銃撃してくる。今度は羽地たちが見えていないようだ。49階ではスモークグレネードを使ったのが失敗だったのだろう。


『レオパード! 戦術核を押さえろ! ニュークキラー爆薬を使え! ここは俺たちが押さえる! 行け!』


『任せた!』


 羽地たちは先遣隊の分隊長が叫ぶままに、銃火の中を潜り抜け、戦術核に迫る。


 そこで羽地が足を撃たれた。


『クソ。撃たれた。ジャガー! 代わりに戦術核を爆破しろ!』


『近づけません! 敵は重機関銃まで持ち込んでいます! 先遣隊の1個分隊は既に壊滅! 我々も──』


 そこでグレネード弾が炸裂した。


 空中炸裂型グレネード弾だ。


 それが八木たちの上空で炸裂した。


『ジャガー! ジャガー!? クソッタレ! くたばれ!』


 羽地が銃を乱射する。グレネード弾と銃弾を叩き込む。手榴弾もあらん限り放り投げた。そして、敵がようやく静かになった。


『ジャガー。おい、ジャガー。無事か? クーガー? オセロット?』


『無事です。ただ、負傷して動けません』


『ああ。だが、もう大丈夫だ。戦術核は確保した。連中はもうこれを起爆できない』


 羽地はふうと息を吐く。


『アリス。無事か?』


『無事です。今、そちらの救援に向かいます』


『頼む。気を付け──』


 熱光学迷彩を解除したアリスが近づこうとするのに彼女の足が爆ぜた。


『何が……』


「さて、どうして私がここにいるのか。それを説明しなければなりませんね。長い話ではありません。簡単な話です」


 そう言って姿を見せたのは司馬だった。


「司馬……! 今のは炸裂弾頭か……」


「さあ。武器のことはよく分かりませんが、私もバックアップ要員として武装しておくようにと命じられていたので」


 そうしてしげしげと自らが引き金を引いた自動拳銃を司馬は眺める。


「羽地少佐。驚かれるかもしれませんが、事実をお話ししましょう」


「事実とは?」


「戦術核を炸裂させたがっているのは日本情報軍だということです」


 司馬は悲し気な表情で羽地にそう言った。


……………………

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