闇の参
「いないか…どこに行ったんだ?」
結果から言うと、戻った先には谷口の姿はなかった。あれだけ怯えていたと言うのに、何処へ行ったのだろうか?
「ばつが悪くて隠れているんじゃないの?」
「いや…近くに人らしき気配はないな」
「そ、そんなことまで分かるんですか?海さん、やっぱり凄いです…」
どうやら、加納さんからの信頼は厚いようで、俺が言った事を完全に信用している。まあ、実際に気配と言うのか?生物の存在がおぼろげであるが何となく分かる。探知が出来る距離は大体…1キロ以内って所かね?
「う~ん…暗くなって来たし、どうするにしても安全に休める場所を探した方が良いんじゃないの?」
「そうした方が良さそうだな…今日の探索は諦めるか」
この世界にも昼夜が存在しているようだ。大分日が陰り、暗くなって来た。それで分かったが、俺は夜目も効くようなのだ。最初は気が付かなかったが、彼女たちの小言が聞こえて察することが出来た感じだ。そのせいか、助けた残り4人の女子がこちらとの距離をかなり詰めて来ていた。
「じゃあ、まずはその二人をもうマントから出しても良いんじゃないかな?」
「私も、そうした方が良いと思います!!」
二人は提案の体で言ってはいるが、実際はすぐに離れろ!と言うようなニュアンスが含まれていると思われる圧力を感じた。早く変われ!と迫られているような気がするくらいの圧迫感だ…
しかし、問題があったりする。それは…
「ああ、海君の温もりに鼓動に匂い…全て好きなっちゃった、もう…私どうにかなっちゃいそう」
「わ、私も感じた事のない変な気分だ…どうしたら良いの…?」
二人とも海さんと密着し過ぎたせいで完全に壊れてしまっていた。しかし、壊れ方が異性的な意味で危険すぎてまずい。と、とりあえずここは…!!
「安全な場所を探すのは難しそうだ。まずは、ここを安全にしよう」
「え?ここを安全にする?」
「ああ。みんな、これから一時的に真っ暗になるがパニックにならない様にしてくれ」
俺は、みんなの返事を聞いてからまた一つ暗黒王子の力を使う。
「ダークサンクチュアリ」
そう言葉を発した途端、俺から闇の衝撃波の様なものが放たれ、クラスメートの女子たち以外の物が排除され、そのまま闇色のドームが形成された。そして、中は暗闇に包まれたが俺にはやはり普通に見えていた。
そう…真っ暗になった事によって意識がそれ、身体を晒してしまっている4人の裸体がバッチリ見えていた。ふうむ、これは…って、違うだろ!?
「海、これは何なの?」
「俺の力で、ここに安全な場所を作っただけだ。この球体は、あらゆる外敵から中を守ることが出来る」
「で、でも、暗くて何も見せません…海さんの顔が見えないのは不安です!!」
暗くて何も見えない事より、俺の顔が見えない事の方が不安になるの?それは、俺に依存し過ぎでは?いや、海さんにか…って、俺だっての!!
「安心してくれ、今から明るくするところだ。ダークライト」
闇の光とは何ぞや?と思う所だが、ドームの中は明るくなったのだ。俺は、ダークライトを上に飛ばし、固定した。正しく、照明みたいになったな…
「黒い球体なのに…光を放っているの?」
「そう言う事だな。とりあえず、二人とも出ておいで」
一連のやり取りの間に何とか落ち着きを取り戻させた二人をマントから出した。どうやら、ダークライトには落ち着かせる効果もあるようだ。これはやはり・・・
「海君、ありがとう♪本当はずっとくっついていたかったけど…」
「海、ありがと…わ、私も離れたくなかったな…」
やばいな、本音が漏れるくらい海さん依存症になってない?これ…どうするんだよ?
「二人とも、ずっとくっついていたんだし私の番!!」
「そうです!私たちの番です!!」
やっと女子の柔らかさから解放されて、色々な意味で俺が落ち着けると思ったら、また新たな柔らかさが襲って来た!?両手に華なんだが…いや、贅沢なのは承知しているけど、理性とお別れしそうなんだよ!!
俺は、両側から抱き着いている二人を抱き寄せながら言い放つ。
「とりあえず、明日には人のいるところまで移動するつもりだ。だが、その前に9人全員にすることがある」
「子作り?」
「子作りですか?」
「子作りよね!?」
「こ、子作りだよな?」
やべーぜ、海さん大好きガールズの4人は。恐ろしいワードを出して来た!!しかも、英語3文字じゃないのに生々しいので言って来た辺り、本気度が伺える。子供作って逃げられない様にしようってことですよね?大丈夫、中身は小心者ですから…すでに、逃げられるとは思っておりませんよ…
「それもしたいところだが…ダークヒール」
「え?な、何か温かい…」
「本当です…それに、疲れが言えていくような気がします」
「ああ、お前たちの怪我や疲れを癒しているんだ。他のみんなも集まってくれ、小さな怪我を負っている娘も多いだろう?」
その言葉を聞いて、まずは、副島さんと加納さんを押しのけるように時任さんと真壁さんが抱き着いて来た。いや、抱き着く必要なんですけどね…真壁さん、もう人格すら変わってしまったのか…?
そして、その後一人を除いて全員に、俺に抱き着いてからのダークヒールが行われた。抱き着く必要はないと言う暇もなく全員が抱き着いて来たからだ。やはり、小さな傷でも女子にとっては大事なのだろう。凄い剣幕でした…いや、役得だったから何も言えませんけどね?
「真美は良いのか?」
「わ、私はなびかないって言ったでしょ!大体、私は怪我をしていないから必要ないわ」
そう言って、そっぽを向く栗川さん。この流れで抱き着かなくても良いんだよ?とか言えないなこれ…
「そうか?必要になったらいつでも言ってくれ」
その後、トイレ問題もダークウォールで解決し(具体的説明は名誉のために省きます)落ち着いたところでやはり問題が起きた。
「じゃあ、そろそろ抱いてくれるんだよね?」
抱き着いたまま、キラキラと期待した瞳を向けて来る副島さん。いや…そんなにストレートに来ますか。それもしたいとか海さん口走っていたものな…いい加減にしてくれよ、本当に!俺だけど!!
「とても魅力的な提案だが、人里を見つけるまでは体力を温存しておこうと思う。明日中には、必ず見つけるから待ってくれないか?」
うむ、延長出来たのは良いけど、一日だけかよ!?とか、内心ではどうしようとか思っている俺です。
「じゃあ、せめてキスしんっ!?」
まただ…またセリフの途中で唇を奪いやがったよ、海って男は!!俺の事だけど!!しかも、激しいキスを…って、この流れはもしや・・・
案の定、私もと催促して来た全員をノックアウトするキスをしてくれやがったぜ、海さん。そして現在、闇のベッドモドキに横になりつつ思考タイムに入っている。だが…
「海…絶対に、離れないから」
「海さん、そこはダメです…」
「海君、もっと強く…」
「海…もっと優しく…」
いや…誤解するなよ?何もしてないですよ!?同時に寝言とか…本当は起きているだろ?
「・・・・・・」
うむ、どうやら本当に寝言だったようだ。それはそれでどうかとも思うけども…つまり、俺の傍には4人の女子がいるわけだ。
しかも、可笑しいんだ…俺の左右に腕を拘束している時任さんと真壁さんがいるのはまあ、仕方ないのかな?しかしだ…俺の上に抱き合うように副島さんと加納さんがいるのはどうなんだ?可笑しいよね?二人とも小柄だから何とかなっているけど…そういう問題じゃないと思うんだ。
しかし、これが最大の譲歩だと言うのなら仕方ない。だが…
俺は、時任さんと真壁さんの隣…つまり、ベッドの両端の方を見る。そこには、5人の女性がいた。端の方と言ってもデカすぎるベッド…まあ、モドキなので大きさは俺の都合だ。つまり、栗川さんを含めて残り5人も同じベッドの上に居るというわけだ。
「しかし、本当にどうしたものか…」
俺は、困っている。そう、とても困っている…どうしよう?とりあえず、寝ている少女たちを見ながら回想してみよう。
先に罪状を言うと、全員手籠めにしてしまった…あ、キスだけですけどね?まず、今傍にいる4人をそれはもう徹底的に立てない位にしてしまったんですよ、海さんが。あ、キスですよ?
そこまでは仕方ない…わけでもないが、仕方ない。しかし、そこで問題が起きた。それは…川峯さん…川峯桔梗さんが私も加わりたいと申し出てしまった事だ。
そこから、あ!私が先に言いたかったのに!!と、夏空向日葵さんが加わり、続いて残りの、野島花恋、一ノ瀬美海実の二人も参加を表明してしまったのだ。
そして、間が悪い事に防波堤になる可能性のあった4人はぐったりとしてしまっていた。ご存じの通り、海さんは据え膳食わぬは男の恥をストレートに体現する変態…止められるはずもなかった。
ここまでは、俺ももしかしたらあるかもしれない…と思っていた事だったが、この後が俺を一気に疲弊させた。
きっと、彼女も海の魔の手にかかる少女たちを見ているうちに、何かが弾けてしまったのだろう。俺は、一番端に眠る栗川さんを見る。彼女の寝顔は、何処か緊張が糸が切れたように安らかだった。
そう、正常に戻れるかもしれない最後の防波堤の栗川真美さんまで、キスをせがんで来たのだ。俺は、急な出来事で頭が真っ白になったのだが、その間に海さんは彼女まで毒牙にかけていたと言う訳だ。
今から振り返って考えて見ると、彼女も一人だけ仲間外れになるのは嫌だったのかもしれない。安らかに眠る彼女を見ていると、片意地を張って頑張っていた彼女の苦労が僅かに伺えた気がした。
そろそろ暗黒王子海を別人と考えて逃げるのも限界なのかもしれない。だとするなら…
「まずは、能力の把握か…」
正直な所、大体の予想は付いている。決別した過去と言うべきか?やはり、どう考えても今まで使った能力から察すると…
暗黒王子世界征服の書に書かれた内容そのままなんだよな…いや、もしかしたら似て非なる物かもしれない!もう一つだけ試してみよう…
「ダークアイ」
そう唱え、意識をダークサンクチュアリの外に向けると…やはり、見えた。外の景色が、自分で見ているようにハッキリと…これで、もう間違いないな…
しかし、お焚き上げまでして供養したのに…今更俺の中に宿るとか…いや?燃やしたから逆に祟られたんじゃ!?ち、違うよな…?
禁書?の祟りかどうかは置いておくとして、はっきりと力の根源を意識出来たせいだろうか?自分の力をはっきりと認識出来るようになった。正直…チートと言うしかない能力だぞ?これ…
「俺の中に眠りし、真の力の目覚めの時来たれりか」
・・・めっちゃ痛いっすね。当時の俺だったらもう、きっとめちゃくちゃはっちゃけられたと思うんだがけどな?一度、現実に覚めてしまった今の俺には正直キツイ設定だが…
・・・多分、俺が暗黒王子の素行を止めたら、力を失う気がするんだよな。多分と言ったが、確信に近い予感がある。つまり、力の対価がそれってことか?かなりキツイんだが…
仕方がない、明日からの行動を少しだけシミュレーションしておくか・・・
意識が覚醒してまず感じたのは、人の温もりだった。具体的に言うと、女性の柔らかさだろうか…動けないだけどな?
俺の上に居る二人は、寝相が良いのか悪いのか、しっかり俺の上をキープしていた。正直びっくりだ。両側の二人も、俺の腕を開放してくれていなかった…いや、俺なんかで良かったらいくらでもすがってくれて良いんだけどさ…まあ、それは良いか。
ただ、昨夜は考えないようにしていた両脇の二人が裸である事が俺の理性に大打撃を与えて来る。頑張っていると思う俺、暗黒王子面を少しでも出したら大惨事に発展しかねないな…女性の柔らかさは凶器だと思いますよ。
ダークアイで確認したところ、外は朝を迎えたようだ。ダークサンクチュアリの中は相変わらず暗いが、ダークライトでも飛ばしてみんなを起こすか?その時がまず俺の最初の試練になりそうだけどな…
しかし、早く出発したい事情もあるので、ダークライトを飛ばして明るくした。すると、女性陣がもぞもぞと動き出した。
「おはよう、海。おはようのキスぅ…」
「おはようございます、海さん。わ、私にもキスを…」
やっぱりそうなります?ラヴラヴ夫婦でもなければおはようのキスなんてしないと思うんだけどな…暗黒王子としては、断れない所だな…
「おはよう、ぱいん」
そう、挨拶を返しつつ朝から激しいキスを繰り出す暗黒王子事、俺である海さん。まあ、昨日自覚したので現在は自分の意志でやっているから…いや、これって俺の意志でやる事としては、ファーストキスになるんじゃ…いや、深く考えるのはよそう…
その後、全員に挨拶とキスを済ませ、全員を腰砕けにした後に気が付いた。おい、しばらく動けなくなるじゃんか…と。
「朝から激しいよ…嬉しいけど、我慢出来なくなるよ?」
「すまない、お前たちが可愛すぎて加減が出来ないんだ」
「落ち付いたら覚悟してよね?」
そう言って、俺に抱き着いて来るぱいん。可愛いなぁ…って、それどころではなく、まずはやる事をやれよ俺…
「さて、まずはみんなに報告がある。昨日の夜、自分の能力についてある程度把握することが出来た。もちろん、全部把握したわけではないが、少なくともみんなを危険から守る事は出来るくらいにはなったと思う」
「さすが、私の王子様です♪」
「前から思っていたけど、私にはみんなのを強要してくるのに、自分だけは私の王子様って言うよね?」
「えへへ…つい海さんが好き過ぎて暴走をしてしまいまして」
ジト目のぱいんの指摘を、笑って誤魔化す美乃梨。微笑ましいが、話を続けよう。追及すると藪蛇にしかならない予感がするしな。
「話を進めるぞ?とにかくだ、人のいる場所に行くに当たってやらなければいけない事がある。萌奈香、こちらに来てくれ」
「はーい♪」
嬉しそうに俺の前に来る萌奈香。それは良いが…身体を隠しなさい。俺は、目の前に現れた裸体から目を逸らすような紳士ではないんだぞ?めっちゃ見ちゃうぞ?
「もう、海君ったら♪目の前に呼んでまで私の身体を見たいなんて…するの?」
「違うが、目の前に素晴らしいものが来たら鑑賞してしまうのは、許して欲しい所だな」
こういう時は、自動暗黒王子様機能がとても助かる。自分だと認めようとも、こんなセリフすらすら出てこないですってば…
「見るだけで良いの?」
うむ、上目遣いですな。可愛い…って、違う、そうじゃないだろ?先に進めよう…俺の理性が怪しい。
「今はな?そのうち、そんな余裕が持てない事をされるから覚悟して置くんだな。一応、動かないでくれダークウォール」
「え?・・・あっ!?服になった…?」
「ああ、ダークウォールは変幻自在だと解かったからな」
そう、実はダークウォールと言う割に、全然壁っぽくないんだこれ。最初は訳も分からず出したから、真っ黒なただの壁だったが、今は自在に形を操れる。しかも、自分の意志で持続出来るし、制限もない。まさに、これだけで天下取れるチートさだと思う。
「真っ黒なセーラー服かぁ…海君の趣味?」
「多少はあるかもな?まあ、俺のイメージでしか作れないからそこは許してくれ」
「そっか…チラッ」
「何故スカートをめくりあげて見せて来たんだ?」
「海君の趣味はどんな感じかなと気になって…ああ、下着も真っ黒じゃ色気ないかぁ…」
「俺以外の男がいるところでするなよ?」
「そんな当たり前の事は言われるまでもないよ?」
そう言いながら、腕に抱き着いて来る萌奈香。右腕に彼女の柔らかさを感じてしまう。何故なら、ダークウォールは俺だけは素通りさせてしまうからだ。
「あ・・・なるほど、そう言う事なんだ?直接触る?」
「どう勘違いしたか知らないが、そういう目的ではないからな?俺が意識しないと、ダークウォールは俺だけはすり抜けてしまうんだ」
自動モードと言うべきだろうか?その時は、俺だけはすり抜けてしまう。だが、俺以外には鉄壁の壁になるし、害意ある攻撃からすら身を守ってくれるだろう。例の敵に向けた時みたいに、異界のような場所につなげることも出来る。難点は、現在俺の身体が黒いセーラー服を貫通しているように見える所か?
「なるほど、そっかぁ…じゃあ、触る?」
「人のいる所について落ち着いてからな。その様子だと、問題はなさそうだな?」
「そうだね…特に問題はなさそうかな?服を着ている感覚はないけど」
「そこは勘弁してくれよ。ただ、普通の服よりも頑丈だから身も守ってくれるはずだ」
「そっか、ありがとう♪でも、海君に直接守って欲しいかな?」
身体を押し付けながら期待の含んだ目で見上げて来る萌奈香。可愛い…って、進まないから!!
俺は、質問に「当たり前だろ?」と短く答え、軽くキスをしてから次を呼ぼうと後ろを見た。するとどうだろう?すでに、服を失った女子が一列に並んでいるではないか…やはり、服がないと不安なんだな…当たり前の事なんだけどな。
「次は、咲耶でいいのか?」
「う、うん。お願い…」
うわぁ…何でそんなモジモジ恥ずかしそうにしているのに身体を隠さないんだ?可愛すぎて魅入ってしまうではないか!!これは仕方ないよな?
「う…見て欲しいけど恥ずかしいから見ないで…」
「難しい事を言うな、咲耶は…」
「だ、だって…」
モジモジ度アップ!なんだ、この可愛い生物は…
「咲耶、あざとすぎよ」
「なるほど、ギャップ萌えを狙っているんだ」
「男性は、ああ言うのが良いのでしょうか?」
「ち、違うから!は、恥ずかしいけど…私、可愛くないからアピール方法がこれくらいしか思いつかなくて…」
「なるほど、あざとい」
「勉強になります」
「咲耶って一生懸命なだけだから困るよ」
うん、あざとい。分かっているがこれは…クリティカルヒットだな。
「大丈夫だ、咲耶は可愛いよ」
そう言いつつ、抱きしめる海さん。俺です、今回は自分から動きました。咲耶は、俺の腕の中で、真っ赤になってオーバーヒートしそうになってる、やはり可愛い。その通り、ただただ可愛くて抱きしめたくなった欲求のままに動きました…可愛いと伝えたからセーフにして欲しい。
その後、解放してダークウォールで服を作ったが、咲耶はしばらく湯気が出そうなくらいあぅあぅしていた。やはり、耳元で囁くように言ったのが効果抜群だったようだ。めっちゃ可愛いわ。
「咲耶は強敵」
「大丈夫です、いつか私もあの技を習得します!」
「計算してやるのはどうなんだろうね?」
計算してやるのもありだと思います。俺、騙される自信しかない!って、それは良いっての、次へ行け、次。
「次は…向日葵か」
「うん!よろしくね!海ちゃん!」
「俺もちゃん付けか…まあ、予想は出来たし良いけどな」
目の前の言動も見た目も幼い元気っ子の向日葵は、誰が相手でもちゃん付けで呼ぶ。先生にすらちゃんを付けて怒られていたのは、最早懐かしい記憶になっている気がする。流石に、身体を見るのは犯罪な気がして来るな…もちろん、目が行くのは男の性なので止められないがな?
「え?ダメかな?」
「いや、良いって言っただろ?」
「わーい♪ありがと~♪」
そう言って、抱き着いて来る向日葵。天真爛漫キャラだが、内心は分からない。いや…どっちでも良いけどな、可愛いから!!真理だろ?
「それじゃあ、一度離れてくれるか?服を作るから…向日葵、聞いているのか?」
「やっぱり、海ちゃんに抱き着いていると安心するにゃあ~♪ずっと抱き着いてたら…ダメ?」
「心情的にはダメじゃないが、動きずらくなるし、他の娘たちが納得しないだろう?我慢してくれ」
そう言って、頭を撫でる。うん、何かもう頭を撫で易い娘だよな、向日葵って。
「そっかぁ、残念。だけど、ほどほどになら抱き着いても良いって事だよね?」
そう言ってぎゅぅっと抱き着いて来る向日葵。うむ…可愛いな。俺の内心のボキャブラリーの低さよ。可愛いしかないから困るわ…
「今回はここまでな?また、寂しくなったらいつでも抱き着いて来て良いからな」
そう言って引き離しつつ、軽くキスをする。全員にしないと不公平になるからしないわけにいかなくなったんだよな…
その後、ダークウォールでセーラー服を向日葵にも着せた。
「ん?あ!ベレー帽だ!」
「ああ、気が付いたか?神が黒いから真っ黒なベレー帽は気が付きにくいよなぁ?それに、浮いているに近いから自分じゃ気が付かないと思ったんだが、良く分かったな?」
「ふっふっふ、女の子は自分の装備…着るものには敏感なんだよ?」
その言葉を聞いて、慌てて自分の頭を確認する、萌奈香と咲耶。いや、気が付かなくても可笑しくないからな?マジで、重さを感じないだろうしな。
「可愛い服をありがとう♪」
そう言って、抱き着いて来た向日葵は、「する時はサービスするからして欲しい事があったら言ってね?」と耳元で囁いてから離れた。やはり、この幼い感じは演技なのだろうか?追及はすまい、可愛ければ良いのだ!良いったら良いのだ!!
「みんな侮れない」
「勉強になりますねぇ」
「不覚を取ったかも」
「私も…」
女の子たちの小声が一々耳に入って来るが、気にしない。気にしないったら気にしない!次だ、次。
「次は、桔梗か」
「よろしくお願いします」
そう言ってにっこり微笑んでくる桔梗も身体を隠す気はないらしい。女性って強いな…と言いつつ、しっかり見ている俺ってさすがですね。
「私、胸には自信あるんだけど、どうかな?」
「うむ、素晴らしいな」
え?何この会話?周りからは遮断されている場所とはいえ、他の娘の目があるところで堂々とやって良いのか?まあ、今の返事は反射で出た本心なんだけどな!
まあ、凄く大きな果実が目の前に会ったらああ言うしかないのだ。他に選択肢はないだろう?
「じゃあ、十分に目に焼き付けてから服をお願いしようかな?」
そう言って、胸を張る桔梗は実に堂々としている…素晴らしいな!って、何しているんだ、俺は!?危ない…魅了術にかかっていたに違いない!恐ろしい魔術だな…
「それじゃあ、ベッドの中ででもじっくり鑑賞させてもらう事にするか」
そう言って、桔梗を抱き寄せ髪を撫でた。彼女は、少し驚いた顔をしたがすぐに受け入れたようだった。
その後、身体を離してダークウォールで服を着せた。桔梗は、「ありがとう、その時を楽しみにしているから」と小声で話して離れていった。いや、どちらかと言うと俺が楽しむんだと思います…はっ!?変態だな、俺!?自覚ありだからギリギリセーフだと良いな…
「あれだけ誘惑されてもポーカーフェイス貫くなんて、海って女性慣れしているの?」
「え?じゃあ、私たち翻弄されちゃうんでしょうか?」
「すでに翻弄されているじゃない?」
「翻弄より虜にされているのが問題じゃないか?」
「難しく考えないで、好きだから傍に居たい!で良いんじゃないかな?」
「私もそう思うよ?少なくとも、私たちの事は受け入れる覚悟を持ってくれているみたいだからね」
・・・さて、次ですな。
「海様!私の番だよ~~っと♪」
「うぉっと!?」
流石の海様も変な声を出してしまった。まさか、いきなりダイビングアタックして来るとは…簡単に受け止められたけどな、さすが暗黒王子様。
「お~、さすが海様!美海実何て軽々持ち上げられるんだね!!」
「そりゃあな、女の子の一人二人持ち上げられないんじゃ男として恥ずかしいだろう?」
何て事を言ってはいるが、暗黒王子になる前だったら結構きつかったかもしれないな。身体を鍛えてても、同年代の女の子を軽々って訳にはいかなかっただろうからな…
「じぃ~」
「目の前で何だ?キスの催促か?」
「それはして欲しいけど、違うよ!何で、海様はこんなに魅力的に見えるんだろうと思って、近くで確認してたんだよ?結局、分からないけどね!!」
ふむ、そこは俺にも謎だな。暗黒王子に女性を魅了するスキルはなかったはず…ないよな?
「じゃあ、分からなかったという事で、キスちょうだい?」
俺は、求められるままに美海実と軽くキスをする。彼女は、向日葵と同じ明るい子だが…美海実の方が本当に考えずに暴走していると言うか…自滅するような言動を考え無しにする娘と言うか…まあ、それはそれで良いかも知れないがな…何か、可愛いからな。俺、そればっかだな…
そして、美海実にも服を着せ、ついに最後の娘の番となった。
「花恋だ…とっ!?」
まさか、2連続ダイブが来るとは思わなかった。花恋ってそんなタイプじゃなかったよな?
しかも、その後も彼女らしさとはかけ離れた行動に出て来た。そう、彼女からキスをして来たのだ。こんな過激な娘じゃなかったはずなんだが…
驚きにより、他の娘より若干長くなってしまったキスを終えた後、彼女に問いかける。
「いきなりどうしたんだ?」
「えっと…待っているうちに我慢の限界が…ね?」
ね?と言われても分からん…え?興奮したって事?エッチな娘なのか!?
「その時が楽しみだな」
「私も楽しみだなぁ♪」
お互い笑顔で見つめ合った後、花恋にも服を着せた。・・・うむ、我が理性の勝利だな。全員無事に着せ終わっ…アレ?
全員にダークウォールで服をプレゼントしたはずなのに、何故か裸の娘が目の前に…って
「ぱいん…何故脱いでいるんだい?」
「私もみんなと同じ服をプレゼントして欲しいから♪」
「それなら、わざわざ脱がなくても良いと思うんだが…」
「それは気が付かなかったなー?」
などと言っているが、こいつ確信犯だな?
「嘘をつくのはこの口か?」
むにーんっと頬を引っ張ってみる。もちろん、余り痛くない様に加減しているが。
「はっへー、ひんはははははほひへふへふはは!」
別に、みんなだって好きで脱いだわけじゃないんだがな…って、何で俺、ぱいんが言った事分かったんだろうか?まあ、放してやるか…
ぱいんの頬を解放してやると、自分の身体を見せつけて来た。
「確かに、私は押さない体型だと言う自覚はあるけど、ちゃんと女の子してるでしょう?合格だよね?」
「合格に決まっているだろう?全く、こんな事をしなくてもお前は俺を一番最初に求めた女性なんだぞ?逆に、逃げられると思うなよ?」
そう言って、唇を奪う。もちろん、他の娘に配慮して軽く済ませる。ぱいんはすっごく不満そうな顔をしていたが、服を着せてやると嬉しそうに似合うか何度も確認して来た。可愛いな…ついでに、何度も身体を密着させてくるから強かな娘でもあるんだがな。
今度こそと終わったと思ったが…
「い、いかがでしょうか?それなりには、頑張って磨いてきたつもりなのですが…」
「合格に決まっているだろう?全く、美乃梨まで脱がなくても良いだろうに」
やるかもと思ったが、本当にやったよ。これで、栗川さん以外の肌色をまじまじと見てしまったじゃないか、素晴らしいな!!違う、そうじゃなかった。
とりあえず、何かを美乃梨が言う前に口をキスで塞ぎ、離れる時に「こんなものを見せつけて…覚悟しておけよ?」と言ったら、「はい!」と返事されてしまった。本当に、芯が強い娘ばかりだなぁ…
そして、もちろん彼女にも服を着せたわけだが、ぱいんに対抗するためだろうが、美乃梨も何度も確認と抱き着きをして来た。何だかんだで、この二人が一番大胆なのだろう。嬉しいが、トラブルを呼ぶようなことになりそうな予感がするな…
「さて、それじゃあ、今度こそ終わったし人里目指して…」
俺は、目を疑った。いや…昨日の件があるからチラッとは過ぎったが、まさかやるまいと思っていたのだが…
目の前には、それはもう恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて今にも逃げたいと言っているように身体を揺らしながらも晒している栗川…いや、真美の姿があった。覚悟し過ぎだろ…俺よりずっと男らしいかもしれん。
そんな彼女を見ては悪いと思いつつも、じっくりと見てしまった後、声を掛けた。
「真美…無理する事はないんだぞ?」
「わ、私だけのけ者にされたくないからだから!べ、別に媚売るつもりはないからね!!」
そう言って、そっぽを向く真美。やだ、可愛い。
「なるほど、あれがツンデレ」
「勉強になります」
「美乃梨は全部試す気なの?」
「・・・あれの方が海は喜ぶのか?」
「どうだろうね?試してみようかな?」
「向日葵には似合わない気がするけどね」
「迷ったら突撃だよ!!」
「それでいつも失敗しているのに懲りない子だよね…」
全員の声が届いたのだろう、真美は更に顔を赤くしつつも逃げずに堪えていた。ここは、さっさとやってあげるべきか。
俺は、真美に近付き抱きしめた。そして、耳元で「とても綺麗だよ」とささやいて驚いた彼女の唇を奪い、離れてから服を着せた。
しかし、何がいけなかったのだろうか?彼女の顔は、先ほどよりも更に赤くなっている気がする…何故だ?
と、とにかく進もう。
「さて、急いで人里を目指そう。能力をかなり把握した俺に敵はいないと思いたいが、何がいるか分からない異世界だからな」
そう言って、全員の返事を聞いた後、ダークサンクチュアリを解いて歩き出す。
もちろん、ダークアイを使って索敵済み所か、進路方向の危険生物は全部始末していたりする。そして、人がいるだろう町も見付けていた。
迷いなく進む俺に、全員が付いてくる。交代で、俺の腕にしがみ付いてくるのはどうかとも思うが、体感、2時間くらいで人の町であろう入り口の門まで辿り着いたのだった。