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闇の弐

「お前たちもこっちに来ていたのか?」


 息も絶え絶えに、そう問いかけて来る谷口だったが、それよりも俺には聞かなければならない事がある。


「谷口、お前…一人なのか?一緒に居た女子たちはどうした?磯貝は?」


「磯貝たちは知らない!この世界に来ているかも分からないんだ!!」


「磯貝たちは?と言う事は、お前と一緒に居た女子の居場所は知っているんだな?」


「そ、それは…」


 視線をあちこちに向けて明らかに動揺している谷口…これは、有罪だな。


「言え!彼女たちを何処に置き去りにして来た!!」


「な!?そ、そんな事…」


「こうして問答している時間も惜しいと言っているんだ!さっさと何処だか言え!!」


「む、向こう側へ真っ直ぐ行ったところだ!!」


 俺は、それだけ聞くと胸倉をつかんで詰め寄っていた谷口を放した。何やら小声でどうしようもなかったんだと言い訳らしい事を言っているが、そんな下らない事を聞いている時間もない。俺は、すぐに谷口が指し示した方向へと走り出すべく、まずは3人に叫んだ。


「ぱいん!美乃梨!真美!俺は真っ直ぐ走っていく!!真っ直ぐだ!!すぐに追いかけて来てくれ!!」


 それだけ言うと、俺は急いで真っ直ぐに走り出した。時間が惜しいので、本当に真っ直ぐ…ダークウォールで障害物を排除しながら進んで行く!!


 どれくらい走っただろうか?不思議と息切れすらしなかったが、少し視界が開けた途端…俺は目を疑う光景を見る事となった。


 ・・・肌色だ。クラスメイトの女子6名の一糸まとわぬ姿が目に飛び込んで来たのだ!?それを組み敷いているのは定番の豚野郎。いや、一番近いのが豚なだけで豚じゃない。2足歩行のオークモドキ?


 頭は豚に似ていて、ついでに凶悪なのはあるあるだが、身体が…熊?みたいに毛深く、肉球までありやがる。そして、何より武器を持っていた。しかし、俺はそんな事は関係なく、一瞬で怒りの沸点を超えてしまった。


 急いだお陰だろうか?引ん剝かれた直後なのかは分からないが、まだそういう行為に至ってはいないようだった。だが、あんな化け物に裸にされ、組み敷かれただけでも相当なトラウマになるだろう。


 俺は、怒りで我を忘れ、短く唱える。


「ダークアーム」


 それを言葉にした直後、空中にダークウォールのような闇の円が無数に現れた。そして、そこから真っ黒で太く大きな腕が現れ…目に見えていた全てのオークモドキが一斉に掴まれた。


 ひっ!?と声を上げる女子も居たが、ほとんどが何が起こっているか分からずに呆然と見ているようだった。


 そして、掴まれたオークモドキは全て、ビクビクと痙攣しながら闇の中へと引きずり込まれていった。・・・こんな力知らないはずだが、やっぱり何か違和感があるんだよな…いや、それよりも…


「大丈夫か?みんな…」


 はっ!?しまった!?オークモドキ(障害物)が消えて完全に肌色一色になってしまった!?刺激が強すぎ!こちとら、まだ女性の裸何て見たことないねん!テンパるしかないやん!?


 しかし、現状彼女たちの身体を隠すものなんてない。俺の服じゃ全員に渡らないしな…そんな風に悩みながら、幸せな光景…いや、彼女たちの安否を確認していると一人がいきなり抱き着いて来た!?


「ありがとう!河北君!!本当にありがとう!!」


 助かったのが嬉しいのか、彼女は自分の格好も忘れ俺に強く抱き着いている。裸!君、裸だから!!感触がもろに来てる!来てるからぁ!!!何て内心では相当焦っている俺だが、外面は相変わらずのイケメン気取りで…


「急いで来た甲斐があった。間に合って良かった」


 そう言って、左腕で抱きしめつつ、右腕で頭を撫でる俺、イエス犯罪者。おま!?何がとは言わないが、押し付けられているから!!?しかも、左腕が直接彼女の背中に触れているから!!まずは、彼女たちの着る物を何とかしようとしろやぁぁぁあああ!!?幸せだけど、俺の精神が持たないんじゃあ!!!


 と、ここで気が付いてしまった…よくよく彼女の身体を見れば、小さな擦り傷などがたくさんあった。恐らく、抵抗して出来た傷なのだろう。深い傷は見当たらないが、それでも綺麗な肌に出来た数々の傷は、痛々しかった。


 それで、他の女子も見てみれば、やはり同じような怪我をみんなが負っていた。浮かれている場合じゃなかったな…


「萌奈香、すまない。俺が遅かったばかりに傷つけてしまったな…」


 そう言って、肩に出来た擦り傷にそっと触れる。流石にやましい気持ちはないが、いたたまれない気持ちにはなるな…


「河北君、私の名前知っていたんだ?」


「当たり前だろう?綺麗な女性の名前は自然と覚えてしまうものだ」


 そう言って、時任(ときとう)萌奈香(もなか)さんの頬に手を添える時と場所を弁えない馬鹿、俺ですね。マジでいい加減にしろ!口説いてる場合か!!


 因みにだが、クラスメイトの女子の名前は全員覚えている。あれだ…言い訳するわけではないが、少ないチャンスしかないはずの俺は、それを逃さないように努力していただけだぞ?深い意味はない…先の3人の名前も聞き出したのではなく、この度の海水浴に参加する事になった経緯を聞いただけなのだよ、それだけなのに苦戦したわけだが…どうでもいいな、これ。


「ああ、本気で惚れちゃいそう…吊り橋効果ってやつなのかな?」


 そう言って、頬に添えられた俺の手に自身の手を添えてウットリと目を瞑る時任さん。いや…落ちるの早すぎないか?相手コレだぞ?俺だぞ?危機感を持った方が良いと思う、マジで。それ以前に今の状況を考えた方が良い…自分の格好と、目の前の危険人物の存在、俺ですが。


「そんな事を言われたら、手を出さない方が失礼だよな?」


「…んっ」


 言わなくても分かると思うが、下衆がまた一人毒牙にかけおったよ。俺だけどぉ!!下衆って俺の事なんですけどねぇ!!


「優しいキス…」


 ウットリされてますやん、時任さん。聞いてください、此奴すでに二人に手を出しているんです!目を覚まして!!


「傷ついた女性に優しくするのは当たり前だろう?激しいのは…落ち着いてからゆっくりと…な?」


 髪を撫でながら見つめて変態発言する輩、それは俺。本当に此奴は…時任さんも、完全に落ちてるやん…あり得ないわぁ…


「あのさぁ、萌奈香?河北とラヴラヴするのは構わないんだけど…着る物どうにかしてからにしない?」


「私は、河北…海君になら全て見られても…すぐに見られる事になりそうだし…♪」


 そういう問題じゃないと思うんだよなぁ…と言うかだな、某暗黒王子様は、異世界に来てから数時間でハーレム作って拡大中とか…マジでイカれてやがるな…俺の事なんだけどね!


「確かに、服はすぐにでも何とかしないといけないな。俺以外に見せてやるつもりはないからな」


「海君…うん、私も他の男に見せるつもりないから!」


 そう言って、先ほど以上に抱き着いて来る時任さん。いや…本当に自分の状況分かってますか?どうなってるんだろうなぁ…一応俺なのに、こんなに何人も女性を口説き落とすとかあり得ないんだよなぁ…


「うわぁ…女の表情しているじゃんか…河北、萌奈香って一途だからな?大事にしてやれよ?」


「そんな当たり前な事何て言われるまでもない。咲耶、お前たちも俺の女なんだから遠慮はいらないぞ?」


 はい!来ました!!全員俺の女発言!!此奴、マジでイカれてやがる!!みんなの前で、時任さんとあんなにイチャラブしておきながら、お前らももう俺の女な?とか、どの口で言ってるんですかねぇ!?本当に、勘弁してくださいよ海さん。俺だけどさぁ!!!


「え?ど、どう言う事!?」


 おおぅ…さっきまで結構堂々と身体を晒していた真壁(まかべ)咲耶(さや)さんが身体を隠して後退りされましたぞ!?良かった…君はまともだったか…複雑な心境になるのは自分だからなんだろうけども…


「不可抗力だろうと女性の裸体を見てしまった以上、責任を取らないといけないだろう?」


 何言っているんだ?的なノリで言う海さん。いや…そう思っていた時期があった気もするが…それは、相手が喜んでくれる場合のみじゃないかと思うんだよ、海さん。君が言って良いセリフじゃないんだ…俺なんだけど!!


「そ、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、わ、私としては…複数人はちょっとハードル高いと言うか…その…別に河北が嫌って訳じゃないんだけど…でも、やっぱり6人も同時はどうかなって…」


 おぉぅ、何やら真壁さんがモジモジし出したぞ?何か、普段のサバサバした感じとのギャップが凄いな…と言うかだ、もしや彼女も脈ありなのか?頑張れ!こんなのに落とされたらダメだ!!こんなのって俺なんだけどねぇ!!


「そんなに悩まなくていい、俺に全てを任せてしまえよ」


 そう言って変態海は、恥ずかしがっている真壁さんの顎に手をかけた。やめなさい!?これ以上毒牙にかけるのは!?


「待って?先に私を満足させてよ…」


 真壁さんの唇を奪おうと動き出した海だったが、その前の首に腕を回されて強制的に時任さんの方へと向きを変えられたのだった。残念なのは、彼女を救おうと動いた訳ではなく、嫉妬心から来たものだという事だ。つまり…


「萌奈香?その…海は、ハーレム築きたいみたいだぞ?良いのか…?」


 良し!やはり彼女はまともだった!!そのまま、この変態の愚行を阻止してください!!


「・・・そんな事を言って、海君の気を引こうと普段出さない女の子していたくせに…」


 嫉妬心のせいだと思うが、そう言って横目に見る彼女の瞳には多少の怒りが見て取れた。それは、真壁さんも感じ取ったみたいで…


「ち、違うから!わ、私はそんなつもりなんて…」


「じゃあ、どう言うつもりなの?私たちがこんなに愛し合っているのに、割り込むように誘惑して置いて!!」


 ええっ!?そういう風に映っていたんですか!?やばい、女の嫉妬心を侮っていたかもしれん…何とかしろよ、海。お前のせいだぞ?俺ですがね!?


「そんなことな」


「あるでしょ!さっきまで身体も隠さずに堂々としてたのに、急に隠してモジモジし出すし!」


「そ、それは!緊急事態だったから仕方ないだろ!?隠すものだってなかったんだし、助けてもらったお礼みたいなものだと割り切ってたんだから…」


「じゃあ、何で今更そんな態度を取ったのよ!」


「そ、それは…海が変な事を言うからちょっと意識しちゃっただけで!他意はないんだよ!!」


「意識してるじゃない!そうやって、普段とのギャップを狙って彼の気を引いていたんでしょ!!」


「ち、違うから!本当に違うからね!!」


 そう言い訳しながら、チラチラこちらを窺って来る真壁さん。二人の争いは何処まで行ってしまうのか…男が原因で仲違いしてしまう女子の儚い友情を目撃してしまうとは…原因の男は俺みたいだけど…何とかしろよ!!海さん!!嫌な予感しかしないから傍観したいけど、そうもいかないか・・・


「そうやって…ぅん!?・・・・・・ぅふぅ…」


「え?え?ま、まっんぅ!?」


 説明しよう!!まず、真壁さんと向かい合って言い争っていた時任さんを引き寄せて頭を固定し、有無を言わさず唇を唇で塞ぎ、そのまま…腰砕けになるくらい激しいキスを繰り出した海とか言う変態。


 その後、腰砕けになった時任さんを片手で抱いたまま、唖然としていた真壁さんの方へと向き、彼女を片手で抱き寄せて有無を言わさずその唇を奪ったのだ!鬼畜変態野郎、それが海だと決定した瞬間だった!


 因みに…見た目に寄らず純情そうな真壁さんにも激しいキスを継続中の鬼畜変態野郎…それが俺だ…マジで刺されて終わるんじゃないか?海とか言う最低野郎は・・・確かに、喧嘩は止まったけど、止め方が可笑しいだろうがよぉ…


「激しすぎるよぉ…こんなの、離れられなくなっちゃったじゃない…狡い」


「キスってこんなに激しいものだったんだ…知らなかった…」


 分かるか?二人とも全身から力が抜けて俺に左右から寄りかかっているんだぜ?しかも、二人とも何も身に着けておりません…事案発生!事案発生!!すぐに治安部隊を呼んで下さい!!捕まるのは俺ですけどね!!


「争うなんて馬鹿らしいだろ?俺がお前たちを求める、お前たちが俺を求める、それだけで良い。男女の在り方なんてそんなものだろう?」


 はい、今まで彼女の一人もいなかった事実を無視した阿呆が何やら悟った感出して語っております。とんでもない詐欺師ですね…俺だけど!変態鬼畜詐欺師野郎…救いはないな…


「うん…そうかも…ねぇ?もう一回…して?」


「わ、私も…その…」


 終わった…二人とも完全に落ちてるじゃんか?おかわりをおねだりされてるし…女性から求められて止まる海さんじゃないんだぞ!?何て事を言い出すんだ…って、何か背後から寒気が!?


 外面的にはすっと振り向いただけだが、内面的にはギギギッと音がしそうなほど恐々と背後を振り返った。するとそこには…夜叉がいた!?


「何を…しているの?」


 夜叉…いや、表情を無くした副島さんがいつもの平坦な声でそう問いかけて来た。恐らく俺だけが感じているだけなのだろうが、全身から冷気を発し、こちらが動いた瞬間に腹部に包丁を突き立ててきそうな気配を漂わせていた。河北海の異世界探検記…一日目にして終わりを迎えそうです…ありがとうございました。


「二人とキスを交わしていただけだ」


 よし!お前もう本当に終わったわ!!何正直に言っちゃってくれてるのだよ!?嘘つくのもあれだが…全く悪びれもなく堂々と言い過ぎ!情状酌量の余地なし!!すみません、命だけは勘弁してください…


「本当に?じゃあ、何で二人とも…ううん、6人全員が裸なの?」


 ですよね!そこ、指摘しますよね!!これは、話せば長いんだ…


「魔物に襲われていたところを助けただけだ。俺が来た時にはすでに服を破られた後だったからな…最悪は避けられたが、裸を見てしまったので責任を取ることにしたんだ」


「ふぅん…本当なの?」


 どうやら疑っているようだな。まあ、無理もない…相手は変態鬼畜詐欺師の海さんだからな!俺ですよ、ごめんなさい…


「うん、全部本当だよ!もうだめだと思った時に、颯爽と現れてあっという間に魔物?を倒してくれたの!格好良かった♪でも、それがなかったとしても…もう、離れられない身体になっちゃった…かな?」


 そう言って、うっとりした表情で俺を見つめて来る時任さん。この状況なのに俺に引っ付いたままとか女性は本当に強いですね…


「わ、私は…その…海さえ良ければ…傍に居たいかも…」


 対して、消え入りそうな声だけど、しっかりと主張してくる真壁さん。成長したな…しなくて良い方向にだけども。このままでは、海とか言う変態の思い通りになってしまう!?まあ、その前にバッドエンドへ一直線のストーリー展開中だけども…


「ねぇ…私が最初じゃなかったの…?」


 先程とは一変、怒りよりも悲しみが大きくなった表情をする副島さん。そんな約束をした覚えはないが、最初に手を出した相手では…あれ?彼女から…いや、激しくしたのは俺だな…とにかく、まあ…勘違いされているのは分かった。時任さんの発言はアレだしな…暴走してしまうにしても、彼女にこんな表情をさせ続けるわけにもいくまい。


「すまない、ぱいん。君にそんな顔をさせてしまうとはな…本当に、キスしかしてないんだ」


 そう言って、副島さんの顔に手を添える海さん。いや、時任さんと、真壁さんが両側にくっついていなかったらまだ絵になったかもしれんが…うん、俺の時点でアウトかぁ…


「本当に…?嘘んっ!?」


 最後まで言わせなかった。海は、彼女の口を強引に奪うとむさぼるように…いや、これ完全に浮気男の誤魔化し方じゃねぇか!?最低だな、海さんは。俺だけどさぁ!!


 救い?なのは、副島さんも抱き着いて二人で求め合うようにキスをした事か。いや、両脇の二人を無視するが如く振舞っている時点で完全に可笑しいわけだが…この後の展開が怖いんですが、刺してくる相手が変わっただけじゃね?


 無事?副島さんを腰砕けにして支えた後、両脇から抱き着いていた二人に動きがあった…ついに刺されるのか…!?


「次は私の番だよね?」


「そ、その次は私…」


 二人ともキスをせがんで来るのか…いや、その前に副島さんの事を聞かないか、普通は?いや、もう状況が普通じゃないのは分かるけど何かもう…モラルが崩壊してる?いや、ともかく…そんな事を言われたら海さんが止まらないぞ?くっ…静まれ俺の闇の力よ!!


 そんな風に半ば諦めて海さんの暴走がこれ以上エスカレートしない事を願っていたら、別の嵐がやって来た…


「ああっ!?狡いです!!突然何故か先に行かれたと思いましたら、海さんと愛を育むためだったのですね!?海さん!私にも愛の結晶を下さい!!」


 いきなり加納さんが来たと思ったら、何やら意味の分からない事を言い出したぞ!?愛の結晶って子供の事?いや、俺まだ誰ともしてないぞ!?・・・はっ!?裸の時任さんたちを見て、副島さんみたいに勘違いを!?


「美乃梨の言っているような事はまだしていないぞ?またいつ、あの魔物たちに襲われるか分かったものではないからな」


「え?でも…みんな裸ですし…ぱいんは脱ぎ始めてますよ?」


 そう言われて副島さんを見てみると、確かに何故か脱ぎ始めてみた。何故!?とか言わない…もう、この娘のマイペースさは大分分かって来たからなぁ…頼もしいんだか、厄介なんだか分からないが…


 俺は、慌てて彼女の脱衣を止める。そして、案の定何か文句を言おうとする口をキスで塞いだ。いや、言い訳させてもらうとキスをしたのは俺の意志ではない!暗黒王子様のせいだからな!!結局、俺ではあるんだけど…


 心の中で言い訳しつつも、また副島さんを止められたのは良かった…が、これで海さんの毒牙にかかった3人が抗議して来た…ぱいんだけ狡い!!と


 その後はお分かりになると思いますが…彼女たちは全員、海さんに寄りかかる事態となってしまった。どうしようもない輩だな、海って奴は。俺ですけどね…


「その辺りの植物に触れるのはやめておいた方が良いぞ?かぶれたりしてら厄介だ…最悪、倒れる事態になるかもしれないしな」


「そ、そうよね…」


 まだ毒牙にかかっていない4人のクラスメートの一人が、その辺りの植物の葉っぱか何かで身体を隠そうと思ったのだろう。むやみにその辺りの見た事もない植物に触れようとしたので止めた。もちろん、裸のままでいさせたいとか思ってはいない。いないったらいない。


「とりあえず、置き去りにして来た谷口の所まで戻るぞ」


「え?あんなの回収してあげるの?」


「ああ…一応、クラスメートだろう?」


「う~ん…私はどちらでも良いけどさ、そっちの6人としては会いたくもないんじゃない?」


「ふむ…どう思う?」


「私は…正直どうでも良いかな。確かに、腹は立つけど逆だったら私も逃げたかもしれないし…あ…でも、海君以外に裸を見られるのは嫌…」


 そう言って、より一層俺にしがみ付く時任さん。本当にどうでも良いみたいだな…一応、海水浴の目的は谷口だったはずなんだがなぁ?そんな事を言ったら、加納さんもだが…まあ、どうでもいっか。


 俺以外の女性陣9名に聞いたところ、谷口回収に反対はいなかったものの、6人が肌を奴に見せたくないと言う意見で一致した。俺は良いのか?助けてもらったお礼にしても豪勢だな…しっかり拝んでおかないと…何て事はしないので、抱き着く手に力を込めないで、ぱいんさん。


「それではこうしよう、俺と服を着ている女子の3人で先行する。それで、谷口を発見したら目を潰す!と言うは冗談だが、なにかしらで目隠しをすることにしよう」


「目潰しに一票」


「ぱいんは谷口に辛辣だな」


「女性を置き去りに自分だけ逃げるとか本当に最低だと思うよ?そんな奴だと分かっていれば、美乃梨が今回の海水浴に参加したいと言った時に反対していたもん」


「まあ、そんなものか」


 谷口は自業自得なので擁護する気はない。まあ、流石に目潰しはしない予定だけどな。


「とりあえず、移動しようと思うのだが…4人とも、離れてくれないと移動できないんだが…」


 流石の海さんも困ったような雰囲気を出した。当たり前だな、何せずっとくっついているんだから4人とも…


「美乃梨が離れたら離れるよ」


「ぱいんが離れたら離れます」


「咲耶が離れたら離れる」


「じゃあ、私は萌奈香が離れたら…」


 うん、みんな離れる気ないな?そんなに海さんが良いのかね?俺なのに…いや、それだけ愛されていると思っておこう…じゃないと、海の行為が犯罪でしかないからな…


「萌奈香と咲耶は離れた方が良いと思う。海以外の男に裸を見られる事になるよ?」


 なるほど上手いが、自分は離れませんと言っているようなものなのが問題だな…


「不安なの…また、魔物に襲われるんじゃないかって…」


 そう言って、抱き着く腕に力を込めて来る時任さん。何も言っていないが、真壁さんも腕に力が入ってるだけではなく、小さく震えていた。


 客観的な立場と、主観的な立場では全く違う。そう言葉にすれば容易いが、推測だけではやはり分かるなどと言えないだろう。だからと言って、してやれる事何て数少ないのだが…


「すまない…もう少しだけ我慢してくれ。絶対に、トラウマに何てさせないからな」


 副島さんと加納さんを優しく離し、時任さんと真壁さんを抱き寄せながらそう言った。この際、雑念は振り払う。流石に、先ほどまでの暴走はせずにすんだようだ…してないよな?


 副島さんと加納さんも、表情を見て察したのだろう、大人しく離れてくれている。しかし、そうなると…移動はどうしたものか…


 その時、とても正気とは思えない発想を俺は思いついてしまった。当然、却下なのだが…頭が可笑しい海さんはそれを実行しようと動き出した。


「仕方ない、二人とも俺が運ぼう」


「え?いいの?」


「そ、そこまでしてもらうのは…」


 時任さんは飛びつき、真壁さんは遠慮した。しかし、そんなことで我らが海さんが止まるはずがない。


「それなら、まず一人はおぶりたいんだが」


「…それなら、咲耶に譲るよ」


「え!?その…嬉しいけど…流石にこの格好でおぶさると…そのさ…」


 こちらをチラチラ見ながら恥ずかしそうに身体を揺らす真壁さん。うわ、めっちゃ可愛い、抱きしめたい。はっ!?しまった!?


「これでもう恥ずかしさ何て飛んでしまっただろう?」


 そう言って、思い切り強く真壁さんを抱きしめる変態海、俺です。やはり、欲望を抑えないのか…恐ろしい子、俺だけど・・・


「う…あのさ・・・ううん、そうだね」


 最初こそ、視線をさ迷わせつつモジモジしようとして落ち着かなかった真壁さんだったが、逃げられないほど強く抱きしめられていたせいで観念したのか、最後には抱き返していた。羞恥心まで壊していくのか…海さん、半端ねぇな。はい、一応俺ですよ…


 真壁さんが落ち着いたの見計らってから腕の手を緩め、彼女がこちらを見上げて来たタイミングで


「もう大丈夫だろう?」


 と一声かけ、頬を撫でてから背を向けて屈む海さん。・・・本当に、誰これ?俺なの?本当に??


 少し戸惑いの時間が経過した後、恐る恐ると言った感じで真壁さんがおぶさって来た。・・・こちらから行くのと、あちらから来るのでは衝撃が違う!何がとは言わないが、全体重から来る圧倒的ボリューム感が!?いや…大丈夫だ!彼女のサイズが大きかろうが、俺はまだ堕ちはしない!!はずだ…


 俺が理性と戦っている間も、海さんは止まらず動きだす。やめるんだ!?落ちないようにするための処置なのだろうが…もう少し下でも良いはずだ!!もろにそこに手をそえるんじゃない!!くそぅ…これが試練だとでも言うのか・・・俺の理性の寿命は短いかもしれない。


 因みにだが、残り3人の海被害者からの視線が痛い。そちらを見なくても、思い切り視線を注がれていると分かるくらいに見られ…いや、睨まれていると思われる。やり過ぎじゃない?的な感じだろうか…


 しかし、そんな事は知らんとばかりに海さんの破廉恥行為?は続く。


「次は萌奈香、俺の首に手をかけてくれ」


「は~い♪」


 待ってました!とばかりに、嬉しそうに返事をした時任さんは、迷うことなく俺の首に手をかけた。締められるんじゃないか?と言う俺の心配を余所に、しっかりと俺の首に輪を作る感じで手を引っかけたのだ。


 そして、海は迷うことなく彼女の背中に手を回し持ち上げようとするが


「お尻に手を当てないと落ちちゃうかも?」


 と言う、時任さんの余計な一言により海は迷うことなくお尻に手を回し持ち上げた。時任さんは、お尻に手を回されて「あん♪」とわざとらしく声を上げたが…俺としては内心穏やかではない…!!両手とも信じられない位、柔らかいものが触れているんだぞ!?正気を保てと!?


 そんな俺の内心など知らんと言うように、海さんは二人を持ち上げ立ち上がる。しかも…重さは感じるが、全然余裕があるのだ何故か。どういうことだ?俺、こんな怪力じゃなかったはずだが…?まあ、謎の魔法みたいなの使ってるから気にするだけ無駄かもしれんが…後回しにしよう。


 そして、立ち上がると同時に謎の黒マントがはためき、彼女たちの姿を隠した。これで、確かに周りからは彼女たちの裸体は見えないが…中では、彼女たちと密着しているわけで…こんなことを実行するとは、とんでもない変態野郎ですね、海って奴は。俺だけどね!!


 しかし、被害者の彼女たち二人は逆に幸せそうにしている。真壁さんは、「私も前の方が良かったかな?でも、恥ずかしくて顔を見られないし…」などと呟きながらいやんいやんしていた。マジで可愛すぎないか?


 一方、時任さんは「海君に包まれている…幸せ♪」と言ってうっとりしている模様だ。いや…二人とも幸せを感じているのなら別に何も言えないのだが、何と言うか…海さんを余り甘やかしてはダメだと思いますよ?


 俺はハッとして、副島さんと加納さんの様子を窺う。彼女たちからすれば、相当気に入らない状況のはず!?これは…そろそろ本当に刺される!?


 と思った俺だったが、違った。


「彼女たちにこれだけの事をしたんだから、私にはもっと凄い事をしてくれるってことだよね?」


「わ、私にもしてもらえるのでしょうか?いえ、してもらわないといけませんね!!」


 と、二人は小声で話しているようだ。丸聞こえだが…いや、何か逆に燃え上がってない?可笑しいよね?これ…夜、大丈夫なのか?不安しかないんだが…


 更には、少し離れたところに居る助けた残りのクラスメート4名の内緒話?も聞こえて来た。


「ねぇ、私たちもハーレムに加わったらあんな感じの事をされちゃうのかな?」


「いえ、もっと激しい感じにされちゃうと思うよ!だって、まだまだ調教中って感じだし?」


「そ、それは…興味あるかも?」


「ちょっと!?まさか加わる気なの!?」


「だって…助けてもらって何も返さないのはどうかと思うし…」


「裸を見せた…だけじゃ、不可抗力でしかないよね?」


「まあ…無理やりって事はなさそうだから私は様子見かな?」


「マジ?私は、参加する気だったけど…」


「え!?積極的に入る気なの?」


「だって…ここってどう見ても日本じゃないどころか、別世界って奴じゃない?やっぱり…何も知らない内に死ぬは嫌だなって」


「ななな、何を言っているのか分かりかねまする!?」


「動揺している時点で分かってるじゃん?」


「はいはーい!私は落ち着いたら加わるつもりだよ!!」


「お?マジで?」


「うん!だって…海君、ワイルドでカッコ良くない?ああ言う人に押し倒されるのもありかな?って」


「幼い見た目と違って、結構アダルト思考だよね、向日葵って」


「そうかなぁ?」


 などと言う会話が聞こえた気がしたが、俺は聞こえない振りをする。これ以上増えたらもうね…俺、愛せる相手は一人で良かったんだ…その分、全力で愛そうと思ってたしなぁ…今となっては、遠い所に行ってしまった気がするが…唯一の救い?は


「更に二人も手を出している何て…本当に最低な男ね。美乃梨とぱいんの二人だけでも早く正気に戻さないと…」


 そんな事を言ってこちらを警戒している栗川さんくらいか。彼女だけはまだ海さんの毒牙に全くかかっていないしな。…大丈夫だよな?


 それはともかく、やはり俺の身体能力は全部異常が付くくらいに上がっているとみて良いな。だって、結構離れている女子の会話が普通に聞こえて来たからな。それに、視界も明らかに遠くまで見えるし、匂いも異世界独特の匂いかと思ったが、植物や土の匂いに混ざって色々な匂いが鼻を突いて来ている。


 そうか…俺、本格的に人間やめているな。海さん曰く、暗黒王子だから仕方ないか…って、まずはいい加減進むか。


「それじゃあ、まずは谷口のいるところまで戻るぞ」


 俺は全員が頷いたのを確認してから足を進めた。方向は大丈夫だ、ダークウォールで削られた道が出来ているからな。俺のイメージのせいだろうか?森の中に出来た正方形の道は、凄く異様さを放っていた。

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