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010 茜ちゃんの引っ越し(2)


「あなた達、ちょっと待ちなさい?」




「はははいいい~な何でしょうかかああ?」






 キャプテンに声を掛けられた! 


 伊集院君がおかしなことになっている!



 でも伊集院君が返事したから、とりあえず任せて様子を見てみよう。



「あなた達、如月茜の家に行くのかしら?」


「そそそうでっす!」



「茜ちゃんからはあなたたちは何にも悪くないし、ひどいこと言わないでほしい、あなた達とは『良いお友達』だから邪魔しないでって言われたんだけど、アタシたちは納得してないからね?」



 伊集院君はキャプテンからのいきなりの高圧的な発言に顔面が蒼白に引きつっている。魔王なんだからもっと堂々としたらいいのに。


 でもやはりか。茜さんは誤解を解いておくと言ってたけれど、彼女たちの意識は簡単に変えることはできないようだ。

 この状況で茜さんのお見送りを強行しても折角のお別れにケチがついてしまう。誰も得をしないウインウインならぬルーズルーズという結果になってしまう。しょうがないーー。



「あのーすいません、俺たち茜さんに最後のお別れを言いにきたんです。だからお土産を渡そうと思ったんです!

S市名物の『茹でピーナッツ』ですよ。引っ越しのお供に丁度良いと思って」



 女バスのキャプテンは俺が手に持っているスーパー袋をジト目で見たまま顎をクイっと動かして話の続きを促してくれた!



「二、三分で良いんです! いや、30秒! お土産渡すだけ! ね、お願いします。渡したらすぐに帰りますから!」




 キャプテンは30秒だけならと渋々納得してくれた。ただし一緒に同行して30秒で帰る事を確認するという事だ。

 そして例によって「今ここで約束したことを如月茜にしゃべってはいけません」と釘を刺されてしまった。


 ーーまあいいでしょう。波風を立てない事が大事なのだ。





 茜さんの家には駅の改札から歩いて10分位で着いた。自衛隊の官舎って初めて見たけど素気ないコンクリート造りの五階建集合住宅だった。

 引っ越しの様子を見ると大きな荷物は積み込み終わって今は段ボール箱を運んでいる最中だ。



 俺たち二人が近づくと茜さんが気がついてくれて手を振ってくれる。


「御子柴君、伊集院くーん、こっちこっち!」


 茜さんは満面の笑顔で俺たちの名前を呼んでくれた! 


 こんな飛び抜けた美少女とお知り合いになれたのに、もうお別れしなくてはならないとは……今日家を出る時に母親から散々に残念がられてしまったけど、一番残念なのは俺たちだから……




 俺たちも手を振りながら近づいていく。


 ちなみに女バスのキャプテンたちは茜さんの視界に入らないよう道路側で待機して俺達を見張っているという事だ。



「茜さん、引っ越し荷物の積み込みもだいたい終わりそうだね。はい、これS市名物の『茹でピーナッツ』ですよ。引っ越しのお供に丁度良いと思って。暇な時に齧ると美味しいよ?」


「あ、茹でピーナッツね。甘味と香ばしさがあって美味しいよね、ありがとう。家族で食べさせて貰うよ。

いやーでもたった二か月半くらいの付き合いだったけど御子柴君、伊集院君、お世話になりました。アタシは埼玉に行っちゃうけどおんなじ首都圏だし会おうと思えば会えるから。これでお別れじゃなくてこれからもお付き合いよろしくね?」


「もちろんだよ茜さん。茜さんは埼玉に行ってもバスケするだろうから忙しいと思うけど俺たちが時間を合わせて会いに行くよ。俺たちは暇だからね」


「そうそう。僕も一緒に行くよ! 埼玉に行く時は東京を通るから新宿とか池袋も見て回りたいし!」


「じゃ会う時は東京がいいかもね? アンタたち高速バスでアクアライン通ってくれば東京で落ちあえるから。でも最初は埼玉のT市に来てもらった方がいいか。いろいろ案内できるし。

秋には航空自衛隊入間基地の航空祭に来ればいいよ。その時は家に泊めてあげるよ?」



 なんと! 同級生女子に自宅お泊まりを許可された! 嬉しさと興奮で血圧が爆上りです!


 ああ、こんな幸せな気持ちになれるなんて……青春って素晴らしい……ありがとうございます、茜さん。



「うん、すごい楽しみだよ。良かったね伊集院君、茜さんちに泊めてくれるって」


「茜さん、ありがとう! S市の伊集院家にもぜひ泊まって欲しいな。大歓迎するよ!」


「ふふふ! じゃあその時はヨロシクね。それと、アタシが引っ越して居なくなったからって音信不通にはしないでよ? 吸血鬼とか宇宙人とか、怖いんだからね?」


「うん、任せて」


「大丈夫、吸血鬼とか宇宙人ごとき、この伊集院平助がやってやりますよ!」




 ここで痺れを切らした? キャプテンたちがこっちに向かってゾロゾロとやって来た。



「あ、キャプテンだ。美咲ちゃんもいる!

御子柴君伊集院君、今日はありがと。またね!」



「茜さん、またね!」

「またね~!」





 こうして俺たちは女バスの方々に追い立てられるようにして茜さんに別れを告げたのであったーー。



読んでいただきありがとうございます。

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次話011 初○○

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